いつまでも怒りの眼差しで睨みつけていた
ソラは小学5年の終わりにビーディーズに入団してきた
今はシニアで全国クラスの選手となったリュウに誘われ、軽い気持ちで入ってきたのだ
元々ただのオタクであり、太ましい体型
運動神経もめちゃ悪く
打てない
走れない
守れない
どうしようもない
チーム事情でなんとかスタメンではあったが、まぁ酷いものだった
入団して数カ月後
ライバルであるサタンズと合同練習があった
腰を落としながらグラウンドを何周もするキツい練習、ソラは当たり前のように最下位となり、ヒーヒー言っていた
ソラが私の前を通る頃、サタンズコーチはニヤけながら言った
「彼は素人ですか笑」
明らかに侮蔑を伴う表情だった
練習後、ソラが真剣な顔をして私のところに来た
「コーチ、あいつ俺の事バカにしてましたよね?」
悔しさから涙を滲ませながらやってきたソラに私は言った
「どうだろうな。でもお前がそう思うなら見返してやればいいんじゃないのか?」
聞いたソラは口を真一文字に結び、黙って空を見上げた。涙がこぼれないようにしたのか決意の表れだったのかは分からない
その日からソラは変わった
毎日何百回も素振りをするようになり、走り込みを始めた
身体はみるみる絞られていき、元々恵まれた身体と相まって僅か半年で本塁打を打てるようにまで成長した
「俺、柳田選手みたいになりたいんです」
そう言っていつもフルスイングを繰り返していた
過程で壁にぶつかり、何度も泣いていた
「俺だけ結果が出ない」
「周りはやれてるのに」
ひとしきり泣くとまたバットを握り直していた
優しい性格のソラはバッターボックスではいつもオドオドして見えた
「お前、そんなんじゃ舐められるぞ。強い自分を演出しろよ」
そう言っても笑ってやっぱりオドオドしていた
性格は変わらないもんや
卒団式でソラは、あるコーチから「結果は出なかったけどがんばれよ」と言われていた
その時だけは「あいつは何も分かってない!」と怒り狂っていた笑
中学は地元の強豪軟式チームに入った
非常に多人数が所属していたが、打撃を買われ、1年から代打起用されるようになり、2年からは4番を任されるまでに成長していった。長く野球続けてるメンバーをごぼう抜き。最初期を思うととんでもない話である
このチームにはジュンというヤバい天才が入部していた。1年から当たり前にスタメンで、3年の誰よりも上手い
正直中学軟式野球部レベルの選手ではなく、事実彼は横浜全土で2人しかいない横浜選抜1年生のうちの1人となった(ちなみにとんでもない女好きでもある)
打撃で突出した存在となったソラは、必然的にジュンとの距離を縮めた
良きライバルとなった2人だったが、ソラは選抜のセレクションには届かなかった。打撃は申し分なかったが、守備が基準に達しなかったからだ
本人は非常に悔しがっていたが「仕方ない」と気持ちを切り替えていた
そんなソラに最後の最後でリベンジの機会が訪れる
横浜ベスト8を掛けた試合、相手の投手は奇しくも1年からセレクションに選ばれたもう1名の天才、ショウだった。大会屈指の名投手である
0VS1で迎えた4回、無死から死球のランナーを1塁に置いてソラに打順が回る
そこまでチームのクリーンヒットは0本
明らかに格上のショウ相手に打線は沈黙し、ソラも1打席目は外角高めビタビタのストレートになす術なく三振に終わっていた
ソラは明らかに集中していた
相手がショウでは下位打線はまず打てない
ここで打ち取られたら勝ちの目確実に詰まれる
1-2からの4球目
インローのストレート
ボール半個分真ん中に寄った球道をソラは見逃さなかった
振り抜いた打球は鮮やかな快音を残しながら逆方向にグングン伸びていく
そのままチャンスを大きく広げるレフトオーバーのツーベースとなり、その後のスクイズでの得点に見事に繋げた
この打席でソラは見事リベンジを果たす事となった
迎えた6回、前打席を受け、外野陣が下がる中、ショウの投じた球がソラを直撃すると、ソラは強い目でショウを睨みつけた
あれだけオドオドしていたソラがここまで闘争心を剥き出しにしたのは初めてだった
最終回、2死1/3塁からジュンとショウの一騎打ちとなった
8球目を捉え、レフト線ギリギリに飛んだ打球は白塵をまきあげたように見えたが結果はファール。最後はショウの渾身のアウトハイの直球を空振り三振に終わった
見応えのある試合だった
本当に紙一重だった
こうしてソラ達の中学野球生活は終わった
ミーティングで泣きじゃくる選手達をソラは励ましていた。あんなに弱弱しかったソラがこうなるとは。。。
そう思った私だったが、いつの間にかソラの姿が見えない
どうしたのか、と校舎の裏を覗くとソラの姿があった
そこにはあの時と同じ
後ろを向き、空を見上げ肩を震わせていたソラの姿があった
人前で泣かなかったのは彼のプライドと成長なのだ、と思うといつの間にか私も涙が溢れていた
悔しいならまたやり返せばいい
涙がこぼれないように上を向いてる君は決して負けてない
何も恥じることはない
君達の戦いはまだまだこれからなのだ
胸を張っていくんだ
この日3三振、負けても清々しく笑ったジュン
「あの4番ヤバかった」と語りながら1失点完投のショウ
そして爆打かましたソラ
三者三様のドラマがあった
彼らは勝ち負け以上の何かを間違いなく手にしていた
3人の未来が楽しみで仕方ない
実に青春である

戦いは次のステージへ



















































