「解釈変更は悪」の誤解解く 思いにじむ安保法制懇報告書 自衛権解釈の変遷説明 | 毎日のニュース

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 政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」がまとめた報告書は政府の自衛権などに関する解釈が変化してきた実態を丁寧に説明することに多くの分量を割いた。「解釈変更が悪で、解釈維持が善」という誤解を解き、国のあるべき姿を議論したいという思いがにじむ。

 報告書は、昭和21年の衆院本会議で吉田茂首相が「自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄している」と答弁した一方で、29年には大村清一防衛庁長官が衆院予算委員会で「憲法は戦争を放棄したが、自衛のための抗争は放棄していない」と発言したことなど、多くの具体例を示している。

 政府関係者は「否定されていた自衛権も容認に変化している」と指摘し、「憲法は文理解釈だけでなく憲法全体や文脈、制定経緯、歴史、時代の要請などを考慮することが重要だ」と訴える。これまでの政府の解釈が論理矛盾や曖昧さを抱えていることを浮き彫りにすることで、憲法9条によって集団的自衛権の行使が禁じられていないことへの理解を得たい考えだ。

 また、報告書は、日本がリスクとして抱える不測の事態に備えた法整備の重要性を強く求めた。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対応は「法の抜け穴」とされ、自衛隊の行動は大きく制約されている。

 中国の高圧的な海洋進出を念頭に、漁民に偽装した武力集団が離島を占拠する場合などを想定し、身近に迫る危機への早期対応を訴える。邦人保護でも、昨年1月のアルジェリア人質事件など、世界各地で活動する邦人が紛争やテロに巻き込まれる可能性が高まっており、日本をめぐる安全保障環境の変化に警鐘を鳴らしている。