渡辺豪 ディスロケーション | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、横浜市民ギャラリーあざみ野では、
“渡辺豪 ディスロケーション” という無料の展覧会が開催中です。

ポスター


こちらは、第24回五島記念文化賞美術新人賞を受賞し、
国内外から注目を集めている現代アーティスト渡辺豪さんの最新個展。
2013年末から約1年ほど、フィンランドに滞在していたそうで、
今回の展覧会では、その滞在時の経験をもとにした新作が発表されています。
その一つが、ポスターのメインビジュアルになっている 《M5A5》 という作品です。

M5A5
渡辺豪 《M5A5》 2017 ビデオインスタレーション


モチーフとなっているのは、フィンランドの食器棚。
日本の食器棚とは違って、底が水切になっています。
洗った後、逆さまに置いておけば、自然と水が切れるという、なんとも便利な食器棚です。
IKEAに行けば、販売されているのでしょうか?

・・・・・・・と、それはともかく。
一見すると、普通の写真のように見えますが、実は、こちらはCGで作られたものです。
CGの映像だと知った上で観ても、CGとはわからないレベル。
相当に精巧なCGです。

しかも、画像ではなく、映像作品の一部。
これだけのクオリティ高いCGの映像が48分 (!) もあります。

映像


しかもしかも、モニター5台分。
すなわち、48分×5。
考えただけで、気が遠くなるような作業量です。

5つ


さてさて、肝心の映像の内容ですが。
ほとんど、と言っていいほど、動きはありません (笑)
ほぼ静止画のよう。
48分かけて、じわじわ~っと映像が動いていきます。
まるで、画像の一部が徐々に変化する 「アハ体験」 の映像のよう。
そんなじわじわ~っと変化する “ディスロケーション”、
つまり、“ずれること”“転位” が、渡辺豪作品の最大との特徴であり見どころです。
パッと見て、「面白い!」 という即効性こそないですが、
ボーっと見続けて、「なんか面白いかも。この作品、好きかも」 となるタイプの作品。
半身浴みたいにじわじわ効いてくる作品です。
星


さてさて、もう一つの展示室で紹介されていたのは、
北極圏付近や南極圏付近特有の夏に陽が沈まない 「白夜」 と、
対照的に冬に陽がほとんど昇らない 「極夜」 をテーマにした新作 《M2B2》

M2B2
M2B2


こちらも、もちろんフルCG。
例によって、全く動きが感じられませんが、
48分の映像を通して、どちらも白夜と極夜の1日 (=24時間) を再現しているそうです。
言うなれば、タイムラプスのような感じです。
じーっと見ていると、室内に入り込んでくる光や、
窓から見える景色、窓についた曇りが、じわじわっと変化していくのが感じられました。
しかし、24時間を48分に凝縮しても、これくらいの変化しかないとは。
白夜、恐るべしです。
フィンランド人の体内時計が、どうなっているのか心配になってきました。


ちなみに、展覧会の会場には、他にも渡辺豪さんの新作が。

作品
作品


これらのパネル作品も、写真にしか見えませんでした。

“CGの技術、ハンパ無いなぁ!”

と感嘆していたら、監視員の方に、

「あ、それは写真です」

と教えて頂きました。
渡辺さんの映像作品を見続けた結果、
普通の写真を、CGと感じてしまうようになってしまいました。
感覚が、だいぶディスロケーション。




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