明治ホールディングス<2269>傘下の製薬会社であるKMバイオロジクス(熊本市)は、開発中の新型コロナウイルス用国産ワクチンの実用化時期を当初予定の 2023年度中から2022年度中に1年前倒しする。
同ワクチンは、ウイルス粒子を薬剤などで、ばらばらの状態にし、感染力や毒性をなくした不活化ワクチンで、同じタイプのインフルエンザワクチンなどで長年の使用実績があるため安全性は高いと見られる。
同社では、安全性などに不安を抱いてワクチン接種を見合わせている人に対して「新たな選択肢を提供することが可能となり、国内のワクチン接種率の向上に大きく寄与できる」としている。
すでに厚生労働省の支援を受けて生産体制を整備しており、2022年4月には完成する見通しという。 国産ワクチンがお目見えする日は着々と近づいているようだ。
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一般的な不活化ワクチンと同程度の安全性
KMバイオロジクスは2021年3月に新型コロナワクチンの第1/2相臨床試験に着手し、9月21日に結果を公表した。
それによると20歳以上65歳未満の105人と、65歳以上の高齢者105人を対象に実施した試験では、日常生活に支障をきたす重度の副反応は、発熱の1件だけで「一般的な不活化ワクチンの想定を超えるものではなかった」という。
さらに、高い安全性が求められる幼児や小児、妊婦に対しても接種できるよう「安全で有効な不活化ワクチンの開発を目指す」としている。
一方、発病を阻止する有効性については「一定の有効性が期待できる結果が得られた」としているものの、具体的な数字は示していない。
同じ不活化タイプのインフルエンザワクチンでは、65歳以上の高齢者で34~55%の発病阻止効果が、6歳未満の小児では60%の発病阻止効果が報告されており、今回の新型コロナワクチンでも同程度の有効性が見込めそうだ。
ちなみに、遺伝情報をもとに体内でウイルスのたんぱく質を作り、このたんぱく質に対する抗体が作られる、モデルナやファイザーのmRNAワクチンの発病阻止効果は94%~95%に達している。
またKMバイオロジクスのほかに国産ワクチの開発に取り組んでいる主な企業は、塩野義製薬(組み換えたんぱくワクチン)、第一三共( mRNAワクチン)、アンジェス( DNAワクチン)、VLPTジャパン( mRNAワクチン)などで、不活化ワクチンタイプはKMバイオロジクスだけだ。
同社では今後、最終段階の第3相臨床試験を開始する準備に入るほか、感染が広がっている変異株(デルタ株)についても、第1/2相臨床試験で採取した臨床検体を用いて薬効評価を行う計画という。
文:M&A Online編集部