とある畳屋さんがある
昔はよく自転車で
前を走るお母さんの背中をおっかけながら
畳屋さんの前を通り過ぎてた
畳屋さんの前に近付くと
決まっていつもの様に
わたしはペダルを漕ぐペースを落とす
だってね
ふわっと香る 畳の美しい匂い
子供ながらにときめいてた
畳に何かを打ち込むおじさんの横顔に
なにやら神聖なものを感じては
畳の香りで緩んだこころは
ピシッと引き締まる想いがしたものだ
今でも
ときどき通る
あの畳屋の道
でも
畳の香りはもう しない
見渡す風景は
今も変わっていないのに
いったいなにが
変わってしまったんだろう