シモン・アンタイ「FOLDING」 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、エスパス ルイ・ヴィトン大阪では、

“シモン・アンタイ「FOLDING」”という展覧会が開催されています。

 

 

 

・・・・・・・シモン・アンタイ?指紋安泰??

耳で聞く限りでは、四字熟語のような印象を受けますが。

シモン・アンタイとは、ハンガリーに生まれ、

のちにフランスに移住し、パリを中心に活躍した抽象画家です。

これまで日本では、彼の大きな展覧会は開催されていませんが。

2013年には、没後初となる大規模回顧展が、

パリのポンピドゥー・センターで開催されています。

さらに、昨年には、生誕100年を記念して、

パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで、彼の大規模展覧会が開催されました。

そういう意味では、今、パリで再ブレイク(?)している画家と言えましょう。

 

シモン・アンタイの代名詞ともいえるのが、プリアージュ。

直訳すると、「折り畳み」。

彼が独自に編み出した技法です。

一般的に、絵画はピンと張ったキャンバスに描かれますが、

アンタイは、キャンバスを布の状態のままで何重にも折り畳み、

あるいは、くしゃくしゃっと丸めて結び目を作り、その上からインクを塗りつけました。

若き日は、シュルレアリスムに傾倒していたというアンタイ。

フロッタージュやデカルコマニーのように、

偶然性が大きく作用するプリアージュに辿り着くのも納得です。

 

なお、アンタイのプリアージュは、全部で8シリーズもあるそうで。

本展では、そのうちの3シリーズの作品が紹介されています。

 

まずは、1960年代に制作されたプリアージュ初期の「Mariales」シリーズ。

 

 

 

「Mariales」とは、「聖母マリアのマント」の意で、

ルネサンスの生みの親ジョットの絵画《荘厳の聖母》に着想を得たというシリーズです。

引きで観る分には、ただの抽象画(?)ですが、

近づいてその表面を観てみると、無数のシワが見て取れます。

 

 

 

アンタイは、「Mariales」シリーズで、

《荘厳の聖母》のマリア様が着ているドレープをイメージしたのだそうです。

それにしては、シワシワすぎる気もしましたが

 

 

続いて紹介されていたのは、「ÉTUDE(習作)」シリーズ。

 

 

 

「Mariales」シリーズ同様に、キャンバスをしわくちゃにしてはいますが。

折り込まれていたため、色がつかなかった部分を、

あえてそのままにしているのが、「ÉTUDE」シリーズの大きな特徴です。

 

 

 

マティスの切り絵作品の影響もあるとのこと。

個人的には、白い恋人の影響もあると見ています(←んなわけない!)

 

 

 

最後に紹介されていたのは、「Tabulas(タビュラ)」シリーズ。

プリアージュの最後のシリーズにして、

プリアージュの集大成と称されているシリーズです。

 

 

 

キャンバスを等間隔に折りたたむことで、

規則的な幾何学模様、シンプルなグリッドを作り出しています。

パリの人々が観れば、抽象画にしか感じられないのでしょうが。

日本人の僕からすれば、銭湯のタイルにしか思えませんでした(笑)。

 

ちなみに。

もう少しグリッドが大きいこちらの2点の「Tabulas」シリーズは・・・・・

 

 

 

アンタイのアトリエに残されていた未発表の作品とのこと。

近年フォンダシオン ルイ・ヴィトンが直接購入したもので、

今回の大阪での展覧会において、世界初公開となっています。

星

 

 

さてさて、展覧会のラストを飾るのは、

《SANS TITRE(無題)#503, PARIS》という作品。

 

 

 

こちらは、1984年に制作された作品で、

複雑な「折り畳み」と、彩色によって画面が構成されています。

実はアンタイは、1982年に「ヴェネチア・ビエンナーレ」に、

フランス代表作家に選ばれたものの、その数か月後に引退宣言、

突然、自らの意思で表舞台から姿を消してしまいました。

その後、1998年に新作を発表したそうですが、

そんな長い隠遁生活中に描かれていたのが、こちらの作品です。

表舞台から去った理由は、明らかになっていませんが、

当時の美術界に嫌気がさしたから、というのが定説だそう。

言われてみれば、隠遁生活中の絵が、

一番楽しそうに描かれている印象があります。

雰囲気といい、色味といい、なんとなくトイザらスのCMを彷彿とさせました。

 

 

 

 

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