源氏物語名場面㉜
紫の上 弐
明石の君編Ⅱ
嵐山
大堰川の紅葉
🔲
「急なお願いで恐縮ですが、
明石の娘を育てていただけませんか」
明石の君のもとで育てるよりも
身分の高い紫の上の養女になる方が
娘の将来のために良いと判断したからだ。
例えば
地方官/国司の娘である
明石の君の娘では入内できない。
孫娘の入内が
前播磨国司明石入道の悲願だった。
ちなみに
入内できるのは大納言以上だが
大納言の娘は《更衣》として
大臣以上は《女御》と
して入内する。
《更衣》が
《中宮》になることはなかった。
◇
紫の上はもともと無類の子供好き。
「姫君を大事に育てます」
■
姫君を【二条院】に迎えた当初は
実母を慕って泣いていたが
日を追って
紫の上に懐くようになった。
紫の上は
姫君が打ち解けるに
従って
明石の君を訪ねる源氏を怒った
り膨れたりしなくなった。
それどころか
「もし
わたしが明石の君の立場であれば、
娘と引き離されて頭がどうかなりそう」
紫の上に
明石の君の気持ちを慮る余裕が芽生えている。
姫君を抱き上げたり
追いかけたりして戯れている
紫の上はさながら実の母のようである。
次回は、朝顔
紫の上挽歌