1÷7。 | 徒然に。

徒然に。

思ったことを気ままに。

 今日、練習途中から土砂降りになり、雨宿りになりました。

 そこでやたら蘊蓄を述べる子どもがいます。

「光の速さは○○」「世界の陸地面積は○○」とか言っています。

 そして、その子の様子を見ていて、20年前のうちにいたK君を思い出しました。

 そして、蘊蓄少年に、K君に毎回の練習で出していたような算数の問題を出してみたのでした。

 

 K君は、練習後に毎回算数の問題を出すことをせがみました。

 K君はその当時の主力の1人でしたが、サッカーに興味があるようには思えませんでした。

 私が練習後に出す問題を解きに、練習に通っている感じでした。

 あるとき、K君に「コーチ、試合に勝とうとかいってサッカーみんなやっているけど、勝ってなんか意味あるの?」と聞かれたときは、本気で答えなくてはいけないと思いました。

 私は「俺も、意味なんかないと思うよ。でも人生なんか暇潰しじゃん。せいぜいサッカーを一生懸命やって勝った負けたで喜んでいれば、退屈な人生もちょっとは面白おかしくなるんじゃないの」と答えました。

 小学生に対する答えではないと思いました。

 ですが、K君にはコーチとしてではなく人間として、ちゃんと答えなくてはいけないと思ったのでした。

 というのは、もう小学生のときからK君は、大人の欺瞞みたいなことをせせら笑っていた感じがあったからです。

 ならば、こっちも大人としてではなくて、1人の人間として思っていることを正直に答えるべきだと思ったのです。

 

 私は今でもはっきり覚えている、K君に出した問題があります。

 それは「1÷7の少数第100位を答えよ」でした。

 ぜひ読者の方は、時間を測って計算してほしいと思います(笑)。

 

 答えです。

 1÷7は、0.142857142857..が永久に繰り返されます。

 つまり142857の6つの数字の塊が繰り返されます。

 ということで、100÷6をやると、16余り4です。

 つまり16回、142857の塊が繰り返された後の4番目、つまり8が、少数第100位の数です。

 

 K君は校庭の土の上で計算を始めました。

 すると30秒ほどで答えを出しました!

 30秒!

 驚異的な速さに私はびっくりしました。

 K君は別に中学受験の勉強をしている子でもないのです。

 そして「コーチ、これは簡単すぎるからもうちょっと難しいのを出してよ」というのでした(笑)。

 

 そのK君、今では誰もが知っている世界最大規模のネット企業のエンジニアとして、その業界では「天才」として名前が知られています。

 私はそのことを知ったとき、小学生時代のK君に対して、言いようもない懐かしさを覚えたのでした。

 そして、きっとK君の少年サッカー時代、サッカーではなくて私とのやり取りは、彼のなかで素晴らしい思い出として残っていると思いました。

 当時から彼には「天才の孤独」的な感じがありました。

 これはいい悪いではないのです。

 ですが、あそこまで頭が良くて、いろいろなものが見えてしまうと、「普通のやりとり」なんか退屈でしょうがないのでしょう。

 ですがその中で、私の感じだと、小学生時代のK君唯一の楽しみの場は、私とのやり取りだったと思います。

 それは当時のチームメイトが証言していることでもあります。

 練習毎に切実に問題を出してくれと言うのです。

 練習後のその時間が待ちきれない感じなのでした。

 

 今日の蘊蓄少年に対して出した問題は、K君に出した問題よりはるかに簡単でしたが、蘊蓄少年は答えられません。

 そのうちに蘊蓄少年は、つまらなそうな顔をして、どっかに行ってしまいました。

 私はそれを見て、ほっとしました。

 蘊蓄少年は「普通の少年」なのです。

 これから、普通に喜怒哀楽を味わって、人生を楽しむと思います。

 K君みたいな少年こそ、実は人生には苦しみが待っているのでしょう。

 彼は今、世間様には「天才」だと言われていても、私が想像するに、彼の心に平穏があるわけではないでしょう。

 彼の小学生時代の憂鬱そうな顔を思い出すと、今でも彼は人生の不条理や意味のなさに、うんざりしていることでしょう。

 勉強ができすぎるのは、むしろ苦しみであるということを、私はこれまで嫌になるくらい見てきました。

 ですが、そういう少年(少女)にとって、「普通にしなさい」的なことは、拷問に等しいのです。

 

 私は今の時代、K君のような人間を、あまりにも「おかしい人」だと思う傾向にある気がするのです。

 サッカー界でも同じな気がしています。

 パスが好きすぎてパスばかりしているならば、それでいいのだと思います。

 ドリブルもシュートも同じでしょう。

 ある意味そういう世界は、アスペルガー的な世界だと私は思っています。

 東大生の25%はアスペルガーだという情報があります。

 ただ実感としては合っている感じが私はします。