医学部を卒業してから、コーチに対して変わったこと。 | 徒然に。

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思ったことを気ままに。

 私は日本での一つ目の大学時代、サッカーコーチを始めました。この時代に育ったのが、関東大学リーグキャプテンになったW君です。

 卒業して社会人になるのと同時にコーチは辞めたのですが、途中、サラリーマンから個人事業主に代わったことで時間を自分で作れるようになり、コーチに復帰しました。この時代に育ったのが、関東大学リーグ副キャプテンになったS君でした。

 それから思うところがあり、再受験という形で北京大学医学部に入り直しました。

 無事卒業しましたが、体調をけっこう崩したりや、海外医学部を卒業すると日本の医師国家試験をストレートに受けられず、今はその間の期間ということで、コーチを三度しています。

 医学部を卒業してコーチに復帰して、けっこう感覚が変わったと思います。

 まず、とりあえずサッカー界で教えられていることは、それなりにできるようにしようということです。

 以前はけっこう自分独自の感覚に頼ってやっていたように思います。

 ですが医学部では、自分独自の治療法などは一切ないのです。

 患者さん本人がどういう治療を選ぶかは自由です。ですが医療を提供する側は、膨大な実証を積み上げてきた最善の治療法ということでやっています。なので、医学部だから当たり前のことですが、疾患それぞれの治療はすべて覚えます。覚えられなければ卒業できません。

 対して少年サッカー界というのは、子どもが相手ということで、どこか甘いところが出てきます。ただ、その甘さが良いこともあると思います。子どもは大人ではないので、大人基準でやる必要はないと思います。子どもは勝手に育つという面もあります。

 ですがそれでも、ある程度コーチがサッカーについて学ぶということは、必須だと思います。相手に影響を与える立場に立つときに、勉強しないというのはあり得ないと思っています。たとえば勉強をしない医師など一人もいないのです。

 私はそういった意味で言えば「受験勉強は悪」「子どもにもっとゆとりを」という考え方に、賛成の部分もありつつ、ある程度懐疑的です。

 子どものうちはもちろんですが、大人になったらもっと勉強しなくてはいけないのだと思います。

 といいますか、勉強は嫌だと言っても、生きることは結局勉強でしょう。

 子どもは遊んでいると言っても、遊びの中に、ある法則性を見出して楽しんでいるのです。遊びさえも勉強だと思います。

 

 さらに心構えとして本質的には、医師が患者と向かい合うのと、サッカーコーチが子どもと向かい合うのは同じだと思います。

 ボランティアコーチであろうがプロコーチであろうが、サッカー経験があろうがなかろうが、その部分は関係ないと思います。

 私は長年コーチをやっていて、たくさんの学生コーチを見てきました。

 すると、私の観点ですが、本当に綺麗に「できるコーチ」と「できないコーチ」に二分されるように思います。

 できるコーチは「医師側」に立てますが、できないコーチはいつまでたっても「患者側」に立っています。

 自分が何かを子どもに与えようではなくて、どこかで自分が与えらえている側だと思っているから、自発的に勉強しないのです。

 さらに「医師側」に立てるコーチでも、勉強をしないコーチはたくさんいると思います。

 サッカー経験があればそれなりにコーチができてしまうのが少年サッカーの世界だと思います。

 ですが、勉強しないで患者を診る医師は一人もいません。

 コーチも同じでしょう。

 大学生コーチだろうがボランティアコーチだろうが、それは関係ないと思います。

 たとえば「視野の確保」と言われて、自分の経験だけでコーチをやっている人は意外に瞬時に答えられないと思います。

 過去にうちのチームに入ってきた大学生コーチに聞いても、大半は知りませんでした。

 けっこうコーチといっても、最初はそんなものの気がします。ですが自分で勉強しなかったら、そのままの状態で子どもたちを指導することになります。これはけっこう恐ろしいことだと思います。治療法を学んでいない人が患者に、自分の経験だけで「○○は絶対にいいから!」と勧めるということが、少年サッカーの現場ではけっこう起こっているのではないでしょうか。

 指導上の違いで議論するのは当たり前だと思います。ですがその土俵にも立てないのは、コーチとしてよくないのだと思います。

 たとえばグアルディオラは、視野の確保を最重要の一つとして、世界最高のレベルでしつこく指導しているのです。

 逆にいえば、そのレベルの選手でも意外にできていないということでもあります。

 

 

 

 もしくは、私の中では一番いやなタイプですが、大人の自分と子どもでは圧倒的に力関係が違いますから、自分が王様になったと勘違いし、傲慢になるコーチです。

 そういうコーチはまだ若い大学生でもいます。試合になるとベンチにふんぞり返って座り、偉そうに指図しています。

 

 できるコーチで印象的なのは、私の学生時代、後輩のコーチでいたN君でした。

 彼は私の担当代の下の代を見ていました。

 そして当時は個人技と中央突破を中心にやっていた私の代から、両ウイングを使うスタイルにN君の代を変えようとしました。

 最初は私に「自分は○○さん(私の名前)ほど個人をうまくできません。なので個人技主体で中央突破はできません。ですが情熱は負けていないし、それならそれで個人がとことん頑張るサッカーをしたいです。なのでウイングを使うサッカーに転換したいのですがいいですか?」と聞いてきました。

 それぞれの代は自分でやっているのだから、私に聞く必要はないのですが、当時はしょっちゅう一緒に飲んだりして、今とは比べ物にならないほど濃密なコーチ関係でした。

 まず、そうやって根回しをできるのが、こいつ大学生なのにすげえな、と当時思いました。

 さらに驚くべきことに、N君は保護者を集めて「プレースタイル変更の話し合い」をしたのです!

 なかなか大学生にできることではないと思います。大学生が、自分の親の年齢の人もいる保護者を集めて説明会をしたのです。

 凄すぎると思います。

 そしてこういう人間は、社会に出たらどの分野に行っても成功すると思いました。

 案の定、彼は今、誰でも知っている某超一流企業でエリート街道を走っています。

 先日、6年にも及ぶアメリカ勤務から帰ってきたので、飲みにいきました。

 すると、息子のドリブル練習動画を見せてきて「息子には、○○さん流の練習をやらせています。○○さん、どこ直せばさらによくなりますかね?」と聞いてきます。

 そういう勉強熱心なところも素晴らしいと思います。

 

 もうちょっと現象面で言いますと、医学部で解剖学と大学物理学の単位を修めて、サッカーにおける身体動作をそういった観点から見れるようになったのはよかったと思っています。

 日本の大学のときは文系学部を卒業したので、医学部で理系の素養を獲得できたのは良かったのです。

 私の観点からすると、動きに関してはサッカー界では、議論の余地がある言説がけっこうあると思っています。

 たとえば「動き出しは母指球を意識する」。

 これは本当でしょうか。

 たとえば立った状態で、母指球に力を加えます。

 すると身体は後ろに倒れます。

 なぜなら身体の重心線より母指球は前にあるからです。

 ということは、動き出しの一歩目でまず母指球を意識すると、身体は後ろに倒れるのを必死になって筋肉の力で前に行くことになります。効率が悪いでしょう。

 さらに「方向転換のやり方」があります。

 99%の人が、進行方向に身体を向けてから、そちらに走りますが、それは非常に非効率的だと私は考えています。

 なぜなら、つま先とは方向転換の一歩においては基本的にブレーキ役だからです。

 なので、横に倒れこむようにして方向転換するのが理にかなっていると思います。

 ↓メッシのような感じです。そしてこれが私はジンブレードだと思っています。

 

 

 最近再びブログ上でサッカー論争が勃発している感じがあります。

 私の基本的な立場を書いておきますと、、、

・コーンドリブルは利き足。

・ボールマスタリーは重視。

・トラップは視野の確保トラップで、両足。

・キックは最初は利き足だけで、うまくなった子は逆足。

・低学年はドリブル重視、高学年からはパス重視。

・まだサッカーがうまくない子は練習重視、うまくなった子はゲーム重視。それでも全体的には練習重視。

 こういった感じでしょうか。

 

 私はもしかしたら練習が多いコーチかもしれません。

 私が愛読しているブログの方で、ゲーム中心でやっていて子どもが上手くなっているうえに結果も出されているということで、非常に興味深く参考にさせていただいています。

 こういった、自分とは違う考えを根拠をもって知れるのもブログのいいところだと思います。

 そういった中、私はどうも「動きの質」といったところに目が行きやすいタイプなのかもしれません。

 それは医学部に入る前からそうだったようです。医学部を卒業した後、根拠が加わった感じです。

 なので練習といっても、もしかしたら他のコーチや保護者からしたら、よくわからない練習をしているように見えるのかもしれません。

 ただ、私は練習とは、ある動きを増強するのではなくて、動きそのものの質を変えることだと思っています。

 武道でいう「型稽古」みたいなものでしょう。

 日常生活で使わない動きを訓練するには、それ相応のことをしなくてはなりません。

 そして、特殊な練習をしていて、弱小チームで延べ30人弱を卒業させて、関東大学リーグキャプテンと副キャプテンを輩出できたわけですから、彼らがあそこまで伸びたのは私の練習の特殊性との関連があってもおかしくないと思ってます。

 だからこそ、ちょっとでも人様の役に立ちたいということで、サッカーブログを書き始めたというのが一つあります。