自民、公明両党が東京電力福島第1原子力発電所事故への対応を抜本的に見直すべきだとする提言をまとめた。
福島の早期復興のためにこれまでの東電任せを転換して国が前面に立ち、除染などに国費を投入することも求めた。
政府も提言に沿って対応を検討するという。遅きに失した感はあるが、国の積極関与は当然だ。なぜなら、わが国の原子力発電は、国策民営で進められてきた経緯があるからだ。
事故は、千年に1度という規模の巨大津波で原発が被災したことに端を発した。炉心溶融や爆発を伴う事故により、放射性物質が外部に飛散して環境を汚染した。2年8カ月が経過した今も15万人が避難生活を送り、農水産物の風評被害も続く。
大変な事故であるがゆえに多くの困難が立ちはだかる。だが、それを考慮しても完全収束に至るべき歩みは極めて緩慢だ。発電所の汚染水対策などはトラブルの連続で後退感さえ漂っている。
最大の原因は、事故当時に国政を担っていた民主党政権の失策にある。事故の責任は東電だけでなく、国も重いはずだが、当時の菅直人政権は東電に全責任を押しつけた。政府に批判が向かわないようにするためだろう。
原子力損害賠償法に定められている特例条項も無視した。原発事故が異常に巨大な天災地変で生じた場合、電力会社の責任を免じると明記されている。東電の責任はあるにせよ、これを適用して最初から国が前面に立っていれば、汚染水対策もここまで後手に回ることはなかったはずだ。
自公提言では、国費の投入で除染作業の迅速化に加え、汚染土などの中間貯蔵施設の整備を求めた。そして「全員帰還」との方針も改め、移住を希望する住民への生活再建補償も盛り込んだ。
東電はこれまで通り事故賠償にあたるが、除染などで国が前面に立つことで、市町村がばらばらに進めてきた作業の効率化が期待できる。その際には、除染の効果と費用負担のバランスを考えた現実的な対応も欠かせない。
東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県で福島の復興が遅れているのは、原発事故の対応が進んでいないからだ。汚染水対策を含めて国が事故収束に責任を持つ体制を築くことで、これまでの遅れを取り戻してほしい。