生誕140年記念 竹久夢二の軌跡 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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今年2024年は、大正ロマンを代表する画家・竹久夢二の生誕140年の節目の年。

それを記念して、現在、東京都庭園美術館で大規模な回顧展が絶賛開催中ですが。

東京を代表する竹久夢二専門の美術館、竹久夢二美術館でも、

生誕140年を記念した展覧会、“生誕140年記念 竹久夢二の軌跡”が開催されています。

 

 

 

出展作品は、実に約250点!

俗にいう「夢二式美人」が描かれた日本画や、

 

 

 

グラフィックデザイナーとしての一面を持つ、

夢二のブックデザインのセンスが光る装丁の数々、

 

 

 

さらには、東京都庭園美術館の夢二展でも、

特にフィーチャーされている夢二の油彩画なども紹介されていました。

 

 

 

大正のマルチクリエイターともいうべき、

夢二の多彩な仕事ぶりが通観できる展覧会です。

星星

 

 

本展でとりわけ注目したいのは、

元号が大正になる前、まだ明治時代だった頃に、

夢二が描いた初期の貴重な作品の数々。

いうなれば、インディーズ時代(?)の夢二による作品群です。

 

 

 

もしかしたら、この当時から夢二に目を付けていた“推し”の中には、

「夢二式美人」のブームにより、スターダムにのし上がっていく彼に対して、

嬉しいような寂しいような、複雑な感情を抱いた方もいたかもしれませんね。

 

と、それはさておきまして。

本展でもう一つ見逃せないのが、新収蔵品で、

本展のメインビジュアルともなっている《黒猫を抱く女》です。

 

 

 

夢二が描いた黒猫を抱く女性といえば、

代表作の一つとされる《黒船屋》が有名ですが、

実はそれ以外にも、同様の図の絵画を多く描いているそう。

《黒猫を抱く女》も、そのうちの1点です。

ちなみに、これらの絵の元ネタとなったと考えられているのが、

フランスの画家キース・ヴァン・ドンゲンによる《猫を連れた女性》

夢二の自作のスクラップブックに、この絵も保存されていたようです。

 

(注:本展には出展されていません!)

 

 

また、《黒猫を抱く女》の猫や女性の着物にご注目。

 

 

 

輪郭線がギザギザとしているのが、見て取れます。

実はこの独特な描き方は、イギリスの挿絵画家、

オーブリー・ビアズリーにインスパイアされたものなのだそう。

夢二は自身の作品に、当時の海外のトレンドが取り入れていたのですね。

 

さてさて、展覧会では他にも、封筒や千代紙など、

当時人気を博した夢二アイテムの数々も紹介されていました。

 

 

 

中でも個人的に一番印象に残っているのが、こちらの便箋。

 

 

 

その名も、新感覚ビンセンです。

便箋なんて、どれも大体一緒と思い込んでいましたが、

かつて日本では、新感覚の便箋が販売されていたのですね!

「近代の感覚と永遠の夢とを封じて・・・」というコピーも気になって仕方ありません!

 

 

最後にご紹介したいのは、夢二の20コ下の恋人、お葉の遺品で、

文字が書けなかったお葉のために、夢二自らが作った手習帖です。

昨年の展覧会でも紹介されており、

その際は、「う」のページが開かれていました。

 

 

 

本展で紹介されているのは、「い」のページ。

 

 

 

「い」で始まる言葉がいっぱいある中で、

「言譯(いいわけ)」や「命がけ」という言葉を、

チョイスしているところに、夢二らしさが感じられます(笑)。

「犬」とか「行く」とか、最初に覚えさせるべき言葉は他にあるだろ。

 

 

 

 

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