アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】 -9ページ目

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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宇都宮美術館は、まもなく開館30周年を迎えます。

さらに、宇都宮市は今年2026年が市制130周年の節目の年。

そのW記念として、この春、宇都宮美術館では、

“ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち”が開催されています。

 

ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち展
 
 
本展の目玉は何と言っても、ゴッホの 《跳ね橋》です。
そう聞いて、美術ファンの中には、
“あれ?ゴッホの 《跳ね橋》が来日するのってまだ先じゃなかった?”
と思われた方もいらっしゃるかもしれません、
それはきっと、クレラー=ミュラー美術館の 《アルルの跳ね橋》が来日する、
2027年から予定されている大ゴッホ展のⅡ期とごっちゃになっているのでしょう。
本展で来日しているのは、ドイツ有数の美術館、
ヴァルラフ=リヒャルツ美術館が所蔵する 《跳ね橋》です。
 
ゴッホ《跳ね橋》と印象派絵画
 
 
クレラー=ミュラー美術館のものは暖色系な印象ですが、
ヴァルラフ=リヒャルツ美術館蔵の 《跳ね橋》は、寒色系な印象でした。
この頃のゴッホは、アルルにやってきたばかり。
ゴーガンと一悶着あるのはまだまだ先の話です。
それゆえ、アルルでの新生活に対する希望に満ちた、
穏やかで晴れ晴れした気持ちが画面から伝わってくるようでした。
 
ちなみに。
妙に印象に残ったのが、雲の描き方。

 

ゴッホ《跳ね橋》の空と雲、遠景

 

 

よく言えば、ホイップクリームのような。

悪く言えば、鳥のフンのような。

画面全体の中で雲だけが異質で、違和感を放っていました。

ゴッホ本人が描いたのか。あるいは、別の人が描き足したのでしょうか。

 

なお、本展には、ゴッホがアルルに移り住む前、

オランダ・ニューネン時代の作品《ニューネンの農家》も出展されています。

 

ゴッホ《ニューネンの農家》展示風景

 

 

《ニューネンの農家》《跳ね橋》

制作年は3年しか変わらないものの、

見比べることで、劇的な作風の変化が実感できます。

 

 

さて、本展のタイトルに冠しているだけに、

《跳ね橋》に全振りした一点豪華主義的な展覧会なのかと思いきや。

モネは4点あるわ。

 

モネ《アスパラガス》の絵画

 

 

ルノワールも4点あるわ。

 

ルノワール作、刺繍する少女の肖像画

 

 

セザンヌもあるわ、ナビ派もあるわ。

 

ゴッホ《跳ね橋》と印象派絵画展
ゴッホ《ニューネンの農家》と《跳ね橋》展示

 

 

ヴァルラフ=リヒャルツ美術館のコレクションから、

惜しげもなくフランス近代美術の名品の数々を大放出。

フランス近代絵画の巨匠を網羅したオールスター感謝祭的な豪華な展覧会でした。

素直に考えたら“ヴァルラフ=リヒャルツ美術館コレクション展”というタイトルでいいような?

でも、あえて、ゴッホの《跳ね橋》をフィーチャーしたことで、

展覧会としてのスペシャル感が増していたような気もします。

実際、自分はGWの真っ只中に訪れたのですが、

展覧会のチケットを求めて大行列が発生していました。

宇都宮駅からバスで約30分かかるという、アクセスにやや難のある美術館なのに!

結果的に、“ヴァルラフ=リヒャルツ美術館コレクション展”にしなくて大正解だったと思います。

 

 

ちなみに。

《跳ね橋》以外で絶対に見逃せないのが、

マネが晩年に描いたという《アスパラガス》です。

 

マネ 《アスパラガス》 印象派絵画

 

 

実はこの絵に関して、こんなエピソードが知られています。

マネはこの絵に対して、800フランの値を付けました。

しかし、この絵を気に入ったコレクターは、200フラン多い1000フランを送金したそうです。

すると、マネはお礼の気持ちを込めて、

1本だけのアスパラガスの絵を新たに描き、

「あのアスパラガスの束から1本抜けていました」と添えて送ったのでした。

なお、そちらのアスパラガスの絵は、オルセー美術館に所蔵されています。

 

他にも、そのマネと師弟関係にあったベルト・モリゾが愛娘を描いた作品や、

 

モリゾ愛娘を描いた作品

 

 

ヌード画を描いていた時代のミレーの作品、

 

ミレー《ヌード画を描いていた時代のミレーの作品》

 

 

構図が独特なゴーガンの作品など、

 

ミレー ヌード画 構図独特

 

 

展覧会には注目したい作品が多々ありました。

写実主義から野獣派まで。

19~20世紀初頭のフランス美術を満遍なく揃えた本展ですが、

とりわけ充実していると感じたのが、新印象派の画家たちの作品です。

新印象派の創始者であるスーラや、

 

ゴッホ《ニューネンの農家》宇都宮美術館展
 
 
その正統なフォロワーであるシニャックの作品はもちろん、

 

新印象派の海岸風景画と人々

 

 

アンリ=エドモン・クロスやマクシミリアン・リュス、

テオ・ファン・レイセルベルヘといったマニアックな(?)、

新印象派の画家たちの作品も取り揃えられていました。

それらの中には、アルフレッド・ウィリアム・フィンチの《北海沿岸近くの村》という作品も。

 

フィンチ《北海沿岸近くの村》新印象派
 
 
この作品をもともと所有していたのは、アンナ・ボックなる人物。
テオ・ファン・レイセルベルヘとも交流のあったベルギーの女性画家です。
実は彼女は、画家として有名というよりも、
ゴッホが生前中に唯一売れたとされる 《赤い葡萄畑》の購入者として知られています。
この絵と 《赤い葡萄畑》が並んで飾られていたかもしれませんね。
 
 
さてさて、本展は宇都宮美術館を皮切りに、
あべのハルカス美術館、名古屋市美術館を巡回します。
東京会場はありませんので、関東近郊の方は宇都宮美術館へ是非!
ちなみに、近年大型展覧会の観賞料は2000円越えが当たり前となってきました。
本展でも、あべのハルカス美術館では2100円、
名古屋市美術館では1900円となっているようです。
しかし、宇都宮美術館は入館料がなんと1200円!
宇都宮は時空が歪んでいるのかもしれません(いい意味で)。
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