ガラス作家 土橋 隆弘さん FILE No.119 ART STYLE SHIGA | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

ガラスの強さと儚はかなさ。
それは、この世のすべてに通じると思う。

 
 静かで美しく、今にも動き出しそうなほど生命力を感じ、透明感があるのにどこか不気味…。ガラス作家、土橋隆弘さんの作品を見ていると、ガラスがこんなにもさまざまな表情を持っていることに驚かされる。
 国内外のコンペで、数多くの入賞歴を持つ土橋さん。普段づかいできる器のほか、オブジェ、オーダーメイドの照明器具、有名企業とのコラボによるガラスアートの制作など、その活動は多岐にわたる。
 もともとデザイナー志望だった土橋さんは、専門学校では工業デザインを専攻。恩師の勧めで在学中に新設されたガラス専攻へ編入し、卒業後は恩師の知人で、小豆島でガラス工房を開く現代美術家の木下順氏の制作助手に。勧められるがままに入ったガラス美術の世界が、だんだんと好きになっていった。
「ガラスは強くて、儚い。ガラスという素材ならではの叙情性は、この世に生きるすべてのものとシンクロすると思います」。
 ガラスの世界だけでなく、若い頃からたくさんの芸術家と出会ってきたと語る土橋さん。クセのある人たちだったが、バイタリティがあり、なによりその人達が創る作品の力に何度も鳥肌が立ったという。作品に投影されていたのは、最大限に出し切られたその人自身であり、その人が持つ人間力だった。
「なぜこれを創るのか、作品を創るたびに掘り下げて掘り下げて考えています。ガラスの刹那の輝きや力強さ、美しさを通して表現していきたいのは、自分のうちにあるさまざまな感情。自分の作品には純粋でありたいんです」。そう語る土橋さんの作品との向き合い方は、一つひとつの出会いから導き出されたものだ。
 アートやデザインに関心のある人が多くなったとはいえ、まだまだ日本ではその評価や価値が得られにくい。敷居が高いというイメージが拭えない美術の世界を、自身のガラス作品や活動を通してもっと身近にしていきたいと、土橋さんは語る。
「美術をやっている人の中には、生活のこともあって途中辞めちゃう人が多い。その中で僕はもう28年、ガラスをやってる。僕は本当に人に恵まれているし、めちゃくちゃ運がいいと思います。死ぬ直前まで、現役でいられたらうれしいですね」。
 取材に訪れたのは、守山市に今年2月に開業したばかりの土橋さんのガラス工房。制作風景を撮影している間、土橋さんはガラスを溶かしたり、柔らかくしたりを繰り返しながら、あっという間に2つのグラスを完成させた。流れるような手際のよさ、みるみる形を変えていくガラスの様子に、思わず見入ってしまったほど。1000度以上もの高温に保たれた炉の前で、土橋さんは汗だらけだ。
「ダイエットにもいいですよ(笑)」と笑うその顔は、アーティストのイメージとはほど遠い、屈託のなさだった。

【profile】
1966 大阪府生まれ 守山市在住
1987 大阪デザイナー専門学校工芸工業科 卒業
同年   小豆島グラススタジオに制作助手として入社、現代美術家 木下順氏を師事
1992 株式会社SUWAガラスの里(長野) 入社
1997 三田市立硝子工芸館 入社
1998〜個展「土橋隆弘ガラス作品展」開催 
2000 株式会社黒壁 入社
2001 New Glass Review22(USA) 入選
2003 第2回 KOGANEZAKI・器のかたち・現代ガラス展 黄金崎グランプリ 受賞
2008 第48回 日本現代クラフト展 入選
2013 土橋隆弘ガラス工房 開業


『土橋隆弘作品展』7月9日(火)~7月21日(日)
Gallery PARC (ギャラリー パルク)
京都府京都市中京区弁慶石町48三条ありもとビル
ル・グランマーブル カフェクラッセ 2F Tel.075-231-0706
http://www.galleryparc.com

【お問い合わせ先】土橋隆弘硝子工房
守山市千代町175-1 TEL.077-599-3747 http://glass-takahirotsuchihashi.com