前回は、メッシのトラップにおける技術的側面等について私が思うことを書かせていただいた。
今回は戦術的側面を絡めて書きたい。
日本の育成年代では最近、↓のようなパス回しはどのチームでもやっていると思う。
もちろんうちのチームでも、こういった練習はやっている。
ただ私は、↑動画のように、ファーストコントロールのときに「一発で方向づけるトラップ」については、練習で身体に染み込ませるまでやるのはどうかなと思っている。
前回も書かせていただいたが、理論的な根拠は風屋八広さんが言っていることだ。
進みたい方向をあらかじめ決めておいて、ボールをそこに動かしたとしましょう。相手に読まれて対応されたら、もうこちらは変化できないですよね。
それに対して体の正面に正確にボールを止めてからステップの踏みかえで反転したら、どの方向へもボールを運べる。すなわち相手の出方を見て変化できます。
止めてからステップの踏みかえで反転するとワンテンポ遅れるように思われるかもしれませんが、ボールを止めた足を着地したときにそのまま軸足にして体の向きを変えると素早く回れます。モドリッチやメッシのプレーを見てください。彼らがよくやっています。
そのことを踏まえて、メッシのプレーを見てみる。
メッシには止め方が2つある。
1つ目は「スペースがないとき、足元にピタッとボールを静止させて敵と正対して止める」だ。
↑動画28秒はその典型だと思う。
2つ目は「スペースがあるとき、連続タッチで敵に向かってボールを前に持ち出す」だ。
↑動画4分16秒はその典型だと思う。
どちらにも共通しているのが「敵に向かい合う」だ。
メッシは、ほとんどのプレーで、1回は一瞬でも敵と向かい合う。
正対することによって、右にも左にもいける身体の向きを作る。
それによって敵に飛び込ませない間合いを作る。
そういった視点から、私は最初に挙げた「岡田メソッド」の動画のような「一発のトラップで予め決まった方向にトラップすることを練習でやりすぎることの弊害」を考えている。
もちろん素晴らしい設定の練習だと思う。
だがもし私ならば、練習設定はそのままに「パスの受け手は必ずコーンに一回正対してピタッとボールを止めよう。それからボールを持ち出そう」と指導する。
ダイレクトで返す場合はもちろん例外。
トラップしてもう一回タッチしてボールを持ち出すから、一手間かかる。だから練習の見栄えは良くないかもしれないけども「正対トラップ」がサッカーの本質だと思うので、むしろそこを追求したほうがいいのではないかなと思っている。