《夢》 ニューヨーク近代美術館(MoMA)蔵。
素朴派を代表するアンリ・ルソー晩年の傑作。
ルソーは生涯でジャングルを訪れたことが一度もなく、
長年通い続けたパリ植物園で観た光景が元になっている。
もし、昭和の空気を感じる“ゆる~いCM”でおなじみの、
あの通販会社の社長と歌手が名画を紹介するとしたら、きっとこんな感じになるのでしょう。
「絵画を観るのって、難しい。
と、お悩みのお客様に、私たちのグループと同じ名前のスっゴい名画のご紹介で~す」
「社長、頑張って~」
「フランスの画家アンリ・ルソーの《夢》。
画面全体が緑色に覆われたこの1枚の絵を観るだけで、
緑色によって副交感神経が刺激され、しっかりとリラックスできるとともに、
視力回復にも効果があるんで~す」
「スゴい。スゴ~い!」
「画面の中心に描かれているレデーは、
若い頃にルソーが好きだったヤドヴィガという名の女性なんです」
「昔の女性を想って描いたなんて、エモい。エモ~い!
でも、社長、よく見ると、この絵ってヘタクソじゃないですか?
もうちょっと上手に描けないんですか?」
「これが、せいいっぱいで~す!
ルソーの本業は税関吏で、絵画はすべて独学で学んだんです。
ただ、プロには出せない味のある画風は、
ゴーギャンやロートレックら前衛芸術家の心を掴んだんです。
ルソーを称賛した画家の中には、あのピカソもいたんですよ。
若き日のピカソはルソーのためにパーテーも開いているんです。スゴいでしょう?」
「社長この絵、欲し~い!」
「1点限りの絵画なので、買うことはできませ~ん!
ただし、MoMAに行けばいつでも観ることができま~す」
「MoMAには他にもたくさんの名画がありますよね。
それだと、入館料50ドルくらいするんですか?」
「いやー、そんなに高くはありませ~ん。30ドルで~す」
「安~い。でも社長、もうちょっと安くなりませんか?」
「美術館のHPで前売り券を買うと、28ドルになりま~す」