東京都大田区で、中学1年の女子生徒が誘拐され、約3時間後に警視庁が犯人グループを逮捕、女子生徒を保護した。
女子生徒は車内で手足を縛られ、粘着テープで目隠しをされていた。逮捕、保護は別の事件で検問中だった府中署員のお手柄だった。まずは女子生徒の無事を喜び、盗難ナンバープレートに気づいた署員の機転をたたえたい。
沖縄出身の容疑者2人は、埼玉県在住の容疑者による闇サイトへの書き込みをみて共犯者となり、犯行当日が初対面だったという。帰宅途中の女子生徒を場当たり的に誘拐し、自宅に身代金2千万円を要求する電話を入れた。
ずさんな犯行だが、それだけに解決が長引けば、最悪の事態も考えられた。
闇サイトは犯罪行為の依頼や協力者を募るネット掲示板で、平成19年8月には名古屋市で、闇サイトで知り合った3人組が女性を拉致し、現金などを奪ったうえで殺害する悲惨な事件があった。
インターネット空間は銃器・薬物の違法販売や売買春の斡旋(あっせん)など、犯罪の温床ともなっている。24年中のネット利用犯罪の検挙件数は6613件で前年より22・7%増加し、過去最多だった。
こうした状況に対応するため、15年には「出会い系サイト規制法」が制定され、20年に規制を強化した改正法が施行された。
警察庁は18年、一般のネット利用者らから違法・有害情報についての通報を受理し、サイト管理者への削除依頼を行うインターネット・ホットラインセンター(IHC)の運用を始めた。
だが、規制や取り締まりだけでは、ネット空間に飛び交う悪意は断ち切れない。
闇サイトは閉鎖、開設を繰り返し、隠語の多用で削除の網を逃れるなど、いたちごっこが続いているのが現状だ。
悪貨は自然には駆逐されない。サイト管理者ら民間にも、ネットを悪用されないための自浄努力が強く求められる。ネットの闇を放置してはならない。
警察庁によると、昨年1年間で略取誘拐・人身売買事件の検挙率は92%にのぼる。犯人側が現金を手に入れたケースはほとんど記憶にない。
闇サイトなどに踊らされて卑劣な犯罪者となるような行為に対する警鐘だろう。