キックのまとめ。 | 徒然に。

徒然に。

思ったことを気ままに。

 サッカーブログを書くときは、高岡英男先生が提唱した「ジンブレード」やドリブルについてのトピックスが多いと思います。

 キックについてはときどき書く感じですが、キックについて書くと毎回反響をいただきます。

 これまでそれなりの数の読者の方から「試してみたら驚くほどきれいな軌跡のボールが飛ぶようになった」との声をいただき、嬉しく思います。

 私は市内で実際に最下位になったこともあるチームで、延べ3代30人弱を卒業させて、関東大学リーグキャプテンと副キャプテンを輩出できました。サッカー育成現場に詳しい方ならば、けっこう奇跡的なことだとわかってくれると思います。

 そしてその2人に共通した武器が「ロングキック」でした。

 小4までは私は徹底的にドリブル(足技)を練習しますが、小5くらいからロングキックを徹底して練習します。

 そして小6になったとき、上記した2人は、ワンステップでサイドチェンジをきれいな弾道で蹴れました。

 理論が合っているかはともかく、実績はあると思います。

 そこで、私が考えているキックについて、理論やポイント、練習方法を網羅的に書きたいと思います。

 ところで実は、サッカー技術論については書くのをやめようかなと最近思っていました。

 真剣に書けば書くほど、直接ではないにしろ、私のブログに対する批判記事を相当目にしました。特にドリブルについて書くときです。なかには「影響力が大きいのに間違った理論を書くのはまずい」的なことを指摘されたりしました。

 ですが、私はブログをそもそも「正しいと査定されたこと」を書く場だとは思っていません。

 どちらかといえば「一次情報」的なものだと思います。

 それは素材にすぎず、全否定するのも一部を取り入れるのも、考える材料にするにとどめるのも個人の自由です。

 そしてネット社会というのは、そういった一次情報的なものが溢れているということだと思います。

 そこはもちろん玉石混淆です。

 そのことに良し悪しはないでしょう。現実はそうなっているというだけです。

 でしたら先に進むには、活用するしかないのだと思います。

 ということで、私は自分の考えと違う方と議論するためにブログを書いているわけではないです。以前に何度か反対意見をコメントにいただきましたが、申し訳ないですが「あなたと議論する必要性を感じない」と返信させていただきました。

 ではなぜ書いているかというと、読んでくれた方が試していただいてうまくいったら嬉しいというのはもちろんあります。

 ですがそれ以上に、結局私にも得があるのです。

 自分が開かれていれば、他者も開いてくれます。

 詳しくは書きませんが、こうやってブログで忌憚なく自分のサッカー論を書くことで、けっこう大きな学びを私も受け取っているのです。自分がオープンな姿勢だと、自分にも有益な情報がたくさん入ってくるようになります。

 それでは前置きが長くなりましたが、具体的なキックについて書きたいと思います。

 

 まず、私が考えるキックの要素を、3つに分けて書きます。(右足で蹴ると仮定します)

 

1、足を振りかぶったとき。

 大事な点が3つあります。

 ①左腕が斜め上方に上っていること、②振り上げた足が腰から持ち上がっていること、③軸足腿と地面が45度になり上半身は直立していること。

 その3つを満たした理想的な振り上げフォームが↓だと私は思っています。

 

ベッカム キック に対する画像結果

トニクロース キック に対する画像結果

 

 ①に関して、ベッカムもクロースも、見事に左腕があがっています。

 上半身と下半身は連動しています。そして上半身主導で下半身に力が伝わっていくのが理想なのです。ということで、まずは左腕があがるのが大事だと思います。

 ②に関して、ベッカムは蹴る寸前なので分かりにくいです。ですがクロースを見ていただければ、相撲で言う「割れ腰」の感じで、腰から足が振りあがっています。

 これは身体意識の意味でも大事なポイントです。

 人の純粋な意識と具体的な身体操作の間に「身体意識」があります。

 そして人の身体意識を形作るのは、まずは「言葉」です。言葉によって、どう自分の身体をイメージするかで、具体的な身体操作が変わってきます。

 足を振り上げるときに「足を大きく振り上げよう」とアドバイスするよりも「おへそあたりから足が出ているとイメージして、おへそあたりから足を振り上げよう」とアドバイスした方がいいのです。

 その方がいいというよりも、その言葉の違いだけで、恐ろしいほどの質的な違いが出てきます。

 その論理的根拠を書きます。

 筋肉は収縮することによって働きます。

 そして足を振り上げるとき、使う筋肉によって振り上げ方に違いが出ます。

 たとえば日本でよく指導されている「真っすぐ助走をつけて真っすぐ蹴る」蹴り方だと、大腿二頭筋を収縮させて足を振り上げることになります。

 

大腿二頭筋 に対する画像結果

 

 ですが誰でもわかるように、もし大腿二頭筋よりもさらに上の筋肉を使って足を振り上げられるならば、それだけ強いキックが蹴れるのです。

 そして大腿二頭筋より上位にある筋肉が大殿筋です。

 

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 大殿筋の起始部を見ていただきたいと思います。

 お腹に近いのです。

 解剖学的にも「お腹から足が生えているイメージ」というのは正しいのです。

 そして大殿筋は、身体中央から左右斜めについています。

 なので大殿筋が収縮すると、足を真後ろに振り上げるというよりは、つま先を外に向けて、相撲の四股を踏むイメージになります。

 プロサッカー家庭教師の矢田部さんは「犬のおしっこのように足を振り上げる」と教えていますが、慧眼だと思います。

 ③はわかりにくいかもしれません。

 ↑ベッカムを見ていただきたいと思います。

 左太ももと地面が45度になっています。

 なぜそうなるかというと、大殿筋や腸腰筋といった、キックでの最重要筋肉が「身体の中心から左右に斜めについている」からなのです。必然的に、こういった形になります。

 

 練習方法です。

 まずフォーム作りを私はしています。

 「左腕を挙げる」「お腹から足が出ている要領で足を振り上げる」「犬のおしっこのように」「つま先を外に向けて」などのアドバイスをしながら、足を振り上げた状態で静止させます。その理想のフォームをまず身体で覚えさせます。

 

2,インパクトの瞬間。

 インパクトの瞬間大事なことは①つま先を外に向けて足裏を後ろに向けること、②振り上げた左腕を右腰方向に勢いよく戻すこと、です。

 ①に関してですが、↓日本初のプロキック専門コーチ上船さんの動画を見ていただければと思います。

 

 

 クロースも↓1分20秒付近で同じようなことを語っています。

 

 

 

 ②に関しては、上半身の連動です。

 ↓は往年のブラジル代表でバロンドーラーのリバウドです。

 蹴り足と反対の右腕が、見事に左腰まで戻っています。

 

リバウド キック に対する画像結果

 私の目からは、日本のサッカー少年は上半身の連動が弱いように思います。だから強いキックが蹴れないと思う子がけっこういます。この辺を意識すると、キックの飛距離が全然違ってくると思います。

 

 練習方法です。

 私がやっているのは、やはりフォーム作りです。

 「蹴り足のつま先を外に」「足裏を後ろに向ける」の二点を注意して、その場で10秒間静止させます。

 これも身体でインパクトの瞬間を覚えてもらうためです。

 

3,フォロースルー。

 大事なことは①蹴り足を軸足左足のさらに左にもってくること、です。

 

 練習は最初、極端にやることだ大事だと思います。

 具体的には「蹴り足の右足が軸足の左足の外側に着地すること」「軸足の左足の足裏が右方向を向いていること」です。

 ↓35秒、世界最高の破壊的なキックを持つといわれるレアルマドリーのバルベルデを見ていただきたいと思います。

 

 

 上記したような状態になっているのがわかるかと思います。(ただバルベルデは左利きですので、上記したのと左右逆です)

 

 理論的根拠です。

 フォロースルーで使う理想的な筋肉は腸腰筋です。

 

腸腰筋 に対する画像結果

 

 腸腰筋を見れば、なおさら「お腹から足が生えている」ということがわかるかと思います。

 実際に足はお腹から生えているのです。

 それを普通の人は、↑で言えば大腰筋の下の部分辺りが足だと思っているのです。

 ですが足を動かす起点は、まさにおへそ付近なのです。

 それが身体意識です。

 身体意識が「いわゆる足」の人は、「足を止めるな!」と言われれば、意識するのは太ももより下なのです。

 ですが「お腹から足が生えている」身体意識を持っている人は、全然違ったことを意識することになります。

 この違いが、恐ろしいほどの質的な違いを生むことは容易に想像がつくことです。

 なので私は少年期のコーチは本当に大事だと思うのです。

 なんでもコーチの言うことを信じてしまう少年期にこそ、本質的な声掛けをする必要があると私は思うのです。

 

 練習方法です。

 1,2,3を合わせた練習です。

 まず、左腕を挙げて、腰から足を振り上げます。

 次に左腕を右腰に下ろしながら、つま先を外に向けて足を振り下ろします。

 そして最後に、フォロースルーで右足を軸足左足のさらに左に置き、軸足左足の足裏を右方向に見せます。

 

 私はこういったフォーム作りとはまた別に「居合切りキック」というのをやっていました。

 やり方です。(最初に書きましたが、右足で蹴ることを想定しています)

 まず右腰に刀があり左手で刀を持っています。

 背中は蹴る方向に向けるくらいにして、立ち位置は蹴る方向から90度左です。

 そこから助走1歩で踏み込むと同時に左腰にあった刀を右手で左上方向に切り上げます。

 そしてボールを蹴る瞬間、右腰に刀を戻します。

 そして蹴り足を軸足左足の左側に置き、軸足左足の足裏を右に向けます。

 感覚が鋭い子は、1日やれば、助走一歩でも上半身の連動で遠くへボールを飛ばせることを掴めてしまいます。

 

 最後に、ボールの回転です。

 まずはきれいなバックスピンがかかるようにやります。

 それができたら、次は無回転を練習します。

 無回転の蹴り方は、実はちょっとした修正でできるようになります。

 それはフォロースルーです。

 軸足左足のさらに外に蹴り足をもっていかずに、足を真っすぐ蹴りだします。

 それだけで無回転を蹴れます。

 

 私はキックにはわかりやすい「学びの本質」があるように思います。

 まずキックの基礎は絶対的に教えなくてはいけません。

 私にとってのキックの基礎は、上記したようなことです。

 それらのポイントは、キックを教えるときはすべてやりますし、チェックします。

 もちろんある程度できる子に対してですが(うちは弱小チームなので、全員にこれらをすべてやらせようと思っても無理だし、強引にやったらみんなやめてしまうでしょう)これらはすべて、ある程度できるようになるまで反復します。

 ですが、ある程度できるようになったらアプローチを変えます。

 ロングキック練習を見ていて、思い付きで「バックスピンで蹴って」「次は無回転で蹴って」とか言って、蹴れなければ「今の回転違うなー!」とか言うだけです。

 ポイントはすべて教えています。

 あとは本人の頭の中での、実際にうまくいかなかったこととの照らし合わせなのです。

 そしてそのことをしっかりやっていたのが、関東大学リーグキャプテンと副キャプテンになった彼らでした。

 私はコーチとして、彼らにはキックに関しては、それなりに理想的に教えられたかなと思っています。

 基礎を徹底的に教えたら、いつでもその基礎に立ち返れるようにして、あとは自分たちでやらせるのです。

 

 そもそもキックは、ドリブルとトラップとは違います。

 ドリブルとトラップは、私の意見ではその人なりの個性がでますし、多彩です。

 ですから私はドリブルやトラップに関しては、できる限りたくさんの種類を練習します。

 一例ですが具体的には、↓のようなことを練習でやります。

 

 

 

 

 

 ですが特にロングキックに関しては、腸腰筋や大殿筋の位置はだいたい同じである以上、理想的なキックフォームは同じようになるはずです。

 

 ということで最後に、超一流のロングキックだと私が思っている動画を挙げたいと思います。

 1つ私が書きたいのが、私が書いたこと、特に練習方法は「おおげさ」であるということです。

 というのは、ある動作を学ぶということは、最初は大きな動作から学びます。

 これは練習の鉄則です。

 そしてどんどん身体内でちょっと動いたような感覚になっていきます。

 なぜ大げさにやるかといえば、本質的なものを学ぶためです。

 

 そして今回は特にキック集大成ということで、いつもにも増して真剣に書いたつもりです。

 今後はキックについては書くつもりはないくらいで書きました。

 

 キックにおける大殿筋や腸腰筋の動き、上半身の連動など、動作が大げさでもなくても、見る人が見ればわかると思います。

 そして、私が気付いたことよりもはるかに高いことに気付いている人もたくさんいると私は確信します。

 もしそうであるならば、ぜひキック理論について発表していただきたいと思います。

 私は喜んで学びたいと思います。

 現代はこういう意味で幸せだと思います。

 見ず知らずの人のブログでの発表に、学びがあったりするのです。

 

 それでは最後にキックについて、私が感動しているものを挙げます。

 私はドリブル練習を重視しますが、↓動画の芸術的キックを見ると、本質的にはキックが好きなのかもしれないと思ったりします。