台湾の少年少女が“道場破り”にやって来た。旧正月を控える冬休みを利用した1月22日、台北市の囲碁教室に通う15人が、藤沢一就(かずなり)八段(49)主宰の教室(東京都新宿区)を訪れ、交流したのだ。
「東日本大震災の際は多大な支援をしてくれた。日本にとって大切な友人と学ぶ場を設けたかった」と、藤沢八段は企画の意図を話す。
この日は昨夏のワールドユース選手権少年の部で優勝した藤沢門下の関航太郎君(12)が、アマ六段の黄彦懐君(13)と対局。黄君が二子を置いた有利な状況で1目勝つと、台湾勢からは歓声があがっていた。
その様子を、穏やかな表情で見守っていたのが引率者の陳長清さん(62)だ。1980年代を代表する棋士で、台湾のタイトル獲得は18期にのぼる。
「日本の囲碁文化に触れることができ、子供たちにはいい経験になったでしょう」
91年の引退後、普及活動に努めている陳氏は、台北市内に5つの教室を持ち、約2千人が通っているという。教育面で役立つからと、台湾では囲碁ブームが起きているそうだ。
「囲碁は中国や韓国が強いことから、親からも“うちの子を強くしてほしい”という要望がある。ただ、私たちの教室が目指すのはゲームの要素ではなく、囲碁を通してしっかりしたマナーを身につけ、精神的に強くなること。礼儀正しい日本の生徒と対局でき、彼らも幸せです」と、陳さんは遠征の収穫を口にしていた。(伊藤洋一)