束芋 断面の世代 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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先日、横浜美術館で開催中の “束芋 断面の世代” に行ってまいりました。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-束芋



と、美術展の感想の前に。


“ 『束芋』 って何?!”


という人もいるでしょうから、まずは、 『束芋』 の説明から。

『そくう』 と音読みをするのでなく、『たばいも』 と訓読みいたします。


たばいも。

これは、タロ芋やヤム芋のようなお芋の名前ではなく、

現在、世界的に活躍する若手女性アーティストの名前。

もちろん、本名ではなく、アーティスト名。

その由来は…?


実は、束芋さん。

田端三姉妹の次女。

三姉妹共通の友人がいたそうで、

その方が、長女・次女・三女をそれぞれ、

たばあね (田端家の姉) 」・ 「たばいも (田端家の妹) 」・「いもいも (田端家の妹の妹) 」

と、呼び分けていたそうな。

たばあねたばいもは分かるとしても、

いもいもは、田端家、全く関係なし (笑)

ちなみに、このいもいもさん。

束芋さんのマネージャーを務めているそうです。


さてさて、ここまでのいきさつから、

“田端家の妹だから、束芋かぁ。妹キャラなのかぁ(・∀・)” と、

妙な期待をしている方がおりましたら要注意。


束芋さんの作風は、全然、妹キャラではありません (笑)!

むしろ、真逆も真逆。



今回の出展作品の画像を、ご覧下さい↓

http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2009/exhibition/tabaimo/japanese/works.html


《惡人 (新聞小説『惡人』挿絵原画) 》 なんかは、特にそう感じますが、

独特のねっとり感があるような、可愛らしさとは無縁の作風。

観ていてちょっとだけイヤになる、そんな作風です。

この “ちょっとだけイヤになる” ってのが、

束芋さんの作品特有の魅力ではなかろうかと。

イヤにならせ方が、絶妙な采配と言いますか。


観ていて不快なほどイヤな作品だと、すぐに目を背けてしまいます。

反対に、観ていてイヤにならない作品は、

ちゃんとじっくり向き合って観ようという気には、なかなか思えません。

ちょっとイヤだからこそ、何か妙に気になって、つい観てしまう、

挙句は、脳裏にしっかり焼き付いてしまうのです。

人間でも、ちょっとイヤな奴ほど、妙に気になる存在だったりしますし。



さて、今回の展示。

団塊の世代になぞらえ、自らの世代 (昭和40年代)を 「断面の世代」 と名付けた束芋さんが、

自らの世代感と世界観そのものというテーマを、 “断面” という切り口で魅せる美術展。

・・・って、意味はわかるようで、よくわからないです (笑)

そういう方は、 「見ればいいと思うよ。」 とりあえず。


ちなみに、今回の出展作品は、オール新作という、

束芋さんの歴代の個展の中でも、かつてない規模の個展。

それだけに、横浜美術館も、かつてないほど気合いが入っています。


というのも、なんと美術館に入ってすぐに、

束芋さんの映像作品が飛び込んでくるという演出が!

チケットをまだ買っていないのに!

さらに言うならば、この映像作品のために、

美術館全体の照明は、ほぼ全部落とされている状態。

まさに横浜美術館全体で、束芋展を行っているのです。


横浜美術館とはもう3年以上の付き合いなので、

勝手知ったる横浜美術館なのですが。


「えっ、ここ本当に横浜美術館??」


と、何度も疑ってしまったほど。

『大改造!!劇的ビフォーアフター』 もビックリなアフターっぷりです。

星星星
展示されている映像インスタレーション作品もさることながら、

横浜美術館自体が、空間すべてを使った巨大な束芋さんのインスタレーション作品という印象。

“横浜美術館開館20周年記念展” というのは、ダテじゃないです。




どの展示も良かったのですが、一番気になった作品をご紹介。

チラシやポスターにも使われている…


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-団断



団地の様子をテーマにした、

この 《団断》 という映像インスタレーション作品。

説明が上手く伝わるか不安ですが、

3つの画面をコの字型に組み合わせています。

この作品の前に立った観賞者は、

団地の様子を天井から見下ろしている視点になるような仕掛けになっています。

欽ちゃんの仮装大賞では、大賞クラスの作品で見かける仕掛けです (笑)

映像の内容よりも、横から見てるはずなのに、

映像自体は、上から見下ろしているという奇妙な感覚が、癖になりそうでした。

しばらく魅入ってしまいました。

こんな面白い作品を作ってくれた、束芋さん。

だんだん。

(↑愛媛県の方言で 「ありがとう」)





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だんだん。

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