TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

現在、東京都写真美術館(通称TOP)で開催されているのは、

“TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から”

「時間旅行」をキーワードとしたTOPのコレクション展です。

 

 

 

ちなみに。

サブタイトルの“千二百箇月の過去とかんずる方角から”は、

宮沢賢治が1924年、今からちょうど100年前に刊行した『心象スケッチ 春と修羅』序文の、

「二十二箇月の過去とかんずる方角から」をオマージュしたものだそうです。

星星

 

 

と、それだけに本展の冒頭を飾る第一室では、

宮沢賢治の『心象スケッチ 春と修羅』とともに、

 

 

 

1924年(大正13年)に制作・発表された写真作品の数々が紹介されています。

 

 

 

続く第二室は「昭和モダン街」がテーマ。

大正時代から時が少し進んで、

1930年代(昭和初期)の街並みを写した写真が紹介されています。

 

 

 

また、それらに混ざって紹介されていたのが、

当時の東京の街角で実際に飾られていた広告ポスターの数々。

その第一人者ともいえる杉浦非水のポスターはもちろんのこと、

 

 

 

お初にお目にかかるレアなポスターも多々ありました。

 

 

 

中でも一番印象に残っているのが、

こちらのカルピスのポスター(1926年)です。

 

 

 

今ではすっかり青春の味というイメージのカルピスですが、

発売当初は、滋養強壮飲料というのを全面に押し出していたのですね。

だからといって、象くらいの力は発揮できないだろ。

誇大広告にもほどがあります。

こんなセンスのないポスターの作者は誰なのかと、

キャプションに目をやると、そこには「杉浦非水」の名がありました。

杉浦非水も万能というわけではなかったのですね(笑)

さらに、こちらのセクションでは、

広告ポスターだけでなく、広告写真も紹介されています。

それらの中に、堀野正雄による森永チョコレートの広告写真もありました。

 

 

 

なお、右側の写真で、カーネーションとともに、

森永チョコレートを持っている女性は、伝説の女優・原節子だそうです。

 

 

さてさて、「かつて ここで」と題された第三室は、

国鉄のデザイナーだった黒岩保美の一枚の写真から始まります。

 

 

 

「かつて ここで」の「ここ」とは、

東京都写真美術館が今経っている土地のこと。

「ここ」にはかつて、日本麦酒醸造株式会社のビール工場がありました。

「ここ」で醸造されていたのが、ご存じヱビスビール。

それが由来となり、「ここ」の地名は現在、恵比寿となっています。

というわけで、このセクションでは、

ヱビスビール関連資料が多数紹介されていました。

 

 

 

第四室は「20世紀の旅—グラフ雑誌に見る時代相」。

こちらでは、アメリカと日本をそれぞれ代表する雑誌、

『LIFE』と『アサヒグラフ』を飾ったグラビアの数々が紹介されています。

それらの中には、ロベール・ドアノーの伝説的な写真《市庁舎前のキス》や、

 

 

 

フィリップ・ハルスマンによるマリリン・モンローのポートレートも。

 

 

 

また、グラフジャーナリズムを代表する写真家として、

朝日新聞出版局写真部の三羽烏の一人、大束元による作品群も紹介されていました。

その中でとりわけ印象的だったのが、《夜空の構成 数寄屋橋にて》という一枚。

 

 

 

どういうシチュエーションなのかは、

イマイチよくわからなかったのですが。

一瞬、スティーブン・スピルバーグ監督作品の1コマかと思いました。

 

 

さて、本展を締めくくる第五室は、「時空の旅—新生代沖積世」と題し、

長時間露光による写真作品や映像作品といった「光」を感じる作品や、

 

 

 

人々が都市を「移動」する姿が映し出されたスナップショットが紹介されています。

 

 

 

それらの中でもっともインパクトがあったのが、

先ほど紹介した明治チョコレートの広告写真を撮影した堀野正雄が、

1936年(昭和11年)に発表したこちらの1枚です。

 

 

 

どういうシチュエーション?!

顔は鳥山明ロボ、身体はアバンギャルディのよう。

実際にこんな光景を目の当たりにしたら、軽くトラウマになりそうです。

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ