旅好きなので、月の3分の1は旅の空にいる。自分では「足の向くまま」と称していて、たしかにそんなぐあいだが、しかし、それなりの準備はしている。たとえば服装だが、着なれたジャケット、ジーンズのズボン、底が厚めのウオーキングシューズ、背中には使いなれた小型のリュックサック。どれも体験をかさねるなかで選び取った。
リュックの中身も同様で、メモ帳、デジカメ、地図、水筒、折りたたみ傘、アメ玉セット、薬袋。アメ玉は疲れたときに口に入れる。何種類かをひとまとめにしていて、指先でつまみ出すときのおたのしみつき。薬袋にはカゼ薬、胃薬、メンソレータム。いずれも経験をかさねるなかで最少にしぼりこんだ。
これらはハードのたぐいであって、ソフトはどうなのか。やはり自分なりの手続きがある。その一つだが、ネット情報といったものは使わない。行き先がきまれば、まず地図をよくながめる。地理事典にあたったり、その土地に関連した歴史や地誌を調べて、必要と思うものはコピーをとる。自分で見つけて選んだものでないかぎり、かき集めただけの情報は何の役にも立たないものだ。調べごとは面倒だろうか? とんでもない。それ自体が旅程の一部であって、コピーを整理しファイルにしたりしているとき、すでにココロは旅立っている。