美術教師 阿部 節子 FILE No.58 ART STYLE | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

夢を実現するための過程こそが、

大切であり、いちばんの宝です。



若い女性たちから圧倒的な支持を集める「神戸コレクション」をはじめ、ファッションショーの最高峰である「パリコレクション」にも出演。世界を舞台にモデルとして活躍し、現在は地元滋賀で中学校教師として美術を教えている阿部節子さん(27)。

「美術の教師を目指して大学に入学したんですけど、毎日授業とバイトだけの生活で。このまま4年間を過ごして教師になっていいのかと思っていた時、たまたまファッション雑誌でモデル募集の記事を見つけて。身長170cm以上が条件だったので、自分でもいけるかなと(笑)」。

大阪のモデル事務所に所属し、歩き方からポーズの取り方、目線の運び方などモデルに求められる技量を高めることで、少しずつ仕事も増えていったとか。
「大学を卒業する頃には、大阪コレクションや神戸コレクションなどのショーに出られるようになりました。私は自分がどこまで出来るか試したかったので、モデルを始めた時から、やるからにはとことんやろう。パリコレに立つまでやろう!と決めていました」。

しかし、パリコレのモデルとして活躍するには、まずフランスのモデル事務所と契約を結ばなくてはならない。世界中からトップモデルが集結するフランスで日本人が契約するのはそれ自体大変なこと。
「フランスに来たものの、地図の見方もよく分からず、なんとか辿り着いたモデル事務所の前で、中に入れず立ち往生した事もありました。やっと関係者に会ってもらってもアジア人は要らないとまったく相手されないことの連続で、悔しさや惨じめさ、悲しい気持でいっぱいの毎日でした」。

しかし現地で偶然に知り合ったファッション業界の人や、現地で働く日本人に助けられてモデル事務所と契約。ついには念願のパリコレ出演を果たした。
「パリに行き、一人では何もできないという弱さと同時に、自分の意思ひとつで力がわき、切り開いていけるという強さを始めて感じました。そしてパリコレに出るという夢が実現して分かったことがあります。それは夢はかなった瞬間から過去になり、一つの通過点にしか過ぎないものになるということです。夢をかなえようとやり続けてきた過程で、ぶつかった壁、出会った人、出来事、感じたこと、それこそが今の私の宝です」。

モデルという仕事を自分が納得できるまでやり遂げフランスから帰国。ようやく本望だった教師の職に。
「いま美術教師として生徒に言うのは、出来上がった作品も大切だけれど、自分が何を考えて、どのように表現しようと思ったのか、作り上げる過程が一番大切なんだと。ものづくりは生き方と同じで、何もない0の状態から1にすることに意味があるのではないでしょうか。0から1にするには強い意思と想像力、実現するための行動力が要ります。でも意思のあるところに道はひらける。私は授業を通してそれを伝えたいと思っています」。


そう語ってくれた阿部さんは、カメラマンたちの視線を集めたトップモデルではなく、生徒たちから熱い視線を集めるひとりの頼もしい先生だった。

【プロフィール】
1981年 能登川 生まれ
1996年   能登川中学卒業
1999年 彦根東高等学校卒業
2003年 京都教育大学美術科卒業
2000年 (大学2回)大阪モデル事務所契約 大阪コレクション、神戸コレクション、などショーを中心に活躍
2003年8月  渡仏 モデル事務所契約 パリコレクション、雑誌、展示会、CMなど様々な仕事で活躍
2005年12月 モデルを辞めて帰国
2006年4月  能登川高等学校非常勤講師
2007年4月  甲西中学校常勤講師
2008年4月  滋賀県公立中学校教諭 新任