■宮廷画家のうるさい余白(全1巻)
漫画:久世番子
出版社:白泉社
発売日:2018/5/18(1巻)
ページ数:212ページ(1巻)
バロック期、スペイン王宮…
宮廷画家に登用されようと、王宮を訪れた青年、シルバ・ベラスケス。
そこで彼が出会ったのは、自らを描いた肖像画を切り裂く少女、イサベル姫。
どんな画家が描いた肖像画も気に入らないという彼女の心中は…?
(白泉社HPより)
「タイトルは『余白』と書いて、 『ブランカ』と読むのだそう。
『ブランカ』は、スペイン語で『白』という意味なのですね。
『ストリートファイターⅡ』で育った世代なので、
ブランカと聞くと、緑色の野獣のようなキャラが思い浮かんでしまいました。
と、それはさておき。
こちらの漫画は、バロック期のスペイン王宮を舞台にしたものです。
主人公は、宮廷画家のベラスケス。
《ラス・メニーナス》や《インノケンティウス10世の肖像》でお馴染み、
ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケスその人かと思いきや。
あくまで、あのベラスケスをモデルにしたキャラとのこと。
3割増(?)で、お金大好きな性格となっていました。
物語のメインとなるのは、
おそらくマルガリータ王女をモデルにしていると思われる、
ツンデレな性格のイサベル姫とベラスケスとの交流です。
最初は反発しあっていた2人が、
絵画を通じて、徐々に心を通い合わせて・・・というストーリー。
とある理由で、肖像画に描かれたくないイサベル姫。
しかし、ベラスケスと過ごす日々の中で、 絵画の素晴らしさに気が付き、
やがては彼女自ら、ベラスケスに肖像画を描いてもらいたいと思うように。
その顛末が、当時のスペイン王宮の様子を描きつつ、
時にコメディ要素も交えつつ、 テンポよく描かれています。
その本筋のストーリーも良かったですが、
個人的には、《鏡のヴィーナス》にまつわるエピソードが好きでした。
《鏡のヴィーナス》は、ベラスケスの現存する唯一の裸婦像にして、
カトリックの伝統が強かった当時のスペインでは珍しい裸婦像です。
劇中でも、異端審問官によって、
この絵が焼かれてしまうかもしれないピンチに陥ります。
しかし、それをイザベル姫が咄嗟の機転を利かせて、見事回避。
なるほど。それであの絵には、アレが描かれているわけですね!
もちろんフィクションではあるでしょうが、
もし、その事実が本当だったら面白いなァ、と素直に思いました。
なお、これもフィクションでしょうが、
劇中では《鏡のヴィーナス》に描かれている女性のモデルは、
ベラスケスの亡くなった妻という設定になっていました。
それも、自他ともに認める不美人の。
とはいえ、ブライクだから後ろ向きに描いたという、そんな単純なお話ではありません。
そこには、ベラスケスと妻との深い愛情があったのです。
いや~、えぇ話やな~。°(°´ω`°)°。
と、感動してしまっただけに、
昨年11月のあの事件への怒りが、ふつふつと再燃しました。
石油を止めたいという訴えは、まだ理解できなくもないですけれども。
それと、《鏡のヴィーナス》の保護ガラスをハンマーで叩くのに何の関係があるんだ!
石油を止めるよりも先に、こいつらの一連の蛮行をストップさせたい今日この頃。
とりあえず、『宮廷画家のうるさい余白』でも読めよ。
(星3つ)」
~漫画に登場する名画~
《鏡のヴィーナス》