2021年宇宙の旅 モノリス | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

現在、原宿のGYRE GALLERYで開催されているのは、

“2021年宇宙の旅 モノリス _ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ という展覧会。

そのタイトルからピンと来た方もいらっしゃるでしょうが、

スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の金字塔・・・・・

 

 

 

『2001年宇宙の旅』 をテーマにした展覧会です。

それゆえ、会場の入り口には、

モノリスらしきオブジェが設置されていました。

 

 

 

ここ最近、アメリカでモノリスらしきオブジェが、

たびたび出現したことで、話題となっていましたが。

GYRE GALLERYに出現したモノリスらしきオブジェは、展覧会公認のもの。

展覧会キュレーターの解説にはこうありました。

 

 「モノリス」は強力な磁場を発生させている。

 形状は四角柱で各辺の比は1:4:9という最初の3つの自然数の二乗となっている。 

 そして、およそ300万年前に埋められたと地質学的に設定されている。

 科学者によって 「ティコ磁気異常1号(TMA・1)」 と、

 呼び名がついたモノリスはその名の通り、

 「巨大なニッケル=鉄鉱石」よりも強力な磁場を発生させている。 

 これはモノリス内部が超伝導体で出来ていて、

 強力な円電流が流れているという仮説でしかその現象を説明できない。

 これだけでも明らかにモノリスは何かしらの ”装置” なのだ。 

 それはつまり、「モノリス」 は人類の膨大な記憶を蓄えたアーカイヴと解することもできる。

 しかし、それは、コンピュータウィルス化して全ての記憶を消去することも可能となる。

 そして、モノリスがモノリス自体を消去するとしたら・・・

 いや、もうすでに消去されているかもしれない。

 

 

・・・・・スタンリー・キューブリック映画並みの難解さ。

5周ほど読んでみましたが、

まったく内容が頭に入ってこなかったです。

インプットしたものが、すぐに消去されているのかもしれません。

 

 

さてさて。

展覧会は、「時空の歪み」「月面とポストトゥルース」、

そして、「隠喩としてのスターチャイルド」 の3つのテーマで構成されています。

『2001年宇宙の旅』 をテーマにした展覧会だけに、

会場内は、どことなく宇宙を想起させる雰囲気となっていました。

 

 

 

出展作家は、全部で9名。

アニッシュ・カプーアや森万里子さんといったベテランから、

ネリ・オックスマンやジェームズ・ブライドルといった若手まで。

多彩な顔触れが楽しめる展覧会です。

星

 

意外なところでは、2014年にお亡くなりになった赤瀬川原平も。

赤瀬川原平といえば、街中にある無用の長物を、

『トマソン』 と命名し、路上を観察して歩き回っていた人物。

もしくは、千円札を印刷するという作品を制作したことで、

偽札を作った罪で裁判に掛けられ、その裁判すらも美術にしてしまった人物。

「宇宙の要素なんて、どこにもないのでは??」 と不思議だったのですが。

今回の展覧会では、初期の作品 《宇宙の罐詰》 が展示されていました。

 

 

 

こちらは、蟹缶の中身を食べ、綺麗に洗い、

外側のシールを剥がし、内側に貼りつけ直したもの。

この作品はわかりやすいように蓋が空いていますが、

ハンダで蓋を完全に密封した作品も存在しています。

で、それが何だというのか?

赤瀬川はこう語っています。

「ハンダで密封した瞬間!この宇宙は蟹罐になってしまう。

 この私たちのいる宇宙が全部その蟹罐の内側になるのです」

・・・・・・・・信じるか信じないかはあなた次第です(笑)

 

 

出展作品の中で他に印象的だったのが、

アニッシュ・カプーアの 《Syphon Mirror - Kuro》 という作品。

 

 

 

なんでも宇宙空洞 (=ヴォイド) やブラックホールをイメージしているのだそう。

確かに、じーっと見ていると、

吸い込まれてしまいそうな感覚がありました。

いや、実際、半分くらいは吸い込まれていたかも。

アニッシュ・カプーアはインド出身ロンドン在住のアーティストですが、

この作品に関しては、その色合いや光沢は、漆を連想させるものがありました。

なるほど。だから、タイトルには、「Black」 ではなく、

日本語の 「Kuro」 が使われているのかもしれません。

 

それともう一つ印象に残ったのが、

ネリ・オックスマンの 《流離う者たち》 という作品。

 

 

 

もし、人類が地球以外の惑星へ旅行、または移住できるには、

宇宙の過酷な環境に耐えられることが重要不可欠になってきます。

無重力や有害な大気、極限的な温度など、

人類が克服しないといけない課題は山積みです。
この 《流離う者たち》 という作品で提示されているのは、

人類が惑星で生活するための、3D印刷で設計された衣服型の人工臓器なのだそう。

宇宙服ではなく、衣服型の人工臓器。

こんなグロいのを身に付けないといけないだなんて。

惑星生活には夢も希望もなさそうです。

 

 

ちなみに。

展覧会のラストで目に飛び込んできたのは、

冒頭に出逢ったモノリスらしきオブジェの裏側でした。

 

 

 

圧倒的ハリボテ感。

一体何を暗喩しているのか??

『2001年宇宙の旅』 のラストくらいに、謎が謎を呼ぶ結末でした。





1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ