たいがいの指導者が「ドリブルは手段であって目的ではない、勘違いしないようにしよう」と指導すると思います。
さらにドリブラー自身も「ドリブルは手段」と発言したりします。
たしかに、理論的にはそうだと思います。
ですが、そのときの最適解を子どものうちから求めすぎると、私は逆にプレーの伸びが止まる危険性があるように思います。
たとえば三苫薫や伊東純也は、少年時代はドリブルが「大好きだった」から、ドリブルばかりしていたのだと推測しています。大人になってから「ドリブルは手段云々」言っても、それは本人たちが少年時代に圧倒的なドリブルスキルを磨いた上でのことだと思っています。その前提があるから、言えることだと思います。
もしかしたら、彼らの少年時代のプレー選択は、最適解ではないことが多かったかもしれません。
ですが、ドリブルで勝負するという場数を少年時代に誰よりも踏めたのだと思います。
そのときの最適解とは、そのときの自分の能力に依存します。
ということは、短期的には適切でないことをやって自分の能力を上げれば、その人の最適解自体が変わってきます。
周りに文句言われながらも、ドリブル勝負し続けて、1人はだいたいかわせるようになれば、その選手のプレービジョンは、当然ですが1人もかわせない選手よりもはるかに豊富になります。
簡単にやってもいいし、1人抜いてからパスでもいいのです。
ちょっとドリブルから離れますが、こういったことはサッカー全般に言えると思います。
愛読しているサッカー大好き母\(^o^)/さんが今回のブログで「10点以上取られてぼろ負けしたけど、息子は攻守に走り回って良かった」的なことを書かれていました。
私は本当にその通りだと思っています。
私はうちに有望株がいるとき、たとえ0対10でぼろ負けしても、見ているところは「うちの有望株は、相手強豪チームの個々と同じレベルでやれているか」です。
そこでやれているのならば、その有望株は、強豪チームでやっているよりはるかに多くの経験をしていると思っています。
なにしろ一人で攻守やらなくてはいけないのですから。個人としては伸びると思います。
たとえば関東大学リーグ副キャプテンにまでなったS君には、私はポジションを与えなかったことがあります。
「とにかくボール5mから常に離れるな」とか言っていました。
普通に考えればめちゃくちゃです。
ですがS君はむしろ喜んでやっていました、死ぬほど走って、守備して攻撃していました。
そして10点取られても「絶対1点取ろうぜ!」と味方を鼓舞するのでした。
話をドリブルに戻します。
グアルディオラは、戦術の本質としておもしろいことを言っています。
「攻撃戦術の本質とは、ウインガーに良い状態で1対1の勝負をさせるようなボールを運ぶことである」
確かに考えてみると、パス戦術の要素が強いように思えるグアルディオラですが、ドリブラーを愛しているように思えます。
バルサ時代はもちろんメッシ。
バイエルン時代はリベリーとロッペン。
そして現在のマンチェスターCでは、ドクを愛しているように思えます。
逆を言うと、ボール回しはそこまでむずかしくないとも言えます。
むずかしいのは、突破にかかるパスを出すことです。
そしてそれは、味方が「うしろに下げろ!」と言ったからバックパスをするといったパスとは本質的に違います。
相手の逆をとるということで、むしろドリブル突破に近い感覚だと私は思っています。
そしてドリブルです。
グアルディオラは、サッカーの花形はウインガーのドリブル突破だと思っているらしいのです。
ということは、まずはその花形にチャレンジするのは、至極全うではないでしょうか。
ところが日本では、せっかくいい状態でボールを持っているのに、すぐ「簡単にプレーしろ」「一回下げろ」と、コーチやチームメイトから声がかかります、
もちろん、それが正しい場合もあるでしょう。
ただ、私はそれが嫌なので、低学年のうちはとにかくドリブルをさせている面もあります。
私が2年くらい継続して指導した代は、誰かがいい状態で前を向いてボールを持ったら、味方からは「勝負!」「そこは自分でやれ!」との声がかかります。
私はまず、自分で仕掛けてほしいのです。
私がパスサッカー重視の意見に感じるのは、メンバー11人が全員味方の意図をくみ取ったプレーをしなければならないと思っているのではないかということです。
ですが私の意見はちょっと違います。
極論してしまえば、センターバック1人とセンターハーフ1人の2人が、サッカーをわかっていればいいと私は思っています。
あとの選手はある意味職人的な選手でいいのだと思います。
そして職人といっても、ある程度のパス回しはちょっと練習すればだれでもできます。
ということは、どこに強みをつけるかというと、やはりドリブルと1対1でしょう。
そして、組織といいますが、ドリブル主体の組織というのもあるのです。
味方は、ドリブルしている選手が抜けるかどうかを見ています。抜けないと思ったらあらかじめカバーに入ります。
抜けると思ったら前線に走ります。
メッシが典型的でしょう。
メッシはほぼ抜けるから、味方はメッシがドリブルを始めたら、前方方向にアクションを起こすのです。
これも立派な組織でしょう。
最後に、けっこう定期的に書いていますが、私がある程度うまくなった子には最も自信をもってお勧めしている練習を挙げたいと思います。元日本代表の永井雄一郎さんの練習です。
この練習は本当にうまくなると思います。
私自身、養和時代に先輩だった永井さんにこの練習を教えてもらい実践して、東京トレセンに選ばれました。
ほかにも、この練習をやってうまくならなかった選手を見たことがないのです。
最近、ブログで知り合って今では飲み友(笑)の方から、息子さんの動画が送られてきました。
この練習を定期的にやっているらしいのですが、本当にめちゃくちゃうまくなっていて驚きました。
もちろんその息子さんの才能もあるとは思いますが、それでもこの永井さん練習は、驚異的に実力が伸びると思います。
ぜひ試していただいて上達すれば、こんなにうれしいことはありません。