印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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第1回の印象派展が開催されてから、

今年2024年は、ちょうど150年目となります。

そんな印象派のメモリアルイヤーに、

東京都美術館を皮切りに開催されるのが、

“印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵という展覧会。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)

 

 

1898年にアメリカのマサチューセッツ州に開館した、

ウスター美術館の所蔵品の中から、印象派コレクションを中心に、

選りすぐりの名品の数々を紹介する展覧会です。

 

展覧会の目玉の一つは何と言っても、モネの《睡蓮》

1909年、パリのとある画廊で開催された“睡蓮:水の風景連作”で、

モネはそれまでの数年間で描いた48点の睡蓮の連作を発表しています。

本作は、そのうちの1点なのです!

 

クロード・モネ《睡蓮》 1908年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Museum Purchase, 1910.26/Image courtesy of the Worcester Art Museum

 

・・・・・・とは言っても。

モネが睡蓮をモチーフに描いた絵は、たくさんあるわけで。

これまでに何度も、モネが睡蓮をモチーフに描いた絵を観ているわけで。

パッと見は、それほど特別な印象は受けませんでした。

 

が、実は!

 

こちらの《睡蓮》は、“睡蓮:水の風景連作”の翌年、

1910年に、美術館では世界で初めて購入された《睡蓮》なのだとか!!

なんとなく、世界初はフランスの美術館だろうと思っていましたが。

まさか、世界初購入は、アメリカの美術館だったとは!

しかも、メトロポリタン美術館やMoMAでなく、ウスター美術館だったとは!

正直なところ、本展を通じて、

ウスター美術館を初めて知りましたが、

印象派の美術館としては、ものすごく重要な美術館だったのですね。

 

なお、展覧会では、この《睡蓮》の購入を巡って、

美術館と画商の間で交わされた手紙や電報の複製も併せて展示。

金額交渉などの生々しいやり取りを見て取ることができますよ。

 

「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京都美術館、2024年

 

 

さて、そんな世界の美術館に先駆けて、

印象派に注目していたウスター美術館は、もちろんモネ以外にも、

ルノワールやシスレー、ピサロ、メアリー・カサットなどの作品も充実しています。

 

「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京都美術館、2024年

 

 

さらに、展覧会では、印象派に大きな影響を受けたという、

ドイツや北欧といったフランス以外の画家の作品も紹介されていました。

 

「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京都美術館、2024年

 

 

それらの中には、黒田清輝をはじめとする・・・・・

 

黒田清輝《草つむ女》 1892年 油彩、カンヴァス 東京富士美術館 

©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom Image courtesy of Tokyo Fuji Art Museum

 

 

日本の洋画家たちの作品も含まれています。

(これら日本人作家の作品は、ウスター美術館の所蔵ではないですが)

1美術館の印象派コレクションを紹介するだけの展覧会かと思いきや。

パリで発祥した印象派というムーブメントが、

いかに世界的に影響を与えたものなのかを明らかにする、

印象派をちゃんと掘り下げた展覧会でした。

印象派の入門編としても楽しめますが、

印象派に見慣れた人でも目新しい発見があること請け合い!

この春、絶対に見逃せない展覧会の一つです。

星星星

 

 

ちなみに。

印象派の影響は、当然ながら、

ウスター美術館のあるアメリカにも及びました。

それゆえ、本展ではフランスの印象派の画家と同じくらい、

いや、それ以上に、アメリカの印象派の画家がフィーチャーされています。

 

「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展示風景、東京都美術館、2024年

 

中でも、とりわけ注目したいのが、

本場パリで学んだ経験を持つチャイルド・ハッサム。

本展では、ポスターのメインビジュアルに採用されている、

《花摘み、フランス式庭園にて》を含む全4点が出展されていました。

 

チャイルド・ハッサム《花摘み、フランス式庭園にて》 1888年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Theodore T. and Mary G. Ellis Collection, 1940.87/Image courtesy of the Worcester Art Museum

 

 

ハッサムの描く絵画の画面には、

パリの印象派の画家たちと同じく、光が溢れています。

それにプラスして、ホッパーやワイエスといった、

のちのアメリカの画家に通ずるドラマ性がありました。

例えば、《花摘み、フランス式庭園にて》も、パッと見こそ、

庭園の何気ない光景を切り取ったスナップショットのようですが。

奥の男性は、読書をしているのを装って、

どうやら女性をチラ見している・・・ようにも見えます。

そう思うと途端に、ちょっと不穏に感じられるのではないでしょうか。

 

さらに、《コロンバス大通り、雨の日》という作品。

 

チャイルド・ハッサム《コロンバス大通り、雨の日》 1885年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Bequest of Mrs. Charlotte E.W. Buffington, 1935.36/Image courtesy of the Worcester Art Museum

 

 

まるで、画面中央の馬車にだけピントが合っているような。

スマホカメラのポートレートモードを彷彿とさせるものがありました。

そのおかげで、ただの雨の日の光景でなく、

特別なワンシーンであるかのような印象を受けます。

 

ハッサムのその他の2点の作品も、

また全然違ったテイストですが、どちらも良き。

2021年の三菱一号館美術館の印象派展では、

どの印象派の画家よりも、レッサー・ユリィが話題となりましたが。

本展では、チャイルド・ハッサムが話題を持っていくかもしれません。

 

それから、もう一人のブレイク候補が、デウィット・パーシャルです。

 

デウィット・パーシャル《ハーミット・クリーク・キャニオン》

1910-16年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Museum Purchase, 1916.57/Image courtesy of the Worcester Art Museum

 

 

出展作約70点の中で、モネの《睡蓮》と、

こちらの《ハーミット・クリーク・キャニオン》だけが、

バックパネル&ステージ付きの特別待遇で展示されていました。

 

デウィット・パーシャル《ハーミット・クリーク・キャニオン》 1910-16年 ウスター美術館

 

 

つまりは、公式の推し作品ということです。

なお、作者のデウィット・パーシャルは、

グランドキャニオンをモチーフにした絵画をたくさん描いた画家なのだそう。

富士山の絵を多く描いたあの日本画家に似たものを感じます。

“アメリカの横山大観”デウィット・パーシャル。

 

This exhibition was organized by the Worcester Art Museum

 

 

 ┃会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日)

 ┃ ※土曜・日曜・祝日及び4月2日(火)以降は日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)

 ┃会場:東京都美術館
 ┃https://worcester2024.jp

 

~読者の皆様へのプレゼント~  
“印象派 モネからアメリカへ”の無料鑑賞券を3組6名様にプレゼントいたします。  
展覧会名・住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。  
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/ 
なお、〆切は2月12日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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