栃木県那須塩原市にある創業1551年の老舗旅館、板室温泉大黒屋。
パッと見は、ただの(?)老舗旅館ですが、
実は知る人ぞ知る、日本屈指のアートな旅館です。
アートな旅館だけあって、建物の内外にアート作品が設置されています。
もちろん宿泊部屋の中にも、アート作品が飾ってあります。
(僕が泊まった部屋には、村井正誠の版画作品が飾ってありました)
さらに、月替わりで展示が入れ替わる、
ギャラリースペースも館内に設けられています。
(一般的なギャラリー同様、作品を購入することができます)
さてさて、歴史を感じる建物と現代アートとが、
実に違和感なくマッチしていますが、創業当時から、
大黒屋がアートに力を入れていた・・・というわけではないようです。
現在のようなスタイルになったのは、
16代目の室井俊二さんが代表になってから、とのこと。
取り組み始めた当初は、お客さんだけでなく、
当時の従業員や関係者たちにも理解されなかったそう。
しかし、自身の信念を貫き、アートを取り入れ続けた結果、
そのユニークなスタイルが、徐々に口コミで広がっていたようで、
いまや日本を代表するアートな旅館としての地位を確立しています。
なお、リピート率は驚異の約70%だそうです!
かねてより、一度はこちらに泊まってみたく。
なかなかその機会に恵まれませんでしたが、
先日、ようやくその念願を叶えることができました。
本日は、その際に気が付いたあれこれを紹介したいと思います。
●菅木志雄さんの作品がたくさんあった
冒頭でもお伝えした通り、
大黒屋のあちこちにアート作品が設置されていますが。
中でももっとも多く作品が設置されていたのは、
「もの派」の中心メンバーの一人、菅木志雄さんでした。
さらに、庭を作庭したのも菅さんだそうで。
それぞれ、「空(くう)」をテーマにした〈集空庭〉に、
「識(しき)」をテーマにした〈天の点景〉、
「風」をテーマにした〈風の耕路〉と名付けられていました。
なお、〈風の耕路〉は、鳥居のようなものだけでなく、
点在している木材や石もすべて、菅さんの作品の一部です。
普通の人は、そうは思わないでしょうから。
ちゃんとわかりやすいように・・・・・
作品と明記されていました。
・・・・・ところで、何故、菅さんの作品が多いのでしょう??
今から数巡年前、16代目の室井さんが、
あるギャラリーで菅さんの個展を観た際に、
その作風に惹かれ、作品を一つ購入したのだそう。
そして、また別の機会にも、菅さんの作品を購入。
気づけば、菅作品のコレクションが増えていたそうです。
しかし、当時、菅さんは一部のアートファンには知られていたものの、
国際的にはそこまで評価が高くなく、また、見た目がシンプルなこともあって、
一般の人にはほとんど知られていない状況だったとか。
そこで、室井さんは推しの菅さんの評価を高めようと決意!
作品を制作してもらう代わりに、
12年分の生活費や制作費の面倒を見ることにしたのです。
その献身的なサポートもあり、12年を待たず、
10年目には菅さんは国際的な芸術家に仲間入り。
国内外の数々の一流美術館に、彼の作品が収蔵されています。
大黒屋がなかったら、今の菅木志雄さんの成功はなかったかも?!
●菅木志雄倉庫美術館なるものがあった
大黒屋の敷地内には、
菅木志雄作品を常時展示している美術館があります。
その名も、菅木志雄倉庫美術館。
開館するのは、10時から1時間だけ。
スタッフさんが庭の作品とともに、
館内の作品を紹介してくれるガイドツアー形式の美術館です。
なお、宿泊客以外でも、予約をすれば美術館の鑑賞は可能となっています。
倉庫の内部にある菅木志雄作品は、約300点(!)。
2段掛け、3段掛けは当たり前。
壁一面に菅木志雄作品が飾られた様子は、圧巻も圧巻でした。
宿泊費とは別に、入館料が500円かかるからでしょうか。
僕が訪れた日は、鑑賞者が他にいませんでした。
会長の室井さん自らが案内してくださり、完全なる貸し切り状態。
貴重な作品にくわえ、会長直々の貴重なトークまで聴けて、500円は破格でした。
何で皆さま、参加しなかったのでしょう?
前夜に開催されたホタル観賞会(無料)には、30人近く参加されていたのに。
●客室に会長の本があった
客室でのんびりしている際に、
何気なく、引き出しを開けてみたところ・・・・・
会長が監修した本がありました。
その名も、『感性論哲学からのアプローチ 進化するアートスタイル経営』。
アパホテルにも東横インにも客室に、
経営者の哲学が書かれた本が、問答無用で置かれていますが。
まさか、大黒屋にも・・・(笑)。
何でホテルの経営者は、こういう本を書きたがるのでしょう?
そして、全客室にしれっと置きたがるのでしょう??