ゴキブリライフ6
『ッッあぁ‼︎ 、、 ふぅーー。』
。。。。
俺は
ゴキブリを抱いた。
そして
ゴキブリで、果てた。
ドォォォオオーーーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎((((;゚Д゚爆発音)))))))
凄まじい罪悪感が俺を襲った。
この感覚、男性ならわかるだろう。
俗にいう「賢者タイム」というやつだ。
初めての自慰行為を終えた後。
初めて女性を抱いた後。
数分前まであんなに興奮してたのに、今じゃ女の裸をみても何も感じない。というか、もう二度と見たくもない。
俺はなにをやってるんだ!
なんてバカなことをやってしまったんだ!
もう消えてなくなりたい‼︎
うぁぁぁーーーーーー‼︎
という、男性がみんな体験するあの罪悪感。
の100倍くらいの罪悪感が俺を襲った。
俺はなにしとんじゃ。
ゴキブリやぞ!
相手はゴキブリやぞ!
なに興奮しとんじゃ!
なに抱いとんじゃ!
なに果てとんじゃ!
なに体位ちょっと変えとんじゃ!
バカか!?
いやバカじゃない!
クソボケスケベアトサキカンガエナイウスッペラチンポゴミムシじゃ!
死ね!
太宰治の本に挟まって死ね!
そんな言葉が脳内を猛スピードで駆け巡った。
そんな俺を尻目に
「最高だったわ♡あなた意外と激しいのね♡」と言わんばかりのうっとりした表情で見つめる、メスゴキブリ。
うん、、、、
「てめぇ殺してやろーか‼︎‼︎‼︎‼︎」
彼女は悪くないのに
本気で殺したくなった。
「うぁぁぁーーーーーー!」
俺は全速力で下水道を駆け抜けた。
とにかく忘れたかった。
あの時の俺の、遠くに遠くにいきたかった。
迷路のような下水道を、縦横無尽に駆け抜けた。
前も後ろもわからなくなるほど、がむしゃらに。
カサカサカサカサカサカサ
それでも
どこまでも罪悪感は追いかけてきた。
ピッタリと俺の真横につき、アヘ顔メスゴキブリのハメ撮り残像を見せつけながら語りかけてくる。
「人間だったのにこんなことしちゃうんだねぇー」
「あぁーすごいスケベだねぇー!」
「気持ちよかったぁ~?」
いや、、
カンパニー松尾かよ‼︎
薄暗い下水道
一筋の光が差し込んでいた。
あそこに行けば
逃げられる。
そんな気がした。
『眩しっ‼︎』
照りつける太陽。
そびえ立つビル群。
行き交う自動車。
俺は生まれて初めて
地上に出た。
つづく
ゴキブリライフ5
ゴキブリとして生まれ変わって、3ヶ月が経った。
カラダも大きくなり、羽まで生えてきた。
正直、自分でも信じられない。
まさかここまで順応するとは思ってもいなかった。
しかし、悲しい事に順応してしまった。
今では壁も登れるし、平気で死骸食べるし、他のゴキブリと簡単なコミュニケーションまで取れるようになった。
たまにゴキ仲間と集まって、触覚こすり合わせて、和気あいあいとコミュニケーションを取るほどに成長した。
ちなみに俺はそれを、ゴキュニケーションと呼んでいる。(どうでもいい)
触覚ってすごいんだぜ。
どんな風にすごいかっていうと、だいたいわかるんだ。
何がわかるかっていうと、だいたいがわかるんだ。
説明しようがないんだけど、伝わるかな?
だいたいわかるの。だいたい。
大きさとか温度とかそうゆうのはもちろん、意思とか殺気とかそうゆうのもだいたいわかる。
だいたいわかった?
まあとにかく俺は、この三ヶ月で見た目だけじゃなく中身もだいたいゴキブリになちゃったわけだ。
正直、ゴキブリとして生きていることになんの嫌悪感も感じなくなっている。
『多分このままゴキブリとして生きて、ゴキブリらしく薄暗い所で死んでいくんだろなぁ。まあいいや~。』
そんな感じ。
確かに生きていく上でなんの支障もない。
外敵も少なく、食料も十分ある。
満たされている。
ただ、一つだけ満たされないことがあった。
「性欲」だ。
ここ最近ずっとムラムラしていた。
ちょっと前まではそんなのなかったのに、常にムラムラする。
おそらく俺のカラダは、繁殖活動が出来る段階まで成長したということだろう。
別にムラムラすることはいいんだ。
正直言って、人間の時も常にムラムラしてた。(毎日シコシコしてた。)
ただ、ムラつく「対象」に問題がある。
そう
メスゴキブリに興奮するんだ。
天海つばさや明日花キララや篠田ゆうに興奮するのではなく
ゴキブリに興奮するんだ。
お年頃のメスゴキブリとすれ違う時
チラ見しちゃうし
さりげなく匂い嗅いじゃうし
触覚をピンと張ってカッコつけちゃう俺がいるんだ。
『まあ大丈夫。さすがにゴキブリはない。』
そう言い聞かせていた。
そんなある夜。
いつものように食事(虫の死骸)を済ませ、寝床に帰りウトウトしていた時だった。
何かの気配を感じた。
触覚に意識を集中し、その気配を追う俺。
ネズミか?
違う
虫だ。
ゴキブリだ。
メスだ!
お年頃のメスだ‼︎
気配がどんどん近づいてくる。
なんだ
なんで近づいてくるんだ!?
何の用だ!?
そして俺の目の前まで来て、ピタッと止まった気配。
ゆっくりと目を開ける、俺。
え?
『めちゃ可愛い‼︎‼︎ 』
あり得ない状況だった。
端正な顔立ち
艶やかに黒光る肌
細く長い官能的な触覚
上玉なメスゴキが俺の目の前にいた。
しかも、、裸。(あたりまえ)
裸の女が俺のベッドルームにいる。
そして、いやらしく腰をくねらせている。
『俺を、誘ってるのか⁈』
正直、、もうビンビンだった。(触覚も)
『だめだ、我慢できねぇ!』
つづく
ゴキブリライフ4
そう。
ウンコはめちゃくちゃ美味しかった。
例えるなら、、、いや、例えられないほどの美味さだった。
おそらくゴキブリには人間のような味覚はない。
だからこそ、栄養分をそのままストレートに感じ取り、幸福感を得ることができるのだろう。
ゴキブリがなんでも食べる理由がわかった。
だってなんでも美味しいんだから。
『ちくしょう!美味すぎんだよ!くそが!』
気づけば俺は、もはや自分の意思でウンコを食べていた。
人間生活26年で培った清潔感と羞恥心は、脆くもウンコの前で崩壊した。
大好物だった「早い!安い!旨い!」の三つ文句でお馴染みの吉野家の牛丼よりも
「臭い!汚い!旨い! 」でお馴染み(?)のウンコの方が美味しく感じるのは、前の二つ文句がハードルを極限まで下げてくれているからだろうか。
いや違う。
間違えなくウンコの方が美味い。
これは事実だ。
もし、食べログにウンコがあったら俺は迷わず5つ星を付ける。
もし、わんこそば大会ならぬ「ウンコそば大会」が開催されたなら、俺は2位以下に大差をつけ優勝するだろう。そもそも誰も参加しないだろう。
もし合コンで女の子から
「好きな食べ物なぁにー?」と聞かれたら
真っ直ぐな瞳で「ウンコ!」と即答するだろう。
そして俺はその合コンで、女の子ではなく「女の子のウンコ」をお持ち帰りするのだろう。
それくらい、ウンコは美味しかった。
美味しくて美味しくて美味しくて、気が狂いそうなほど、美味しかった。
本当だ。
信じて欲しい。
ウンコは美味いんだ!
今これを読んでいる人は、きっとこう思ってるだろう。
『ウンコのくだり長ぇーよ!美味いのはわかったよ!』と。
ならば言わせていただきたい。
正当化くらいさせてくれよ‼︎‼︎‼︎
ウンコ喰ったんだぞ‼︎
これくらい言わないと恥ずかしいんだよ‼︎
「美味しい」と「悔しい」
が心のシーソーでバッタンバッタンと上下運動を繰り返す中で、俺はふと思った。
『そういえば、家族はどうしてるのかな?』
死んでから生まれ変わるまでが衝撃の連続で、全く考えていなかった。
死んだ事を悔やむ時間も、悲しむ時間も与えられなかった。
きっと両親は悲しんでいるだろう。
まだ26歳の息子が、不慮の事故で死んだんだ。
底知れない悲しみに打ちひしがれているのだろう。
そして、悲しみの中こう願ってるのだろう。
「どうか、天国で笑っていて欲しい。」と。
父さん、母さん。
聞こえますか?
僕は今
「下水道でウンコを食べています。(めちゃウマ♪)」
そんな風に
自己嫌悪と
開き直りを繰り返し
俺はこの下水道でゴキブリとして
着実に成長していったのです。
つづく
