アルヴァ・アアルト もうひとつの自然 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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今年2019年は、日本とフィンランドが国交100周年を迎える節目の年。
それを記念して、現在、東京ステーションギャラリーにて、
開催されているのが、“アルヴァ・アアルト もうひとつの自然” という展覧会。




こちらは、個人住宅から公共建築まで数多くの建築を設計した、
フィンランドを代表する建築家&デザイナー、アルヴァ・アアルト (1898~1976) の大規模な回顧展です。


ネモ・プロフェタ号に乗るアアルト、1960年代 ⓒSchildt Foundation, photo: Göran Schildt


50年以上に及ぶアアルトの建築家人生の中で、
彼が関わった設計やプロジェクトは、国内外を含め、なんと約500以上!
その中から厳選されたアアルトの代表的な建築が、
貴重な模型やドローイング、写真などを通じて紹介されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


日本における約20年ぶりのアアルトの個展だけあって、
かなり気合が入っており、実に見どころの多い展覧会となっていました。
その一つ目は、アアルトの初期の傑作 「パイミオのサナトリウム」 の一室の再現展示です。
サナトリウム、つまりは結核の療養所。
きっと隔離された閉鎖的な空間なのだろう・・・・・と思いきや。




むしろ開放的で、シンプルながらも、温かみのある素敵な空間でした。
オシャレなユースホステルと言われたら、そのまま信じてしまいそうです。
しかも、何より驚きなのは、
「パイミオのサナトリウム」 が建てられたのが、今から約85年も前という事実。
この室内にあるものすべてが、イ●アやニ●リに売っていても違和感はありません。
それくらいに現代的なセンスでした。


見どころ二つ目は、東京ステーションギャラリーの煉瓦壁の空間と、
アアルトがデザインしたさまざまな家具や照明器具とのコラボレーション。




アアルトのデザインの代名詞ともいうべき、
“有機的でゆるやかな曲線” が垂直の煉瓦壁と対比されることで、より際立っていました。
個人的に、アアルトがデザインしたプロダクトの中で、
もっとも感銘を受けたのが、三本足の 《スツール60》




L字型の無垢材の足3本を、
円形の座面の裏に直接ネジで留めただけのシンプル極まりないスツールに見えますが。
実は、らせん状の塔のように、スタックしていくことができます。
収納スペースに困らない、なんとも機能的なデザインです。

さてさて、展示品であるこれらのチェアを眺めていると、
やはり実際に座って、その座り心地を確かめてみたくなるもの。
そんな僕らの願いに応えてくれるべく、
展示室の出口の先にある休憩室が、展覧会に合わせて、アアルト仕様になっています。




これが、三つ目の見どころ。
思う存分、座り心地を試してみましょう。
「来た、見た、座った」 、そんなアアルト展です (←?)。


ちなみに、今回の展覧会の “もうひとつの主役” ともいえるのが、
ドイツ人写真家アルミン・リンケによるアアルト建築の撮り下ろし写真。
彼は、いわゆる建築写真家ではないので、
中にはパッと見、どんな建築の写真なのか、正直よくわからないものもあります (笑)


アルミン・リンケ撮影、ヴィープリ(ヴィーボルク)の図書館/Alvar Aalto, 1927-35 ⓒArmin Linke, 2014


しかし、大きくプリントアウトされた写真の前で、
しばらく佇んでいると、まるで建築内部にいるような感覚に!





気のせいではなく、フィンランドの風、
フィンランドの空気を感じることができました。

さらに、アルミン・リンケの写真には、こんな効果も。
壁一面に飾られた写真が、まるで窓のような役割を、
プロジェクターで投影された映像作品が、日差しのような役割を果たしていたことで・・・




東京ステーションギャラリーの展示室が、
いつになく開放的な印象となっていました。
気のせいではなく、フィンランドの光を感じることができました。
星星


ちなみに、今回出展されていた約300点の展示品の中で、
もっとも印象に残っているのが、《リクライニング・チェア39》 です。




一目見た瞬間、『HOT LIMIT』 が脳内で再生されました。




そこはかとなく、T.M.Revolution感。
波打つ姿は、まるで生足魅惑のマーメイドです。




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