卒論構想を練る段階では、当然ながら先行研究や関連情報をある程度は手元に手繰り寄せていることだろうと思われます。
しかし実際には、卒論指導が始まるまでの資料収集は極めて狭い範囲のものと言わざるを得ません。なぜなら、自分が集めた情報は卒論テーマに直接関わりのある資料なり文献の範疇にとどまっていることが多いからです。
例えば、私は「新聞」に関する論文を書きました。そのためメディア研究に関する資料はかなり集めておりましたが、それだけで立論することは難しく、先生からハンナアーレントやハーバーマスといった大衆社会論に関する文献を読むよう勧められました。そこから一気に考察が進みました。このように研究領域の裾野を広げることで多角的な分析が可能となります。
また、今はほとんどの文献がネットを通して購入あるいは貸出が可能ですが、図書館や本屋さんに足を運ぶことをお勧めします。そしてそのコーナーを隅から隅まで眺めましょう。目的の文献以外に論文の参考となる文献の発見があります。筆が進まない時ほど、偶然や意外性から視界が突然に開けることがあるものです。
本格的なネット社会となって情報収集のスピードは格段に発達しました。ネットには無限の広がりがあるかのように感じますが、実は自分が捉えているのは極めて狭隘なものだったりします。
オールド・メディアと言われる紙の新聞の情報は広く浅くかもしれませんが、その一覧性からこれまで気づかなかったり無関心だった情報が思いのほか思考の広がりを助けてくれたりするので、その両方をうまく活用することが創造的論文を書く秘訣ではないでしょうか。
次回は文献の整理の仕方について考えます。
※(修正)まりまり→まとまり