クエイ兄弟 ―ファントム・ミュージアム― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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『ストリート・オブ・クロコダイル』(1986年) や、




『ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋』(1984年) など、




独特な世界観のストップモーションアニメーションで、
カルト的な人気を誇るアメリカ生まれの双子の映像作家・クエイ兄弟。
そのアジア初となる大々的な展覧会、
“クエイ兄弟 ―ファントム・ミュージアム―”が、渋谷区立松濤美術館で開催されています。

久永


展覧会は、クエイ兄弟のアーティストとしての歩みをたどる回顧展形式です。
第1展示室では、学生時代のイラストレーション作品や、

初期


ブラックドローイングと呼ばれる初期の平面作品、

《裕福な愛人たち》
クエイ兄弟 《裕福な愛人たち》 1970年代 courtesy Tommy Simoens, Antwerp

ブラック
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


さらには、クエイ兄弟に大きな影響を与えたポーランドのポスターなどが紹介されています。

ポスター


どこか不気味で、どこか懐かしく、どこか可笑しくて、どこか異国的で、どこか切ない。
クエイ兄弟の映像作品に共通するあの独特な世界観は、
アーティスト活動のスタート時点で、早くも確立しているようでした。


続く第2展示室で、いよいよクエイ兄弟の映像作品にスポットが当てられます。
もちろん、映像そのものも上映されていましたが。

上映


展示のメインとなるのは、“デコール”。
実際に映像で使われたセットや人形を箱の中に再構成した立体作品です。

クロコダイル
『ストリート・オブ・クロコダイル』 よりデコール 《仕立屋の店内》 1986年 (部分)photo©Robert Barker

でコール


驚くべきは、そのサイズ。
映像作品を観るに、かなり細部まで作り込まれている印象だったので、
それなりの大きさのセットと人形なのかと、勝手に思い込んでいましたが。
実際は、だいぶ小さかったです。
この小さなセットで、人形を地道に少しずつ動かし、
コマ撮りして、あの流れるような動きの映像作品を完成させていたのですね。
理屈ではわかっているのですが、にわかには信じられませんでした。
もはや魔術。


映像作家の展覧会にもかかわらず、
パネルでの紹介に留まっていた映像作品が多かったのは、やや残念ではありましたが。

映像


クエイ兄弟の世界観がぎっしりと詰まったデコールの数々は見ごたえがありましたし、

デコール


館内に設置された案内の数々がクエイ兄弟仕様になっているのもニクい演出でしたし、

演出


何よりも、クエイ兄弟の独特な世界観と松濤美術館の建物の雰囲気の化学反応が絶妙でした。
今まで見てきた松濤美術館の展覧会の中で、意外にも、今回が一番マッチしていた気がします。
星
階段部でふと目にした光景が、クエイ兄弟風だったので、思わずシャッターを押してしまいました↓

鏡




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