No.244 プロボクサー/安達陸虎選手 | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

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あせって腐って吹っ切れた。
安達陸虎、蘇生。

 

 去る10月22日、京都KBSホールで行われたボクシングイベント『BMB Presents SHOW DOWN in 京都』。湖南市出身の元日本ランカー安達陸虎(りくと)選手が、タイのインチャンパ・チャンナロン選手を相手に4ラウンドTKOで勝利を果たした。安達選手にとっては1年4か月ぶりの再起戦、関西のリングに上がるのは約4年ぶりのことだった。「コンディションは今まででいちばんと思うくらい良かった。(勝って)うれしかったけど、勝って当たり前と思っていました」と、冷静に試合を振り返る。


 本紙では、スーパーウエルター級西日本新人王を獲得した直後の2017年にも取材している安達選手。あれから6年、さまざまな変化があった。まずは環境の変化。2021年、安達選手は大阪から横浜に拠点を移した。移籍したジムは、WBC・WBO世界スーパーバンタム級チャンピオンの井上尚弥選手・井上拓真選手兄弟らが在籍する大橋ボクシングジム。

 

 トップランカーたちと一緒に練習するというこれまでにない環境におかれ、安達選手は次第に自信を失っていった。「なんでできひんのやろ」周りと自分を比べるようになり、好きで始めたボクシングが楽しめなくなっていた。移籍後第1戦目は1ラウンドTKO負け。その時はまだ落ち込むことはなかった。「経験を積めばなんとかなる」。ところが移籍4戦目、相手は37歳、負ければ即引退が決まる選手。勝利は当然と誰もが思っていたが、2ラウンドTKO負けに屈する。「相手を軽視して先ばかり見ていた。(相手選手とは)覚悟の差だったと思います」。

目標は次の試合に勝つこと。
ボクシングをまた楽しめるようになりました。


 敗戦後はジムから足が遠のき、ストレスで体重が90㎏になった。ボクシングを辞めようとも思った。「本当に辞めるつもりなのにボクシングを考える自分もいた。ストレスでヤバかったけど、ふと吹っ切れたら昔の気持ちを忘れてたなと思うようになったんです」。デビュー当時の感覚を取り戻そうと、日本料理店でアルバイトも始めた。バイト前にはランニングをし、バイト後は夜遅くまでジムで汗をかく。栄養指導も受け身体づくりから見直した。「今、自分が練習に行ける時間帯には、プロになりたての選手たちが練習をしているんです。20戦やってきた自分は「練習は量より質」と考えていたけど、みんな邪念がなくて一生懸命で、練習も楽しんでる。自分にはすごく刺激になりました」。身体的にはしんどいが充実感があります、と語る安達選手。「周りと比べなくなったというのがいちばん大きな変化ですね。ボクシングをまた楽しめるようになりました」。

 

 試合がなかった1年4カ月を改めて振り返ってもらった。「自分を見つめ直す時期だったのかなと思います。とことん腐ったから気づけたこともあるんかなと」。これからの目標は「次の試合に勝つこと」。「昔は日本チャンピオン、世界チャンピオンって答えていたけど、先のことは考えず、次の試合が決まればそのことだけを考えるだけ。一試合一試合を大事に考え、出されたカードを勝っていく。そうすれば必ずチャンピオンに辿り着く。そう自分に言い聞かせている部分もありますけどね(笑)」。再び自分を取り戻した安達選手。またひとつ大きくなった姿が見れる日を楽しみに待ちたい。

【profile】
安達陸虎選手
本名:陸仁
1998年湖南市生まれ
2015年9月 プロテスト合格
        階級:スーパーウエルター級
2017年 西日本新人王、最優秀選手賞獲得
2021年 大橋ジムに移籍
戦績21戦17勝4敗(2023年11月現在)