テート美術館所蔵 コンスタブル展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、三菱一号館美術館で開催されているのは、

“テート美術館所蔵 コンスタブル展” という展覧会です。

 

 

 

ターナーと並んでイギリスの風景画の2大巨匠と称される、

19世紀の画家ジョン・コンスタブルの日本では実に35年ぶりとなる大回顧展。

出展作品の大多数が、イギリスのテート美術館から来日した作品です。

このご時世に無事に開催できたことだけでも、ありがたい限り!

イギリス美術を堪能できる貴重な機会です。

 

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

さて、今でこそ、風景画は美術の1ジャンルとして確立していますが、

コンスタブルが活躍した19世紀は、風景画の地位はそれほど高くはありませんでした。

もし、コンスタブルとターナーがいなかったら、

イギリスの風景画の人気はなかったと言っても過言ではありません。

それほどイギリスの美術史にとって重要な人物です。

ちなみに、ターナーは常に国内外を旅し、

その景観を雄大に、崇高に描いたのに対して、

コンスタブルは自身の環境と密接に結びつく場所を描き続けました。

今ちょうど都内で展覧会が開催されている日本人画家に例えるなら、

ターナーは吉田博タイプで、コンスタブルは川合玉堂タイプと言えるでしょう。

 

ジョン・コンスタブル 《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》 1816 -17年 油彩/カンヴァス 101.6×127.0cm

テート美術館蔵 ©Tate

 

ジョン・コンスタブル 《チェーン桟橋、ブライトン》 1826-27年 油彩/カンヴァス 127.0×182.9cm

テート美術館蔵 ©Tate

 

 

ちなみに、コンスタブルの風景画において、

何より目を惹くのが、空を埋め尽くす雲の表現です。

実はコンスタブルは膨大な量の雲の習作 (=練習で描いたもの) を残しており、

雲を最も多く描いたその自負から、「私は雲の男です」 と述べたこともあるのだそう。

そんなコンスタブルの代名詞だけに。

 

ジョン・コンスタブル 《雲の習作》 1822年 油彩/厚紙に貼った紙 47.6×57.5cm

テート美術館蔵 ©Tate

 

 

普通の展覧会では、さらっと紹介されがちな習作が・・・・・

 

 

 

立派な額に入り、特別なボードを背後にして展示されていました。

習作史上もっともVIP扱いされている習作だった気がします。

 

と、そんな 《雲の習作》 も見どころの一つですが。

やはり展覧会の一番の目玉となるのは、

コンスタブルとターナーの有名な対決エピソードを再現した展示です。

 

それは、1832年のロイヤルアカデミーの展覧会でのこんなエピソード。

その展覧会では、出品作が一般公開される前に、

画家が絵の状態を最終チェックする日がありました。

会場で最後の手直しをすることで有名だったターナー。

自分の作品の隣に飾られていたコンスタブルの絵を観て、

“マズい!このままではコンスタブルの作品が目立ってしまう!” と、

直感したターナーは、自分の絵に赤の絵の具でブイを描き足しました。

そんな当てつけのような行動に対し、コンスタブルは、

「ターナーはここにやってきて、銃をぶっ放していったよ」 と発言を残しています。

 

 

 

その時の2作がこのように並べて展示されるのは、

1832年の展覧会を除いて、実に3度目、日本では初めてのことなのだそう。

2人のそのエピソードはよく知っていましたが、

ターナーに肩入れするような形で聴いていたので。

咄嗟に赤いブイを描き込むことでピンチを回避するだなんて。

なんてターナーは天才的な画家なんだと思っていましたが。

今回初めてその2点を目の当たりにして、率直に感じたのは・・・・・

 

ジョン・コンスタブル 《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》 1832年発表 油彩/カンヴァス

130.8×218.0cm  テート美術館蔵 ©Tate

 

J.M.W.ターナー 《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》 1832年、油彩/カンヴァス、91.4×122.0cm

東京富士美術館蔵 Ⓒ東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

 

 

「いや、この赤いブイじゃ何も解決してないだろ!」

 

でした (笑)

圧倒的にコンスタブルの作品のほうが華やかでした。

描き込みも多く、見ごたえもたっぷりです。

赤いブイがちょこんと描き足されただけで、

ターナーの作品のほうが目を惹くようになったかといえば、

まったくそんなことはありませんでした (※個人の感想です)

今展を機会に、日本でのコンスタブルの人気がターナーを上回るかもしれません。

星星

 

 

ちなみに。

展覧会では、風景画以外にも、

コンスタブルによる肖像画もいくつか紹介されています。

正直な感想としては、風景画と比べると肖像画は今一つ。

あまり人物画が得意でなかったのかもしれません。

特にそう感じたのが、《ブリッジズ一家》 という一枚です。

 

ジョン・コンスタブル 《ブリッジズ一家》 1804年 油彩/カンヴァス 135.9×183.8cm 

テート美術館蔵 ©Tate

 

女の子たちの首が、妙に長いような。

それから、最も違和感を覚えたのが、

画面真ん中の椅子に座る少女2人の表現です。

手前に座っている女の子の顔が、

後ろに座っている女の子の顔よりも後ろにあります。

いや、どういう状況なん??

 

 

 ┃会期:2021年2月20日(土)~5月30日(日)
 ┃会場:三菱一号館美術館
 ┃https://mimt.jp/constable/

 


~読者の皆様へのプレゼント~
“コンスタブル展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、2月28日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 


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