古に迷う⑦浅茅ケ原 | 吉備路残照△古代ロマン

吉備路残照△古代ロマン

吉備路自転車道を回って以来すっかり古代吉備国の残り香に取り憑かれました。
歴史と神話が絡み合っているから多くの遺蹟の故事来歴が謎に包まれています。
鬼ノ城・温羅伝説・鳴釜神事等の謎に新しい解釈を加えていけるので楽しみです。

奈良県のHPから

 

興福寺五重塔の輪郭を左に見たあと、春日大社表参道

をそのまま進めば、迷うことはなかったが、近道の

真っ暗な浅茅ケ原に踏み込んだから、

いにしえに迷った』のでした。

 

目的地の新薬師寺は、案内マップの右上辺にあります。

 

 

 

 

 

 

荒涼とした広い境内には木枯らしが音を立てて吹き荒れている。


ひどく疲れているが、奈良盆地のはずれ新薬師寺まで約5㌔の道のりを帰らなければならない。


真冬の、かそけき月明かりだけが頼りである。

 

尼ヶ辻まで一本道だ。


そこを右に折れたらJR奈良駅を右に見て、三条通りを猿沢の池、奈良公園と道筋はわりと単調である。



意を決して、吹きすさぶ寒風の中に一歩を踏み出した。

 

かつては賑わいをなしたであろう都城の通りも、今はなんの変哲もない田舎道である。

 

とりわけ、背の高い大寺院の五重塔や神社の鳥居が見えない夜はそうだ。


農家と田畑、古びた土塀を左右の闇に感じながら、ひたすら新薬師寺を目指して歩を進めた。

寒さと睡魔と必死に戦いながら、黙々と歩き続ける。


厳寒の中で身体の内部にぬくもりを感じてきたころ、左向こうに、影絵のような興福寺五重塔の黒い輪郭が姿を現した。

 

間もなく、春日大社の一の鳥居にたどり着いた。


時計の針は午前2時を少し回っている。

 

 

方向を見失ったのは、無難な春日大社の表参道をそれて何度か訪れている安心感から、夜の浅茅が原踏み込んでからだった。