昨年11月3日にリニューアルオープンを果たした皇居三の丸尚蔵館。
皇室に代々伝えられてきた美術工芸品や、
皇室に献上された美術工芸品を収蔵するミュージアムです。
そのリニューアルオープンの開館を記念して、
4期に分け、“皇室のみやび”という展覧会が開催されてきました。
そのラストを飾るのが、現在開催中の“三の丸尚蔵館の名品”。
約20000点を誇る同館のコレクションの中から、
文字通り、名品だけを厳選して紹介する展覧会です。
それら出展品の中には、国宝《春日権現験記絵》や、
同じく国宝である狩野永徳の《唐獅子図屏風》、
さらに、みんな大好き伊藤若冲の《動植綵絵》も含まれています。
ただし、《動植綵絵》に関しては、
全30幅が一挙公開されているというわけでなく。
今期では、《蓮池遊魚図》と《群魚図》、
それに、《芙蓉双鶏図》と《老松孔雀図》を併せて、計4幅が公開されています。
ちなみに。
第1期でも前期と後期に分けて、
《動植綵絵》が4幅ずつ公開されていました。
第1期の前期には《南天雄鶏図》が、
後期には《棕櫚雄鶏図》が含まれていましたっけ。
若冲と言えば、ニワトリ。
ニワトリと言えば、若冲。
おそらく、そんな声なきニーズに応える形で、
ニワトリの絵を1点は必ず入れてくれていたのでしょう。
そうそう、ニワトリと言えば、このようなものも展示されていました。
京都の蒔絵師・戸島光孚らによって制作された《双鶏置物》です。
若冲の描くニワトリのリアルさにも驚かされましたが、
こちらの蒔絵で作られたニワトリの置物も負けず劣らず、リアルでした。
特にトサカの再現ぶりは絶品!
本物のニワトリのトサカくらい、気持ち悪かったです。
(注:個人の感想です)
なお、《双鶏置物》は、大正4年の大礼を祝して、
公家出身の華族一同より献上された品とのことでしたが。
会場では他にも、昭和3年の大礼に際して、
京都市より献上されたというアイテムも紹介されていました。
それが、髙島屋呉服店によるこちらの屏風。
パッと見は、絵画作品のようですが、
実はすべて、刺繍で表現されています。
その刺繍の技術もさることながら、
約100年前のものとは思えないほど美しく光り輝いており、
その保存状態の素晴らしさに、感銘を受けました。
さて、展覧会では他にも、重要文化財の《萬図絵図屏風》や、
1900年のパリ万国博覧会にも出品された、
並河靖之の最高傑作《七宝四季花鳥図花瓶》、
明治宮殿の大広間のために、
横山大観が制作した《朝陽霊峰》などなど、
三の丸尚蔵館の名品が目白押し。
《唐獅子図屏風》や《朝陽霊峰》が大画面であるため、
出展品の総数が13件と少なめなのは、やや残念なところですが、
三の丸尚蔵館のベストメンバーが勢ぞろいしていたのは確か。
日本美術ファンであれば押さえておきたい展覧会です。
ちなみに。
個人的にもっとも印象に残っているのは、
今年、重要文化財に指定されたばかりの《天皇摂関御影》。
平安時代後期から鎌倉時代にかけて、
歴代の天皇の似絵が描かれた絵巻です。
後白河法皇や後鳥羽上皇、後醍醐天皇といった、
歴史の教科書でもお馴染みの天皇たちがズラリと並ぶ様子は圧巻でした。
歴代の偉い人の肖像を並べる。
校長室に歴代の校長の写真が飾られている、
あの謎の文化のルーツはもしかしたら、《天皇摂関御影》にあるのかもしれません。