俳優 谷口 高史 FILE No.57 ART STYLE | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

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「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

芝居は好き。

でも、なかなか自信が持てなかったです。

映画『バトルロワイヤル』、『パッチギ』をはじめ、テレビ『水戸黄門』『子連れ狼』などの時代劇でも活躍中の俳優、谷口高史さん(48歳)。谷口さんが役者への道を歩み出したのは二十歳の頃、まだ大学に通っている時だった。
「目的もなく大学に入ったもんですから、そのうち俺は何がしたいんやろ、何でこの大学にいるんやろってなって…」。
空虚な学生生活に嫌気がさした谷口さん、両親の反対を押し切って大学を中退。高校時代に抱いた役者への夢を追うべく京都の東映俳優養成所に飛び込んだ。

「両親には本当に申し訳なかったのですが、自分がほんまにやりたいことってなんやろ?ってなった時に、やっぱり役者やと思って。運がよかったのは、当時は太秦の映画村で観光客用の模擬撮影をやってたんです。そこで演技させてもらうことで収入も得られたし、何よりカメラマンや照明、音声、小道具などの職人さんに囲まれて演技することで、スタッフの大事さや大変さを知ることができました」。

こうして役者としての一歩を踏み出した谷口さん。下積みを重ねながら、やがて少しずつ役を貰えるようになった。でも、どんな役を貰っても、それを素直に喜ぶことができなかったという。


「自分でも何で素直にうれしいと思えないのか不思議でした。芝居をするのは好きなんですが、いざ役がまわってくると落ち込んでしまう…。喜びよりもプレッシャーの方が大きくて、どうしても自分はダメだと思ってしまうんです」。さらに、ご本人いわく「目が小さい」、「特長がない平凡な顔」のため、自分は永遠に主役を張る役者ではないと思うようになったとか。

「役者として自信も持てない、顔もダメ。ずっとそんな感じでコンプレックスを抱きながら役者をやってました。それでも何年もやっていると、そのうち自分の中にある隠れた別の面も出てきたんです。俺にもこんなとこがあったのか、みたいな感じで。それを引き出してくれた監督さんの存在も大きかったと思います」。
役者を目指し、その道を歩んでから約30年。映画、テレビ、そして舞台で活躍するようになった現在、谷口さんはこれまでの役者人生をこう振り返る。
「ずっと「自分はダメだ」という気持ちがあったので、逆に人のことがスゴく思えて、素直にその人から学んだり、吸収することができたのかなと思います。また特長がない顔だからこそ、幅広く色んな役をやらせて貰えたんじゃないかと思うようになりました。今はもう、ないものねだりをするんじゃなくて、自分のままでいい、できることをやっていこうと。そう思えてはじめて、貰った役を楽しめるようになりました」。

そう語ってくださった谷口さん。最後に当面の目標をたずねると…
「大ブレイクしたいという気持ちがない訳じゃないです。でも大きな家に住むことがイコール幸せではないと思います。これからも役者を続けていくこと、そして家族を養っていくこと。それが目標ですね」。

春、新生活の始まった今、谷口さんの「自分のままで輝いていく」という生き方に大事なことを教えられた気がした。


【プロフィール】
1960年 大津市生まれ
1976年 滋賀県立石山高等学校へ進学
1979年 追手門学院大学入学
1981年   京都の東映俳優養成所へ入所
1983年 東映京都芸能所属の俳優となる
1998年 小雁倶楽部へ移籍

<出演作品>
映画「バトルロワイヤル」「パッチギ」「おもちゃ」「大帝の剣」ほか

<テレビ>ほか
「水戸黄門」「剣客商売」「壬生義士伝」「京都迷宮案内4・5」

<舞台>
「新・裸の大将放浪記」「蒲田行進曲」ほか
 「新・裸の大将放浪記」