アルコネクトのきっと役立つリハビリ豆知識

アルコネクトのきっと役立つリハビリ豆知識

脳卒中の後遺症、パーキンソン病、骨折の後遺症・変形性膝関節症・腰痛などに対する科学的な裏付けに基づいたリハビリの提供をしています。リハビリに役立つ豆知識や日頃考えていることなどを発信していきたいと思います!よろしくお願いします!

 

こんにちは!
アルコネクト代表の市川です!

 

 

今回のテーマは『転倒』です。


厚生労働省の調査によれば、骨折・転倒は、
介護が必要となった原因の上位を占めます。


転倒の主な原因は・・・

①転倒した経験がある (転倒歴)
②転倒恐怖感
③認知機能低下
④バランス低下
⑤フレイル などが影響すると言われます。

※フレイルとは・・・
年齢を重ね、心身機能が低下した状態


さらに高齢の方では・・・

①経済的状況
②聴覚障害
③視覚障害
④社会活動の減少
⑤身体活動量の低下
⑥うつ病 なども影響があると言われます。

転倒には、様々な背景があることが
わかります。

 

 

今回は『転倒恐怖感』に焦点を当て、
話を進めたいと思います。


転倒恐怖感とは、その言葉の通り
『転びそうで怖い』ことです。


厄介なのは転倒の要因になるだけでなく、
生活の質(QOL)にまで影響があることです。


ではどうしたら転倒恐怖感を減らせるのか?


その1つが『運動』です!


kunarらによると・・・

太極拳・ヨガ、歩行練習・バランス練習、
筋力トレーニングなどを行うことによって、
転倒恐怖感を減らせると報告されています。


Kpらによると・・・

Otago exercise program(OEP)と
体幹トレーニングを行うことで、
バランスや転倒恐怖感を改善できたと
報告しています。


ちなみに・・・
OEPとは、筋トレとバランス練習を行う
運動プログラムのことです。


つまり、運動を行うと身体機能を高め、
転倒恐怖感を減らせる
ことがわかります。

 

 

しかし・・・
運動直後は効果がみられるものの、
時間経過にしたがってその効果は、
薄れてしまうと言われています。


Ambrensらによれば・・・

エクサゲームを行うことで、バランス能力は
改善したものの、転倒恐怖感は少なく
できなかったとしています。


※エクサゲームとは・・・
テレビゲームを用いた運動のことです。


このことを踏まえると・・・
・どんな運動を行うのか?
・運動を続けること
・転倒のリスク要因の評価を行うこと


この3点はポイントかなと思います。

 

 

冒頭でお話しましたとおり、
転倒する原因は1つだけではありません。


低リスク・中リスク・高リスクと分け、
それぞれで対策を変える必要があるのでは?
と考えています。


健康教室・介護予防教室などの取り組みの
重要性が周知されるとともに、社会全体で、
『転倒予防』に取り組んでいくことが
必要なのではないでしょうか。


転倒予防のコラムはこちら>>

 

 

本コラムが、少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

【参考文献】 

1)Kendrick et al.Exercise for reducing fear of falling inolderpeople living in the community. Cochrane Database Syst Rev.
Nov 28 2014;(11):CD009848.doi:10.1002/14651858.CD009848.pub2

2)厚生労働省 国民生活基礎調査(令和元年)(2022年3月20日閲覧)

3)厚生労働省 我が国の人口について(2022年3月20日閲覧)


4)Mehta, Jignasa et al. “Visual risk factors for falls in older adults:
a case-control study.” BMC geriatrics vol. 22,1 134. 17 Feb. 2022, doi:10.1186/s12877-022-02784-3


5)Jaatinen R, Luukkaala T, Hongisto MT, Kujala MA, Nuotio MS.
 Factors associated with and 1-year outcomes of fear of falling in a geriatric post-hip fracture assessment.
Aging Clin Exp Res. 2022 Sep;34(9):2107-2116. doi: 10.1007/s40520-022-02159-z. Epub 2022 Jun 21. PMID: 35727456; PMCID: PMC9464161.


6)Kumar, Arun et al. “Exercise for reducing fear of falling in older people living in the community: Cochrane systematic review and meta-analysis.
” Age and ageing vol. 45,3 (2016): 345-52. doi:10.1093/ageing/afw036


7)Kp, Nimmi et al. “Comparison of effects of Otago exercise program vs gaze stability exercise on balance and fear of fall in older adults: A randomized trial.” Medicine vol. 103,23 (2024): e38345. doi:10.1097/MD.0000000000038345


8)Ambrens, Meghan et al. “Effect of eHealth-delivered exercise programmes on balance in people aged 65 years and over living in the community:
a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.” BMJ open vol. 12,6 e051377. 10 Jun. 2022, doi:10.1136/bmjopen-2021-051377

 

 

 

 

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です!

 

 

今回は脳卒中患者さんに対する
前庭リハビリテーションの効果を
解説したいと思います。

 

 

 

前庭リハビリテーションという言葉を
初めて聞いた方もいらっしゃるかと
思います。


実は1940年代、今から80年以上の
Cawthorne―Cooksey exerciseに
由来するリハビリです。


あまり馴染みがないのは、その重要性は
認識されながらも、日本では最近になり、
研究会の立ち上げやガイドライン作成が
行われたからかと思います。

 
 

前庭リハビリテーションとは?

 

前庭は平衡感覚を保つために必要です。


腕・脚・首・目の動きと関係があり、
姿勢を保つために働きます。


これらの調整がうまくいかなくなると
めまい、ふらつきなどが見られるように
なります。


前庭リハビリテーションの代表的な
エクササイズの種類には・・・


①適応
②慣れ
③代償(代用)
この3つがあります。


①適応・・・
目や頭を動かすことによって、前庭機能の
働きの改善を目指すものです。


代表的なエクササイズは、
『Gaze Stability Exercise』です。


1つの文字を見続けながら、頭を動かしたり、
右(上)と左(下)に文字を配置して目だけを
動かすエクササイズなどがあります。


②慣れ・・・
めまいの起こる頭の動きや動作を
繰り返し、練習を行います。


めまいの起きる動きを繰り返すのは
正直驚きました。
めまいが強い場合やすぐにめまいが
誘発される場合は実施が難しいことが
あるのかなと思います。


③代償(代用)
低下した前庭機能を他の機能で補うために
バランス練習や歩行練習を行います。

 

 

1.前庭リハビリの効果

 

Mitsutakeらによれば・・・

脳卒中患者さんの場合、頭を能動的に
(意識をもって)動かしているときの
立位バランスは不安定になりやすいと
言われています。


私の解釈になりますが、歩行しながら
横に顔を向けたり、後ろを向いたりすると
ふらつくと言えるかも知れません。



脳卒中患者さんが前庭リハビリを行うと
バランス能力や歩行能力に対する効果を
検証した研究は数多くあります。

 

 

1) Meng らによると・・・

<内容>
通常のリハビリ+前庭リハビリ


4週間以内の介入(リハビリ)によって、
バランス能力や歩行能力が向上すると
報告しています。

 

 

2)Zhaoらによると・・・

<内容>
・Gaze Stability Exercise
・通常の理学療法

<頻度・時間・期間>
週5回・30分・4週間


バランス能力・歩行能力・
マヒ側の脚の振り出し(遊脚期)や
対称性が改善したと報告しています。

 

 

3) Ghaffariらによると・・・


<内容>
・前庭リハビリ

<頻度・時間>
週3回・60分


疲労感・抑うつ・日常生活動作の
自立度の改善がみられたとしています。

 

 

4) Ekvallらによると・・・

<内容>
・前庭リハビリ
・通常のリハビリ


めまい症状のある脳卒中患者さんに
対して前庭リハビリを行うことで、
通常のリハビリのみと比較し、
自己評価による健康状態が改善した
報告しています。

 

 

5) Sanaらによると・・・

<内容>
・前庭リハビリ

<頻度・期間>
週3回・8週間


前庭リハビリを行った場合でも、
比較対象のVirtual Reality(VR)を
用いたリハビリでも歩行能力・
バランス能力・めまいの障害度合いが
改善したと報告されています。


特に前庭リハビリでは、めまい症状の改善、
VRでは、歩行能力やバランス能力の改善
役立てられたとしています。

 

 

本コラムをお読みになり、前庭リハビリに
興味をもたれた方は、担当スタッフに
ご相談いただくのをお勧めします!

 

 

今回は脳卒中患者さんに対する
前庭リハビリテーションの効果を
解説しました。


本コラムが皆さまの何かの
お役に立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2023年11月27日)
(執筆日:2024年6月6日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献

1)Mitsutake, Tsubasa et al. “The Control of Postural Stability
during Standing is Decreased in Stroke Patients during Active
Head Rotation.” Journal of physical therapy science 
vol. 26,11 (2014): 1799-801. doi:10.1589/jpts.26.1799

2)Meng, Lijiao et al. “Vestibular rehabilitation therapy
on balance and gait in patients after stroke:
a systematic review and meta-analysis.” 
BMC medicine vol. 21,1 322. 25 Aug. 2023,
doi:10.1186/s12916-023-03029-9

3)Zhao, Ruoxin et al. “Effects of Gaze Stabilization
exercises on Gait, Plantar Pressure, and Balance Function
in Post-Stroke Patients: A Randomized Controlled Trial.” 
Brain sciences vol. 12,12 1694. 9 Dec. 2022,
doi:10.3390/brainsci12121694

4)Ghaffari, Amin et al. “The Effects of Vestibular
Rehabilitation on Poststroke Fatigue: A Randomized
Controlled Trial Study.” Stroke research and treatment
 vol. 2022 3155437. 31 Aug. 2022,
doi:10.1155/2022/3155437

5)Ekvall Hansson, Eva et al. “Vestibular rehabilitation
for persons with stroke and concomitant dizziness-
a pilot study.” Pilot and feasibility studies 
vol. 6 146. 30 Sep. 2020,
doi:10.1186/s40814-020-00690-2

6)Sana, Vishal et al. “Effects of vestibular
rehabilitation therapy versus virtual reality
on balance, dizziness, and gait in patients with
subacute stroke: A randomized controlled trial.”
 Medicine vol. 102,24 (2023): e33203.
doi:10.1097/MD.0000000000033203

 

 

 

 

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムでは、腰椎椎間板ヘルニア(LDH)の
手術後のリハビリを解説したいと思います。



椎間板ヘルニアとは?

椎間板は『線維輪』と『髄核』があります。
椎間板の中心部分には髄核があり、
その周りを線維輪が包んでいます。


アンパンに例えると、
パンが線維輪、あんこが髄核です。


クッションの役割をもつ椎間板ですが、
ストレスが繰り返し加わることによって
変性してしまいます。


やがて線維輪に亀裂が生じて、
髄核が飛び出し、神経を圧迫します。


すると「痛み」「痺れ」などの症状が
出現します。これがヘルニアの正体です。


ヘルニアの治療での2本柱は、
「保存療法」と「手術療法」です。

 

 

保存療法は、手術をしない治療です。
手術療法は、外科的に原因を取り除きます。
手術後のリハビリに関して、世界中で
様々な報告があります。

 

 

 

1.手術後リハビリの効果

 

1) Changらによると・・・

<内容>
体幹トレーニング実施


(実施しないグループと比べて)
体幹トレーニングを実施することで、
腰痛による日常生活への影響の改善
(Oswestry Disability Index:ODI)・
腰椎の可動域が向上したと報告しています。

※術後3ヶ月以内に実施した効果です。

 

 

2)Wangらによると・・・

<内容>
通常の理学療法+牽引療法


通常の理学療法のみ行うよりも、
牽引療法を追加して行うことで、
痛みや腰痛による日常生活への影響
(ODI)が改善されたと報告しています。

 

 

徒手療法による効果も検討もされています。

3)Danazumiらによると・・・

<内容>
・神経モビライゼーション
・マリガンのマニュアルセラピー
 または脊椎マニピュレーション

<頻度・時間・期間>
週2回・10分・6週間


マリガンのマニュアルセラピーは、
脊椎マニピュレーションと比べて、
痛み・症状の煩わしさ(SBI)頻度(SFI)の改善、
歩行能力の向上が
みられたとしています。


ちなみに・・・
マリガンに比較して、効果が少ないものの、
脊椎マニピュレーションにも効果があったと
しています。


いずれの徒手療法も熟練した技術が
必要ですので、施術者によって効果が
異なる可能性があります。


対して、Wangらにあった牽引療法は、
設定さえ守ることができれば、
施術者による差が出にくいのが特徴です。

 

 

牽引療法・徒手療法と続きましたが、
運動療法自体の効果も検証されています。

4)Manniらによると・・・

<内容>
①専門職とリハビリを実施
②アドバイスのみ
③治療なし


専門職とのリハビリでは、
アドバイス・治療なしと比べて、
痛みや腰痛による日常生活への影響 (ODI) が
改善したと報告しています。


※この論文は、椎間板ヘルニアだけでなく、
脊柱管狭窄症やすべり症の術後の患者さんも
含まれており、解釈に注意が必要です。

 

 

リハビリの方法によって違いはあるものの、
全体としては、ポジティブな効果が
得られそうであることがわかりました。


それでは、リハビリを行うタイミングで
効果に違いがあるのでしょうか??

 

2.リハビリを行う必要性とタイミング 

 

1) Uysalらによると・・・

①運動なし
②術後2週間目から歩行練習
③術後1ヶ月目から歩行練習
④術後2週間目から体幹トレーニング
⑤術後1か月目から体幹トレーニング


以上の5つのグループに分け、
それぞれの方法で痛みや機能障害に
どのような効果があるかを検証しています。

【痛み】

術後1ヵ月時点

術後2週後から歩行練習または
体幹トレーニングを行ったグループに
痛みの改善を認めた。

術後3ヵ月時点
術後1ヵ月目後から歩行練習を開始した
グループは、術後2週目から開始した
グループと比べて、痛みが有意に高かった
(強かった)。

術後12ヵ月時点
運動を行わなかったグループは、
その他のグループ(②~⑤)との比べて
痛みの強さが有意に高かった(強かった)。


【機能障害】

術後1ヵ月時点

術後2週目から歩行練習または
体幹トレーニングを行ったグループは
他のグループに比べて機能障害が
改善した。

術後12ヵ月時点
運動を行わなかったグループは
他グループ(②~⑤)に比べて、機能障害が
強かった。

 

 

まとめると・・・
椎間板ヘルニア手術後、リハビリを
行うことによって、痛みや機能障害の
改善すると言えます。


この結果をみると、早く始める方が、
一見良さそうに思えます。


しかし長い経過をみると・・・
手術後1ヶ月から開始した場合も、
2週間後に開始した場合と大きな差が
みられなくなります!


『すぐにリハビリしなくて大丈夫?』と
不安になるかと思いますが、手術後の
経過をみながら、安全にリハビリを
行うことが大事かなと思います。


リハビリ専門職は、医師の指示に従うこと、
看護師さん、介護士さん、栄養士さんなど
様々な職種から、院内生活の状況を
聴取することが大切です。

 

 

3.手術後の経過

 

手術後はすぐに退院になることもあり、
『退院して大丈夫かな』不安になられる方も
多くいらっしゃいます。


1)Dorawらによると・・・

①手術後
②術後3ヶ月
③術後9ヶ月
④術後15ヶ月
⑤術後5年


経過を追うにしたがって痛みは、
軽減されたと報告しています。


痛みの強さは、手術後と術後3ヶ月では、
差がみられず、3ヶ月以降に差がみられた
(改善がみられた)としています。


そのため、手術後の注意点を守り、
運動を行いつつ、時間経過も
必要な要素なのかなと思います。

 

 

手術後の痛みの強さには、
『今後の雇用に対する考え方(患者さん自身)』
『うつ病」が影響すると言われています。


そのため、必要に応じて心理面のサポート・
内服薬の調節が必要なのかも知れません。

 

 

以上のことを考えると、
リハビリ専門職だけでなく、他職種が
連携し、患者さんの治療に携わることが
大事かなと思います。

 

 

本コラムでは、腰椎椎間板ヘルニア(LDH)の
手術後のリハビリについてを解説しました。


本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。



最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2023年11月17日)
(更新日:2024年6月3日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献
1)Chang, Min Cheol et al.
“Effect of exercise on stabilizing and strengthening
core musclesfor patients with herniated lumbar disc:
A systematic review andmeta-analysis.
” Asian journal of surgery vol. 47,1 (2024): 731-733.
doi:10.1016/j.asjsur.2023.10.007

2)Wang, Wenxian et al. “Clinical Efficacy of
Mechanical Traction asPhysical Therapy for
Lumbar Disc Herniation: A Meta-Analysis.” 
Computational and mathematical methods in medicine 
vol. 2022 5670303. 21 Jun. 2022, doi:10.1155/2022/5670303

3)Danazumi, Musa Sani et al. “Effects of spinal manipulation
or mobilization as an adjunct to neurodynamic mobilization for
lumbar disc herniation with radiculopathy:
a randomized clinical trial.
” The Journal of manual & manipulative therapy 
vol. 31,6 (2023):408-420. doi:10.1080/10669817.2023.2192975

4)Manni, Tiziana et al. “Rehabilitation after lumbar spine
surgeryin adults: a systematic review with meta-analysis.
” Archives ofphysiotherapy vol. 13,1 21. 16 Oct. 2023,
doi:10.1186/s40945-023-00175-4

5)Uysal, E et al. “The necessity and timing of exercise after
lumbar disc herniation surgery.” European review for
medical andpharmacological sciences
 vol. 27,20 (2023): 9521-9529.doi:10.26355/eurrev_
202310_34125

6)Dorow, Marie et al.
“The Course of Pain Intensity in Patients
Undergoing Herniated Disc Surgery: A 5-Year Longitudinal
Observational Study.” PloS one vol. 11,5 e0156647. 31 May.
2016, doi:10.1371/journal.pone.0156647

 

 

 

 

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

本コラムでは、後ろ歩きの練習をすると
どんな効果が
期待できるのかを解説します!

 

 

<脳卒中>

Chenらによると・・・

<内容>
・後ろ歩き
・後ろ歩き+従来のリハビリ

<頻度・時間・期間>
週3~8回・10~30分・1~3週間

歩行速度・ケイデンス(一定時間の歩数)・
マヒ側の歩幅・歩行の対称性・バランス・
歩行能力の向上したとしています。


Wenらによると・・・

<内容>
・後ろ歩き
・従来のリハビリ(運動)

<頻度・時間・期間>
週3~6回・30~40分・3~4週間


前方への歩行練習+従来のリハビリを
行った場合に比べて、歩行速度・ケイデンス
(一定時間の歩数)・バランス・マヒ側の歩幅が
向上したと報告しています。


Chenらの報告の結果と、似ていますよね!


Changらのパイロット研究によると・・・

<内容>
・トレッドミルでの後ろ歩き
・従来の理学療法

<頻度・時間・回数>
週3回・30分・4週間

従来の理学療法では、6分間歩行距離が
延長するのみだったのに対して、
後ろ歩きの練習を行ったグループは、
バランス・歩行能力・歩行速度・
6分間歩行・FVC(肺活量)やFEV1.0
(呼吸量)などの肺機能の改善
得られたと報告しています。

 

 

<注意点>
研究によっては、
介入群(後ろ歩きを実施した)も
対照群(後ろ歩きを実施しない)においても
介入方法が統一されていない場合もある点に
注意が必要です。


どういうことかというと
比較対象となったグループ(対照群)も
歩行練習や従来のリハビリを行っている
場合もあるため、そのことが結果に
影響を及ぼしている可能性があります。


後ろ歩きを練習する場合は、
練習の特性上、転倒に十分な
注意が必要です。


現在、リハビリを行っている方でしたら
担当スタッフにご相談いただくのも
良いかも知れません!

 

 

今回は脳卒中の患者さんが行う
後ろ歩きの効果を解説しました。

 

 

本コラムが皆さまの少しでもお役に
立てましたらとても嬉しいです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年6月16日)
(更新日:2023年9月8日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献

1)Chen, Ze-Hua et al.
“Effectiveness of backwardwalking for people
affected by stroke: A systematicreview and
meta-analysis of randomized controlled trials.
” Medicine vol. 99,27 (2020): e20731. doi:10.1097/
MD.0000000000020731

2)Wen, Hongwei, and Min Wang.
“Backward Walking Training Impacts Positive Effect on
Improving Walking Capacity after Stroke: A Meta-Analysis.
” International journal of environmental research
and public health vol. 19,6 3370. 12 Mar. 2022,
doi:10.3390/ijerph19063370

3)Chang, Ken-Wei et al.
“The Effect of Walking Backward on a Treadmill on
Balance, Speed of Walking and Cardiopulmonary Fitness
for Patients with Chronic Stroke: A Pilot Study.”
 International journal of environmental research and
public health vol. 18,5 2376. 1 Mar. 2021,
doi:10.3390/ijerph18052376

4)Moon, Yiyeop, and Youngsook Bae.
“The effect of backward walking observational training
on gait parameters and balance in chronic stroke:
randomized controlled study.” European journal of
physical and rehabilitation medicine vol. 58,1 (2022):
9-15. doi:10.23736/S1973-9087.21.06869-6

5) Bansal, Kanika et al.
“Does Falls EfficacyInfluence the Relationship Between
forward and Backward Walking Speed After Stroke?.” 
Physical therapy vol. 101,5 (2021): pzab050.
doi:10.1093/ptj/pzab050

 

 

 

 

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECT (アルコネクト)の代表
市川です。

 

 

今回のコラムでは変形性膝関節症に対する
テーピングの効果を解説したいと思います。

 

 

スポーツが好きな方であれば、
お相撲さんやサッカー選手が関節の周りに
テープをつけているのを見たことが
あるのではないでしょうか。


テーピング用品はドラッグストアや
通販でも購入することができます。

 

 

スポーツの現場やケガの応急処置としても
用いられるテーピングは果たして、
変形性膝関節症の症状にも効果が
あるのでしょうか?


Mahanedらによると・・・

<実施内容>
・テーピング
・TENS(電気刺激療法)
・運動(筋トレやバランストレーニング)

<頻度・期間>
週2回・6週間

運動と電気刺激療法を行った場合に比べ
関節可動域や痛みがより改善が得られた
報告しています。


MAOらに報告によれば・・・

<実施内容>
・テーピング
・理学療法
・薬物療法


理学療法のみ、偽のテーピングを行った
場合に比べて、痛みや筋力(等速性収縮)
改善が得られたと報告しています。


Wuらによれば・・・

<実施内容>
・テーピング
・運動

<頻度・期間>
4日~毎日・14日~6週間

(幅があるのは、この論文の種類が
メタアナリシスであるためです。)
メタアナリシスは論文のいわば総集編
と言えます。


運動のみを行う場合と比較して痛みの
緩和が得られると報告しています。


Luらによれば・・・

<実施内容>
・テーピング

<期間>
1週間~6週間

偽のテーピングを行った場合と比較して
安静時や歩行時の痛みが軽減し、
WOMAC(膝関節の状態)、関節可動域の
改善が得られたとしています。

 

 

ここまでくると、テーピングは効果が
ありそうとも思われますが、否定的な
論文もあります。


Donecらによると・・・

<比較対象>
テーピング VS 偽のテーピング

両グループともにKOOS(膝関節の状態)や
関節可動域や歩行速度の改善が得られたが、
グループ間(テーピングと偽の比較)では
有意差なしとされています。

しかし、テーピングを行った場合、
(偽テーピングを行った場合に比べて)
関節症の症状や関節可動域の効果に対する
満足度は高かったと報告しています。


Oğuzらによれば・・・

<比較対象>
運動+テーピング VS 運動

<頻度>
週3回・6週間
両グループともに、痛みや
WOMAC(膝関節の状態)の改善が得られたが
グループ間では有意差がなしとしています。

またCOMPやMMP1・MMP3のような
膝関節症の重症度や進行度を表す血液データは
運動直後には高くなる傾向があったが、
介入による効果はみられなかったと
しています。


Wageckらによれば・・・

<内容>
・テーピング 

<実施期間>
・4日間


テーピングを行った場合、
偽のテーピングを行った場合と
比較して筋力やWOMAC(膝関節の状態)に
有意差はなしとしています。

 

 

まとめると・・・
テーピングを実施する場合には、運動や
電気刺激療法などを組み合わせて行う方が
良いかも知れません。


否定的な論文は、ランダム化比較試験で
あり、論文の総集編であるメタアナリシスを
見る限り、全体として一定の効果が
得られるのかなと思います。


研究間で差があるのは、テーピング方法や
介入期間に違いがあるためなのかも
知れませんし、関節症の重症度別に
分類すると、違った結果になるかも
知れません。


今後の情報が見逃せません!

 

 

変形性膝関節症の患者さんにテーピングを
行うときは、方法や実施期間など、念密に
プランニングする必要がありそうです。


もし患者さんで興味をもたれた方が
いましたら、担当スタッフの方に
ご相談いただくのも良いかも知れません。

 

 

今回は変形性膝関節症に対する
テーピングの効果を解説しました。

 

 

今回のコラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら嬉しいです。


最後までお読みくださり
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2022年6月16日)
(更新日:2024年5月27日)
(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献

1)Wang, Zhen et al.
“Effects of externally-applied,
non-pharmacological Interventions on
short- and long-term symptoms and
inflammatory cytokine levels in patients
with knee osteoarthritis:
a systematic review and network
meta-analysis.” Frontiers in immunology 
vol. 14 1309751. 14 Dec. 2023,
doi:10.3389/fimmu.2023.1309751

2) Mao HY, Hu MT, Yen YY, Lan SJ, Lee SD.
Kinesio Taping Relieves Pain and Improves
IsokineticNot Isometric Muscle Strength in Patients
with Knee OsteoarthritisA Systematic Review
and Meta-Analysis.Int J Environ Res Public Health.
10 04 2021;18(19)doi:10.3390/ijerph181910440

3)Wu H, Yao R, Wu J, Wen G, Wang Y.
Does kinesio taping plus exercise improve
pain and function in patients with knee osteoarthritis?:
A systematic review and meta-analysis of randomized
controlled trials. Front Physiol. 2022 Sep 9;13:961264.
doi: 10.3389/fphys.2022.961264. PMID: 36160871;
PMCID: PMC9500481. 

4)Donec, Venta, and Raimondas Kubilius.
“The effectiveness of Kinesio Taping® 
for mobility and functioning improvement
in knee osteoarthritis: a randomized,
double-blind, controlled trial.” 
Clinical rehabilitation vol. 34,7 (2020):
877-889. doi:10.1177/0269215520916859

5)Oğuz, Ramazan et al.
“Effects of Exercise Training Alone and in
Combination With Kinesio Taping on Pain,
Functionality, and Biomarkers Related to
the Cartilage Metabolism in Knee Osteoarthritis.
” Cartilage vol. 13,1_suppl (2021): 1791S-1800S.
doi:10.1177/19476035211007895

6)Wageck, Bruna et al.
“Kinesio Taping does not improve
the symptoms or function of older people
with knee osteoarthritis: a randomised trial.
” Journal of physiotherapy vol. 62,3 (2016):
153-8. doi:10.1016/j.jphys.2016.05.012

 

 

 

 


 

 

こんにちは!
歩行専門の自費リハビリ施設
ARUKONECTの代表 市川です。

本コラムではパーキンソン病の患者さんの
転倒する原因とその対策を解説します。

 

 

パーキンソン病の患者さんが転倒する原因

 

パーキンソン病の患者さんの約60%が
転倒すると言われており、最悪の場合、

骨折することもあります。
そのため、転倒を予防することは
社会全体の課題なのかなと思います。


転倒の原因を論文を参考に詳しくみて
いきましょう!



Muruetaらによれば・・・
・転倒歴 (過去に転倒したことがある)
・歩行能力の低下
・バランス能力の低下

以上の場合に転倒しやすいとしています。


Liuらによれば・・・
転倒の要因を5つの領域に分けています。

①身体機能
下肢(脚)の筋力低下、すくみ足、
バランス低下 など

②既往
転倒歴、基礎疾患の長期経過がある など

③環境
濡れた床、不整地、高い障害物、
暗い場所 など

④薬物療法
レボドパの服用によって、転倒に関する
合併症を減らせる

⑤認知
自信過剰、転倒恐怖感がある など


以上のように転倒は様々な要因によって
起きるものであり、一つの原因に限らない
としています。

 

 

転倒を予防するための方法

 

Canningらによれば・・・

<実施内容>
・バランストレーニング
・筋力トレーニング

<頻度・時間>
週3回・40~60分/回

運動症状が軽度※1の患者さんの転倒を
減らせたと
報告しています


※UPDRS-Ⅲのスコア 26点以下


Sparrowらによれば・・・

<実施内容>
・筋力トレーニング
・BESTest(バランス検査)に合わせた
 バランストレーニング

<頻度・時間・期間>
週2回・90分/回・12週間

転倒回数や転倒発生率を減らせたとしています



Chivers らによれば・・・

<実施内容>
・PDSAFE(転倒予防プログラム)

<回数・時間・期間>
12セッション・60分~90分・6ヶ月


転倒しそうになった回数を減らし、
バランス能力、
転倒恐怖感などの改善が
得られた
としています。
しかしながら、すくみ足や認知障害があると、
介入効果が少なくなったとも報告しています。


一方で効果が得られなかった報告もあります。



Morrisらによると・・・
主に筋力トレーニングを行った場合は、
転倒率には変化が得られなかったとしています。

 

 

まとめると・・・
Liuらの報告のように、原因は様々です。
単一の方法では効果が頭打ちになる可能性が
あり、患者さんの病状を包括的にとらえて
対応することが大切なのかなと思います。



つまり運動だけでなく、状況に応じて
手すりや照明の設置、段差の解消などの
環境面の整備、お薬の調整(医師との相談)
など生活を見据えた対応が必要なのかなと
思います。

 

 

本コラムではパーキンソン病の患者さんが
転倒する原因とその対策
を解説しました。


本コラムが少しでも皆さまの
お役に
立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

(執筆日:2023年12月2日)
(更新日:
2024年5月25日)

(執筆者:市川 貴章) 

 

 

参考文献
1)Murueta-Goyena A, Muiño O, Gómez-Esteban JC. 
Prognostic factors for falls in Parkinson's disease: 
a systematic review. Acta Neurol Belg. 2023 
Nov 28. doi: 10.1007/s13760-023-02428-2. 
Epub ahead of print. PMID: 38015306.

2)Liu, Wen-Yi et al. 
“Systematic review for the prevention and management 
of falls and fear of falling in patients with 
Parkinson's disease.” Brain and behavior 
vol. 12,8 (2022): e2690. doi:10.1002/brb3.2690

3)Canning, Colleen G et al. 
“Exercise for falls prevention in Parkinson disease: 
a randomized controlled trial.” Neurology 
vol. 84,3 (2015): 304-12. doi:10.1212/WNL.0000000000001155

4)Sparrow, David et al. 
“Highly Challenging Balance Program Reduces 
Fall Rate in Parkinson Disease.” Journal of
neurologic physical therapy : JNPT 
vol. 40,1 (2016): 24-30. doi:10.1097/NPT.0000000000000111

5)Chivers Seymour, Kim et al. 
”Multicentre, randomised controlled trial of PDSAFE, 
a physiotherapist-delivered fall prevention programme
for people with Parkinson's.” Journal of neurology, 
neurosurgery, and psychiatry vol. 90,7 (2019): 774-782. 
doi:10.1136/jnnp-2018-319448

6)Morris, Meg E et al. 
“A home program of strength training, movement strategy
training and education did not prevent falls in people with 
Parkinson's disease: a randomised trial.” Journal
of physiotherapy vol. 63,2 (2017): 94-100. 
doi:10.1016/j.jphys.2017.02.015

 

 

 

 

こんにちは!

アルコネクトの代表市川です!

 

 

国内で1,213 万人が転倒し、そのおよそ5%に骨折がみられると日本理学療法士協会の発行する冊子(理学療法ハンドブック18転倒予防)に書かれています。

 

 

転倒を起こしやすい原因は、転倒歴(転倒したことがある)・転倒恐怖感・認知機能低下・バランス低下・フレイルなどが考えられています。フレイルとは年齢を重ねることによって心身機能が低下した状態のことです。

 

 

人工関節置換術の受けた患者さんの13.1%は転倒し、その原因として転倒歴の影響が大きいとされています。

 

 

さらに身体機能低下している高齢者(虚弱高齢者)の場合は、転倒恐怖感が高く、転倒した経験や転倒回数が多いことで、さらに恐怖感が増すと言われています。この転倒恐怖感、厄介なのが転倒の要因だけでなく、生活の質(QOL)まで影響があることです。

 

 

転倒に対する不安を紐解いていくと、転倒恐怖感や自己効力感(転ばない自信)、バランス能力などと関係がある(弱い相関)とも言われています。

 

 

転倒を減らすための方法として、運動・薬物療法・環境整備・心理社会的な介入などの方法に分けられています。論文には、それらを組み合わせて効果を検証しているものもあります。

今回は、この中でも運動に焦点を当てたいと思います。

 

 

運動による転倒予防に関する報告は様々です。

・転倒予防の効果があるものの、その効果は介入直後に
 限定され、長期的にみると効果がみられない。

・身体機能向上が見られるものの、転倒予防には至らなかった。

・認知機能低下がある場合は、転倒リスク軽減や歩行能力向上が

 得られたが、転倒数や転倒率は変化が見られなかった。

 

 

集団アプローチでの介入では、エビデンスが非常に低いと判断され、効果がいまいちと思われます。

 

 

以上のように運動による転倒予防効果はまだまだ実証されて

おらず、効果があったとしても限定的です。

 

 

ただ否定的な意見だけではありません。

ニュージーランドで開発されたオタゴ運動プログラム(通称OEP)を実施することで、バランス能力や歩行速度・転倒への自己効力感(転ばない自信)が向上すると言われています。

 

 

また転倒恐怖感に対する介入としてTVゲームを用いたトレーニングや身体活動量を増やすことで(座っている時間を減らす)改善がみられるとしています。

 

 

一方で、パーキンソン病の患者さんに対してThe Johns Hopkins Fall Risk Assessment Too( JHFRAT)スケールのスコアを用いて、転倒に関して低リスク・中等度リスク・高リスクと分類し、その状況に合わせた対応(転倒予防策)が提案されています。

 

 

研究間で報告が異なるのは、転倒に関するリスクの層別化が図られていないことや、転倒に要因が多岐に渡ることが影響しているのではと思います。

 

転倒率が高いと判断された場合には、(転倒率が低いと判断された場合に比較して)運動の効果が得られることからも、層別化した上で、予防策も合せなくてはならないということかも知れません。

 

ある程度スクリーニングをかけた上で、個別で対応しなければならないのか、集団アプローチで対応可能のかを見極めることも大切なのかなと考えています。

 

 

本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

参考文献】 

1)Yang, Z-C et al. “Frailty Is a Risk Factor for Falls in the Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.” The journal of nutrition, health & aging vol. 27,6 (2023): 487-595. doi:10.1007/s12603-023-1935-8

 

2)Li, Ying et al. “Risk factors for falls among community-dwelling older adults: A systematic review and meta-analysis.” Frontiers in medicine vol. 9 1019094. 6 Jan. 2023, doi:10.3389/fmed.2022.1019094

 

3)Liu, Yang et al. “A systematic review and meta-analysis of fall incidence and risk factors in elderly patients after total joint arthroplasty.” Medicine vol. 99,50 (2020): e23664. doi:10.1097/MD.0000000000023664

 

4)Schoene, Daniel et al. “A systematic review on the influence of fear of falling on quality of life in older people: is there a role for falls?.” Clinical interventions in aging vol. 14 701-719. 24 Apr. 2019, doi:10.2147/CIA.S197857

 

5)Payette, Marie-Christine et al. “Fall-Related Psychological Concerns and Anxiety among Community-Dwelling Older Adults: Systematic Review and Meta-Analysis.” PloS one vol. 11,4 e0152848. 4 Apr. 2016, doi:10.1371/journal.pone.0152848

 

6)Kumar, Arun et al. “Exercise for reducing fear of falling in older people living in the community: Cochrane systematic review and meta-analysis.” Age and ageing vol. 45,3 (2016): 345-52. doi:10.1093/ageing/afw036

 

7)Hager, Anne-Gabrielle Mittaz et al. “Partially supervised exercise programmes for fall prevention improve physical performance of older people at risk of falling: a three-armed multi-centre randomised controlled trial.” BMC geriatrics vol. 24,1 311. 3 Apr. 2024, doi:10.1186/s12877-024-04927-0

 

8)Racey, M et al. “Fall prevention in community-dwelling adults with mild to moderate cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis.” BMC geriatrics vol. 21,1 689. 10 Dec. 2021, doi:10.1186/s12877-021-02641-9

 

9)Lewis, Sharon R et al. “Population-based interventions for preventing falls and fall-related injuries in older people.” The Cochrane database of systematic reviews vol. 1,1 CD013789. 5 Jan. 2024, doi:10.1002/14651858.CD013789.pub2

 

10)Yang, Yi et al. “The impact of Otago exercise programme on the prevention of falls in older adult: A systematic review.” Frontiers in public health vol. 10 953593. 20 Oct. 2022, doi:10.3389/fpubh.2022.953593

 

11)Zahedian-Nasab, Noorolla et al. “Effect of virtual reality exercises on balance and fall in elderly people with fall risk: a randomized controlled trial.” BMC geriatrics vol. 21,1 509. 25 Sep. 2021, doi:10.1186/s12877-021-02462-w

 

12)Liu, Wen-Yi et al. “Systematic review for the prevention and management of falls and fear of falling in patients with Parkinson's disease.” Brain and behavior vol. 12,8 (2022): e2690. doi:10.1002/brb3.2690

アルコネクト代表
市川です!

 

 

歩行時の歩行速度を向上するためには”推進力”が影響し、重要な役割を果すのが「Trailing Limb Angle(TLA)」です。

TLAは大転子から第5中足骨頭へのベクトルと垂直軸のなす角度と定義され、この角度が大きいほど、推進力が大きいと言われています。

 

 

さらに脳卒中の患者さんでは、マヒ側の推進力と連続歩行距離(長く歩く力)には関係があるとも言われており、歩行のリハビリテーションにおいて重要なテーマと言えるかと思います。

 

 

推進力を考えたときに、TLAとセットで大切なのが「足関節底屈(つま先を下げる)」です。TLAと足関節底屈との関係性をみると、歩行速度を上げていくときに、影響が大きいのがTLAとされています(TLA:足関節モーメント=3~4:1)。しかし足関節底屈は、歩行速度や歩幅の変動との関係があるとも言われており、TLAと比べて関与が小さいとは言え、重要な役割を果します。

 

 

足関節底屈筋力を筋力低下させたシミュレーションでは、60%ほど低下させると歩行に変化がみられたとしています。

つまり足関節底屈が十分に発揮できない状態では、歩き方まで

影響があるということです。

 

 

では、足関節底屈の筋力を鍛えれば推進力が上がるのか?

答えはノーです。

 

 

脳卒中患者さんのマヒ側の推進力は、歩行速度と関連があったものの、なんと足関節底屈筋力とは関係性が低かったと言われています。

 

 

ポイントになるのが、「セントラルドライブ」です。

セントラルドライブは、最大随意筋力(自ら出せる最大限の力)に電気で補助して、限界を引き出したときの力です。
 

 

この力(セントラルドライブ)とマヒ側の推進力には関係性があると言われており、セントラルドライブが大きい方が、推進力が高い傾向があったとしています。

 

 

筋トレに効果がないわけではありません。

筋トレを行うと、足関節底屈の筋力が向上・歩行速度も上がります。ただし、力を調節に注目したフォーストレーニングを行うことで、歩行速度だけでなく歩幅の変動が減少したとしています。

筋トレではみられなかった歩行の質的な部分に効果がみられたのです。ちなみにフォーストレーニングでは、筋力向上はみられませんでした。

 

 

以上を踏まえると、ベースアップとして筋トレを実施しつつ、歩き方の修正や筋肉を使い方を練習する必要があるのかも知れません。

 

 

さらに歩行時の推進力は、腓腹筋・ヒラメ筋・大腿四頭筋・そして大殿筋が重要な役割をします。さらに機能的な歩行を考えると中殿筋の働きも見逃せませんし、歩行練習も大切です。

 

 

 

歩行速度向上には推進力が関係しながらも、推進力が高い=歩行速度が速いということが成り立たない場合があります。

少しややこしいですよね。脳卒中患者さんでは、推進力は低くくても非マヒ側(マヒの影響がない側)で頑張りすぎてしまい、歩行速度が速いことがあります。特に、歩行速度が速くすればするほど非マヒ側の頑張りが増したとされています。

練習場面では、その点に注意が必要なのかなと思っています。

 


 

本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

参考文献】 

1)Roelker, Sarah A et al. “Paretic propulsion as a measure of walking performance and functional motor recovery post-stroke: A review.” Gait & posture vol. 68 (2019): 6-14. doi:10.1016/j.gaitpost.2018.10.027

2)Awad, Louis N et al. “Paretic Propulsion and Trailing Limb Angle Are Key Determinants of Long-Distance Walking Function After Stroke.” Neurorehabilitation and neural repair vol. 29,6 (2015): 499-508. doi:10.1177/1545968314554625

3)Hsiao, HaoYuan et al. “Mechanisms to increase propulsive force for individuals poststroke.” Journal of neuroengineering and rehabilitation vol. 12 40. 18 Apr. 2015, doi:10.1186/s12984-015-0030-8

4)Waterval, N F J et al. “Validation of forward simulations to predict the effects of bilateral plantarflexor weakness on gait.” Gait & posture vol. 87 (2021): 33-42. doi:10.1016/j.gaitpost.2021.04.020

5)Chung, Chul-Min et al. “Determination of the Predictors with the Greatest Influence on Walking in the Elderly.” Medicina (Kaunas, Lithuania) vol. 58,11 1640. 13 Nov. 2022, doi:10.3390/medicina58111640

6)Awad, Louis N et al. “Central Drive to the Paretic Ankle Plantarflexors Affects the Relationship Between Propulsion and Walking Speed After Stroke.” Journal of neurologic physical therapy : JNPT vol. 44,1 (2020): 42-48. doi:10.1097/NPT.0000000000000299

 

 

 

アルコネクト代表
市川です!

 

脳卒中患者さんの歩行を観察していると、
マヒ側のお尻が後ろへ引けることが

みられることがあります。


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お尻が引けることを骨盤後退
言います。


リハビリの担当者から指摘されるけど、
どうすれば良いのか困っている方は
多いのではないでしょうか??

 

 

本谷らは、骨盤後退は
①膝が曲がること
②内側ホイップ
(つま先を中心に踵が内側へクルっと動く)
③外旋歩行
(足を出す時につま先が外を向く)
この3つが関連すると報告しています。


私の経験としては、反対に膝が伸び切って
しまう(過伸展)場合も多いのかなと
感じています。

 

 

原因がはっきりしなければ、対処療法に留まり、
なかなか改善しないなんてこともあります。


どういうことかと言うと・・・
例えば骨盤後退がみられるとします。

その原因は・・・
①支える力が足りない?
②股関節が固い?
③足関節が固い?
④痛みがある?
⑤感覚障害がある?

などが考えられます。


さらに「どうして?」を追求します。
支える力が足りないのはなぜか?
股関節が固いのはなぜか?というように
掘り下げていくんです。


私の肌感としては、原因は1つであることは
少ない印象です。


下の動画は、骨盤の動きに対する

リハビリの一例です。



骨盤自体の動きを引き出しています。
ポイントは・・・
①胸郭が骨盤の動きに対して安定していること
②肩甲骨の位置が適切であること、
③下側の下肢に力が入りすぎていないこと
などです。


利用者さんによって、練習の設定を微妙に
変えています。
 

 

 

本コラムが少しでも皆さまの
お役に立てましたら幸いです。


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

 

 

参考文献】 

1)Motoya R et al.
Classification of abnormal gait patterns of poststroke
hemiplegic patients in principal component analysis.
Jpn J Compr Rehabil Sci 2021; 12: 70‐77