没後70年 北野恒富展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、千葉市美術館で開催されているのは、“没後70年 北野恒富展” という展覧会。
大阪を代表する美人画家・北野恒富の大々的な回顧展です。

その妖艶な作風から、デビューの頃には、「画壇の悪魔派」 と呼ばれていたとのこと。
どんな悪女に出会えるのかと楽しみに会場を訪れたのですが・・・

墨染
《墨染》 大正後期 川浦真樹氏蔵(全期間展示)


悪女らしい悪女は、いませんでした。
むしろ、はんなり系で優しげ。
八の字眉の困り顔美人が多かったです。


いかにも大和撫子な正統派の美人画だけでなく、

願いの糸
《願いの糸》 大正3年(1914) 公益財団法人木下美術館蔵(全期間展示)


どこか妖しげでホラーチックな美人画や、

淀
《淀君》 大正9年(1920) 耕三寺博物館蔵(全期間展示)


アールヌーヴォー風で洋画のような美人画など、

浴後


器用すぎるがゆえに、さまざまなスタイルの美人画を手掛けた北野恒富。
良く言えばバリエーション豊か、悪く言えば作風が一貫しない。
そのカメレオン画家 (?) ぶりが仇となり、
同時代に活躍した美人画家、上村松園や鏑木清方ほどは知名度が高くないのかもしれません。
ただ、いろんなタイプの美人画が見られるという意味で、
展覧会としては、松園や清方のよりもお得感や見ごたえアリ。
似たような美人画は数点で飽きますが、恒富の美人画は全く飽きません。
星星


ちなみに、絵として一番惹かれた美人画は、《いとさんこいさん》 という作品です。

いとさんこいさん
《いとさんこいさん》 昭和11年(1936) 京都市美術館蔵(後期展示)


「いとさん」 とは、大阪の商人言葉で、長女のこと。
「こいさん」 とは、末の女の子のことなのだとか。
おしとやかな 「いとさん」 とは対照的に、自由奔放な 「こいさん」 です。
二人のポーズがなんとも絶妙で、妙なリアリティがありました。
内またにそっと手を挟んでいる 「いとさん」 のポーズとか、
「こいさん」 の下駄の脱ぎ散らかしかたとか、ちょっとだけ足がはみ出ているところとか。
ちなみに、よく見たら、着物は色違いでした。
2色展開。


それから、歯磨き粉のポスターをはじめ、

ポスター
《ポスター:朝のクラブ歯磨》 大正2年(1913) 公益財団法人吉田秀雄記念事業財団 アド・ミュージアム東京蔵(全期間展示)


人気画家ゆえ多くのポスターを手掛けた北野恒富。
その中には、まんまミュシャ風のポスターも。

ポスター


全体的には、イイ感じにパクれていますが。
体に巻き付いた髪の毛は、なんか気持ち悪いことになっています。
なんとなく排水溝を連想。


最後に、もっとも印象に残った作品をご紹介いたしましょう。
切手の図案にも採用されたことがあるという 《阿波踊》 です。

阿波踊り


ダンスがキレッキレ。
三味線の女性も、実にロック。
全体的にグルーブ感が凄いです。
阿波踊りというよりも、ダンシング・ヒーロー。




そうそう、余談も余談ですが。
美術館の1階に、山本リンダから届いた花がありした。

山本リンダ


なぜ、山本リンダ??
気になって気になって、どうにもとまらない。




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