奈良県のHPから
興福寺五重塔の輪郭を左に見たあと、春日大社表参道
をそのまま進めば、迷うことはなかったが、近道の
真っ暗な浅茅ケ原に踏み込んだから、
『いにしえに迷った』のでした。
目的地の新薬師寺は、案内マップの右上辺にあります。
荒涼とした広い境内には木枯らしが音を立てて吹き荒れている。
ひどく疲れているが、奈良盆地のはずれ新薬師寺まで約5㌔の道のりを帰らなければならない。
真冬の、かそけき月明かりだけが頼りである。
尼ヶ辻まで一本道だ。
そこを右に折れたらJR奈良駅を右に見て、三条通りを猿沢の池、奈良公園と道筋はわりと単調である。
意を決して、吹きすさぶ寒風の中に一歩を踏み出した。
かつては賑わいをなしたであろう都城の通りも、今はなんの変哲もない田舎道である。
とりわけ、背の高い大寺院の五重塔や神社の鳥居が見えない夜はそうだ。
農家と田畑、古びた土塀を左右の闇に感じながら、ひたすら新薬師寺を目指して歩を進めた。
寒さと睡魔と必死に戦いながら、黙々と歩き続ける。
厳寒の中で身体の内部にぬくもりを感じてきたころ、左向こうに、影絵のような興福寺五重塔の黒い輪郭が姿を現した。
間もなく、春日大社の一の鳥居にたどり着いた。
時計の針は午前2時を少し回っている。
方向を見失ったのは、無難な春日大社の表参道をそれて何度か訪れている安心感から、夜の浅茅が原に踏み込んでからだった。
