和フリカ―第三の美意識を求めて― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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パリを拠点に活動するカメルーン出身の現代アーティスト、セルジュ・ムアング。

その日本では初となる個展が、現在、丸紅ギャラリーで開催されています。

その名も、“和フリカ―第三の美意識を求めて―”です。

 

 

 

展覧会タイトルにもなっている“和フリカ(WAFRICA)”とは、ムアングによる造語。

アフリカ文化と日本文化に共通性、親和性を見出した彼は、

その2つの文化の美的感覚を融合させた“和フリカ”な作品の数々を制作しています。

 

展覧会の冒頭で紹介されていたのは、“和フリカ”の着物の数々。

“和フリカ”の着物は、2008年より制作されているそうで、

アフリカの伝統的な生地を、日本の呉服メーカーが仕立てています。

 

 

 

“和フリカ”の着物に使われる布は、同じではないようで。

例えば、こちらの振袖には、ケンテというガーナの伝統的な布が、

 

 

 

また例えば、こちらの振袖には、

アンカラ・コットンプリント生地が使われているそうです。

 

 

 

生地だけ観れば、アフリカンなのですが、

全体的にはちゃんと和のテイストも感じられ、

アフリカと和とが、違和感なく融合しています。

まさに、“和フリカ”としか言いようのない着物でした。

 

続いて紹介されていた“和フリカ”は、

「Urushi Sculpture」と名付けられたシリーズ。

日本の漆芸職人の協力によって、

アフリカの伝統的な木彫りマスクや人形を、

漆でその表面を何度も塗り重ねて、制作した作品群です。

こちらはその最新作となる《お供え》という作品。

 

 

 

緑色の漆が塗り重ねられているのは、

ファング族による約70年前の木彫りの彫刻なのだそう。

アフリカの彫刻と日本の伝統的な漆が、

ビックリするくらいに、違和感なく融合しています。

しかも、約70年前のものとも思えず。

現代性、いや、近未来感さえ感じられました。

 

なお、会場では他にも、

「Urushi Sculpture」シリーズの作品が紹介されています。

 

 

 

漆で塗り重ねられたアフリカの仮面は、

どことなく、戦国時代の変わり兜を彷彿とさせるものがありました。

 

ちなみに。

表と裏の両面に顔のある珍しいこちらのお面は・・・・・

 

 

 

どことなく、『コロコロコミック』の漫画のキャラを彷彿とさせるものがありました。

 

 

さて、漆で塗り重ねられているといえば、

本展のメインビジュアルにも採用されている、

《ブラッド・ブラザーズ(血の兄弟)》という作品も。

 

 

 

こちらは、カメルーン南東部のバカ・ピグミー族の、

職人の手により彫られたスツールを漆で仕上げたものなのだとか。

フォルムといい、横長の大きな目といい、

縄文時代の遮光器土偶に似ている気がします。

おそらく、そのカメルーンの職人さんは、

日本の遮光器土偶なんて知らないことでしょう。

偶然に似てしまったことに、驚きを隠せませんでした。
 

なお、展覧会のラストでは、

インスタレーション作品も展開されています。

その名も、《セヴン・シスターズ(七人姉妹)》

 

 

 

女性たちのヘアスタイルは、

京都の舞妓の髪型をイメージしているそうで、

その表面には椿油が塗られ、簪が刺さっています。

 

 

 

なお、この白塗りの面は、ガボンのプヌ族のお面だそうで。

一説によると、こちらのお面は、17世紀のポルトガル人船員によって、

西アフリカに持ち込まれた能面に影響を受けたとも考えられているそうです。

また、身に着けている布は、日本の藍染のようですが、

カメルーンのバミレケ族の高官が着用する布なのだとか。

 

アフリカと日本。

まったく異なる文化と思っていましたが、

もしかしたら、根っこのところで深い繋がりがあるのかもしれません。

そんなことに気が付かされる展覧会でした。

星

 

 

ちなみに。

和装で来館すると、無料になる丸紅ギャラリーですが。

本展に限っては、和装だけでなく、

世界の民族衣装を着用しても、入館料が無料になるそうです。

アフリカの民族衣装で訪れるも良し。

チャイナドレスで訪れるも良しです。

 

 

 

 

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