No.236 南深清水FF倶楽部 | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

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この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

「柿の村」をオリーブ栽培で再生!?
ユニークな活動で注目される人口200人の集落

 

 

湖西の山間に広がる高島市今津町深清水(ふかしみず)地区。ここは、県内随一の柿の産地として100年近い歴史を持つ。中山間地域で全国的に問題になっている住民の高齢化や若者の流出は、人口200人ほどのこの集落でも止められず、特産品を育んできた柿畑の耕作放棄地が増え続けている。
そうした地域の未来を明るくするために、「健康」をテーマに持続的な地域づくり活動を行っているのが『南深清水FF倶楽部』。FFとは「for the future」の略だ。


柿の耕作放棄地解消を目指し、実践しているのが「オリーブ栽培」。南国の作物と思われるオリーブだが、同団体は北陸・石川県で栽培されている事例に着目、県下で初めてオリーブ栽培を始めた。オリーブは、美容や健康に効果的な作物であるだけでなく、栽培の面でも獣害に強く、比較的栽培に手がかからないので高齢者にも管理しやすい良さがあった。2018年春に、初めて10本を植樹してからその後も毎年植樹を続け、現在420本近いオリーブを栽培。

 

とはいえ、オリーブの栽培は、あくまでも未来への投資。「柿の産地」である深清水を盛り上げ、従来からの特産品の「柿」に新たな価値を探るのが、同倶楽部の目的の一つだ。
深清水地域とのつながりを持つ関係人口・交流人口を増やすために、滋賀県のさまざまなプロジェクトに参加。龍谷大学農学部や立命館大学の学生ボランティアの協力を得て農業体験・収穫体験イベントを行ったり、南深清水産のオリーブや柿を原材料とする新商品を開発するなど、着々と活動を拡大。柿の収穫シーズンに行われる「柿まつり」も学生たちが企画し、5回目を迎えた昨年のまつりには、村の人口を上回る500名の来場者で賑わった。

 

柿の産地でオリーブ栽培に取り組んでいることに、地元の反応はどうなのか、代表の桂田隆司さんに聞いた。「当初から賛同いただける住民の方は多かったのですが、柿畑を将来的にオリーブ畑に変えてしまうといった誤解もあり、倶楽部から離れる人もいらっしゃいました。私たちの活動の目的は、柿産地としての知名度をアップさせるために、意外性のあるオリーブを使って付加価値を拡大すること。そうやって活動を続けてきた今では、ご自分の畑にオリーブを植えてほしいと言ってこられる方もいらっしゃるほど活動全体にも協力的で、大変感謝しています」。

 

10人の有志で設立された同倶楽部は、現在22名の構成員となり、30代から70代まで幅広い年齢層の農業従事者や公務員、会社員、移住者らがメンバーとなって活動を運営している。活動コンセプトである「健康」につなげるために、オリーブはできる限り自然に栽培しているが、オリーブに付着するハマキ虫や穴あきゾウムシなどの駆除に、時間と人手が必要になっている現状もあり、随時ボランティアやオリーブオーナーとして協賛できる人を募集している。

 

「深清水から見下ろす琵琶湖周辺の風景はおすすめです。四季の中でも、秋は食も楽しめるし、柿のオレンジ一色の風景が自然の素晴らしさを感じさせてくれます。それと、琵琶湖から昇る朝日も素晴らしいです。春分の日と秋分の日に見られるレイライン(富士山頂と出雲大社を結ぶといわれる御来光の道)は神秘的です」と、桂田さん。柿やオリーブを地域の人と一緒に育む。風光明媚な景色に癒される。深清水地域は、訪れる人を健やかにする自然に溢れている。

 

 

【profile】

南深清水FF倶楽部
2016年12月設立
2018年 柿の不耕作地を整備し、オリーブを10本植栽
2018年11月 第1回柿まつり開催
2019年 オリーブ18本植栽
2020年 オリーブ109本植栽
同年 龍谷大学農学部食料農業システム学科山口ゼミと、「しがの支え合いプロジェクト」の協定締結
   滋賀県やまの健康推進プロジェクト モデル地域の採択
2021年 新たな不耕作地にオリーブ苗184本植栽。オリーブ茶の商品化、農業体験受け入れスタート
2022年 オリーブ苗50本植え替え、地元野菜や果実をイベントやマルシェに出品スタート
同年 第5回柿まつりを開催、500名の来場者でにぎわう