マティス 自由なフォルム | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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国立新美術館で開催中の展覧会、

“マティス 自由なフォルム”に行ってきました。

 

(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

20世紀最大の芸術家の一人、アンリ・マティス。

その晩年に取り組んだカットアウト、

いわゆる切り紙絵に焦点を当てた展覧会で、

ニース市マティス美術館の全面協力のもと、約150点が紹介されています。

 

マティスの展覧会といえば、昨年、東京都美術館にて、

日本では20年ぶりとなる大規模な回顧展が開催されました。

初期の作品から晩年の切り紙絵までを網羅した大充実のマティス展でした。

それと比べてしまうと、切り紙絵に焦点を当てたマティス展は、

いささか物足りなさを感じるだろうと、実はそこまで期待していなかったのですが・・・・・

 

控えめに言って、

史上最高のマティス展です!!

 

大充実を超える大大大充実のマティス展。

切り紙絵の作品以外にも、

野獣派時代の絵画作品も紹介されていましたし、

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 

 

それ以前の初期の作品も紹介されていましたし、

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 

 

昨年のマティス展でもフォーカスされていた彫刻作品も紹介されていました。

 

アンリ・マティス《横たわる裸婦Ⅱ》 オルセー美術館所蔵(ニース市マティス美術館寄託)

 

 

 

さらに、マティスがデザインを手掛けたバレエ、

「ナイチンゲールの歌」の衣装も紹介されていました。

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 

 

それらをきちんと抑えた上で、

本展のメインとなる切紙絵が大充実しています。

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 


中でも目玉となるのが、日本初公開となる《花と果実》です。

 

アンリ・マティス《花と果実》 ニース市マティス美術館蔵© Succession H. Matisse.

 

 

大きさは、実に縦4.1m×横8.7m。

とあるアメリカ人コレクターから、

中庭を飾る陶板絵のオーダーを受けた際に、

そのマケットとして制作されたものなのだそうです。

なお、この作品は、本展に合わせて修復されたとのこと。

70年近く前の作品とは思えないくらいに、色が鮮やかでした。

 

また、昨年のマティス展同様に、展覧会のラストは、

マティス曰く「生涯の最高傑作」であるヴァンスのロザリオ礼拝堂で締めくくられます。

そのロザリオ礼拝堂関連の展示品も大充実。

 

アンリ・マティス《ヴァンス礼拝堂の外観のマケット(1/20)》 ニース市マティス美術館蔵© Succession H. Matisse.

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 

とりわけ圧巻だったのが、儀礼用装身具の雛型の展示。

マティスがデザインした6種の儀礼用装身具が一室を埋め尽くしています。

 

会場風景 © Succession H. Matisse.

 

 

なお、余談も余談ですが。

そのうちの1種のカラーリングが、

どことなくクロネコヤマトを彷彿とさせるものがありました。

 

アンリ・マティス《白色のカズラ(上祭服)のためのマケット(正面)》1950-1952年 切り紙絵 126.5×196.5cm 

ニース市マティス美術館蔵 ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

 

 

と、それはさておき。

ここまででも大充実していたのですが、

ラストのラストに、最大の驚きが待ち構えていました。

それは、ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の再現展示。

 

ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の再現展示

 

ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部タイル壁画の再現展示

 

実際のものよりは縮小されているそうですが、

それでも十分すぎるほどに、空間を体験することができます。

しかも、空間だけでなく、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の一日の光も完全再現。

 

ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の再現展示

 


ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の再現展示

 

 

一日の変化をギュギュっと凝縮して、

約3分で体験できる仕掛けになっています。

内容もタイパも最高でした!

 

昨年のマティス展ももちろん3ツ星でしたが、

まさか、それを上回ってくるマティス展があったとは!!

4ツ星をあげたいくらいの充実度です。

星星星

 

 

そうそう、充実といえば、展示室のいたるところに、

大きく引き伸ばされたマティスの写真が展示されていました。

その中で個人的に印象に残っているのが、こちらの一枚。

実業家のアルバート・C・バーンズの依頼を受け、

マティスが壁に大作《ダンス》を描いているところです。

 

《ダンス》を制作中のアンリ・マティス デジレ=ニース通りのアトリエ、ニース 1931年4月末

 

 

筆が長いにもほどがあります。

マティスといえども、描きづらそうです。

足場を組めばいいのに。

 

また、充実していたといえば、キャプションの情報も。

 

 

 

G・マイヨール社製のべラム紙だとか、

「アクワレル・カンソン・フランス」の透かしが入った賽の目紙だとか、

描かれている紙を正確に教えてくれていました。

個人的には、ひとくくりに紙は紙でいいような気もしましたが。

紙好きにはたまらない展覧会といえましょう。

 

 

最後に。

どうしても気になってしまった作品を。

 

 アンリ・マティス《大きな顔、仮面》 1951年 筆と墨/紙 75×75cm 

オルセー美術館蔵(ニース市マティス美術館寄託) ©Succession H. Matisse Photo: François Fernandez

 

 

そのタッチといい、その佇まいといい、

よーじやのあぶら取り紙を思い浮かべずにはいられませんでした。

 

 

 ┃会期: 2024年2月14日(水)~5月27日(月)

 ┃時間:10~18時(金・土は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで

 ┃会場:国立新美術館
 ┃https://matisse2024.jp/

 

 

 

 

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