ナマステー! *アーティチョークのインド見聞録* -2ページ目

インドの犬

犬
犬:撮影するんやったら、モデル料100ルピーは先払いやで。
犬
犬:インドまで来て野良犬写す人の気がしれんわ。しかし、眠い...。

インド滞在中、一歩外へ出るといやでも目につく動物は牛と犬である。牛はともかく犬の数の多さには驚いた。私は自他共に認める動物好きだが、はっきり言ってインドの犬に関しては、今回のテーマのように“生き物万歳!!”とか「キャー、可愛いい♪」などといって嬉しがっている場合ではない。インドの道端で見かける犬は全てが野良犬だそうで、もちろん狂犬病予防の注射などはしていない。
狂犬病ウィルスは全ての哺乳動物が感染する。インドでは犬に限らず、牛やリスなど噛み付く恐れのある動物には近寄らないほうが身のためである。狂犬病は、咬まれてから発病するまでの潜伏期間が9日から2年。発病率32~46パーセントで、発病したら最後、人間も動物も死亡率100パーセント。その症状は悲惨極まりないという恐ろしい急性脳炎だ。狂犬病によって死亡する人は世界で年間およそ5万人。このうち3万人がインドでの犠牲者だという。(『地球の歩き方-インド-』より)

こんなことを書いている私だが、実はこの『地球の歩き方-インド-』を買って読んだのはインドから帰国してからのこと。狂犬病についても、子供のときに読んだ白土三平の『カムイ外伝』だかなんだかの漫画で初めて知り、その症状の悲惨さが実に生々しく描かれていたことだけをいまだにはっきりと記憶していて、「原因はウィルスで、哺乳動物がかかる死に至る恐ろしい病。」ぐらいの知識はあったものの、インドでそのような事情があるとは『地球の歩き方-インド-』を読むまで全く知らなかった。
インドでは、狂犬病を常に意識しながらも、犬のほか、牛、サル、リス、ヤギの写真を嬉々として撮ってきた私だが、認識不足とはいえ、少々軽率だったかもしれないと反省している。今度インドへ行ったら、もっと注意しながら動物を撮影しようと思う。って、こらこら、ちっとも反省してへんやないか!

インドで見た野良犬たちは、アジア犬の特徴を備えている中型犬。体色は茶色やブチが多く、短毛である。耳は大きめの三角でピンと立っているか途中で寝ているかのどちらかだと思うが、昼間の犬たちはほとんどが道端で寝ていたので、耳の状態がどうだったのかちゃんと確認していない。
たいていは痩せてみすぼらしい犬がほとんどだが、ほどよく肉が付いて健康そうな犬も見かけたから、人に餌をもらえる犬もいるのだろう。犬は道の真ん中以外なら店の前だろうと、ゴミのなかだろうと、どこででも寝ていたし、目的ありげにうろついている犬も見かけたが、犬が人間に追い払われているところは一度も目にしたことがないし、買い物に行ったバザールでは、大またに歩くおじさんの後をちょこまかと一所懸命について歩く子犬たちを見たので、インドの野良犬の全てが不幸というわけでもないようだ。
ただ、昼間に見かけた犬たちのほとんどが道端で寝ているのであるから、夜には起きて活動しているはずだ。なにしろあれだけの数の犬である。インドでは、夜、むやみに外を出歩かないほうが賢明かもしれない。

道端でいやというほど野良犬を見かける一方で、ペットとして家で犬を飼う人はもちろんいて、チャンドゥさんのお宅でもプルートという名前のワンちゃんを飼っておられる。アジア犬の特徴をそなえたインドの野良犬とは違って、プルートは洋犬らしく、カールしたふさふさの毛をした小形犬だ。キッチンの椅子の上が彼の居場所である。大勢でお邪魔したにもかかわらず、プルート君は愛想よく尻尾を振って私たちを歓迎してくれた。体をなでてあげると、無抵抗主義者ガンジーよろしく「もう、どうにでもしてちょ。」状態で腹を見せるところなど、犬が体全体で表す言葉はどこへ行っても世界共通語なのだなあと思って笑ってしまった。
プルート  座敷犬プルート

結婚式はまだ続く(2006年1月24日、午後11時ごろから延々と翌日の午前1時ごろまで)

ここからは花嫁花婿中心の儀式となる。二人が並んで座ると、二人の肩に先ほどの薄く透ける布をまわし掛け、花嫁花婿の頭にキンキラキンの冠を二重にのせ、花嫁の首にも生花で出来たレイを掛けて準備は整った。
儀式

まずお坊さんが花嫁の髪の分け目に、紙の上にとってある赤い粉を銀色の硬貨(のように見えた)ですくって花嫁の髪の分け目あたりに振りかけた。すると雄叫びとほら貝の音がいちだんと高く響きわたった。お坊さんは慎重に振りかけていったのだが、赤い粉が花嫁の鼻の頭に少しかかってしまった。花嫁がもう少しうつむいたほうが良かったのかもしれない。傍にいた女性が花嫁の顔にかかった赤い粉を拭いてくれた。
インドへ来る前に読んでいた西遊旅行のパンフレット「インドへ行こう!」に、髪の分け目を赤く染めるのは“シンドゥール”と呼ばれる既婚女性の印であると書いてあった。“シンドゥール”は、日本でいうところの“お歯黒”の習慣のようなものかもしれない。そういえばインド滞在中、女性が髪の分け目を赤く染めているのを何度か見たことがあった。
赤く染まった花嫁の髪の分け目を見ていると「ああ、よっちゃんは結婚して、とうとうチャンドゥさんの妻になったのだなあ。」という思いで胸がいっぱいになってしまった。
儀式

今度は炉に火が勢いよく燃やされた。二人は、炉で燃える火を見つめながら手を合わせて神妙にしているが、外野のほうは、相変わらずおしゃべりしたり動き回ったりと皆それぞれに自由な雰囲気だ。
儀式

さて次は、インドの人気者、くにちゃんの登場である。
儀式

花嫁花婿は立ち上がると、花婿が花嫁を後ろから両手で抱きかかえるようにする。そうしておいて、くにちゃんから何か白くて細かいものを両手いっぱいに受け取ったよっちゃんは、チャンドゥさんに抱きかかえられながら、それを炉の上にパラパラと振りかけた。あとでよっちゃんに聞いた話によると、この白くて細かいものはお米で出来たお菓子だったらしい。ちょうど日本のポン菓子に似ていて、実際に食べることが出来るということだ。
儀式  両手いっぱいのポン菓子を
儀式  火にくべる

くにちゃんがカゴに入ったポン菓子をよっちゃんの両手に山盛りにすると、受け取ったよっちゃんは、それをパラパラと炉に降りかける。こういう動作を何回か繰り返すうちに、よっちゃんにようやく笑顔が戻ってきた!ポン菓子をばら撒くという、遊びにもつながる身体的動作を繰り返すことによって、よっちゃんの心と体がリラックスしていったのだろう。
儀式  笑顔が戻った
このあと二人は再び並んで座り、炉の炎の前で手を合わせた。火はお坊さんがお祈りをしながら消したようで、今は煙がたくさん上がっている。
儀式

このポン菓子パラパラの儀式のあと、カメラのバッテリーを交換しに部屋へ戻ったのだが、それがいけなかった。部屋へ行って戻ってきたら、ちょうど結婚の儀式の全てが終わったところだったのだ(T_T)
後日、チャンドゥさんの東京出張に一緒についてきて一時帰省したよっちゃんが、我が家へも遊びに来てくれたのだが、そのとき彼女に見せてもらったアルバムに、ポン菓子パラパラ以降の儀式の写真があったので、それを参考にして、簡単に書いておくことにしよう。

花嫁と花婿が座っているすぐ後ろ、天蓋つきの四角いスペースの外で、花嫁の父と花婿の父による儀式が行われた。両家の父は、互いに箱に入ったプレゼントを交換し、生花で出来たレイを互いの首に掛け、互いの額にビンディを付け、それから抱擁をかわした。儀式のひとつで、花嫁の母が座っている花婿に何かをしている写真もあったが、何をしているのかは分からなかった。
(*花婿の父と花嫁の母は儀式に参加しないと2月24日の記事に書きましたが、私はこの儀式を見ていなかったため、そのように思いこんでおりました。ここに訂正してお詫びいたします。)

それから、そのあとに楽しいゲームも行われたそうである。そのゲームとは、なんと、夫婦でどちらが財産を握る権利を得るかを決めるというものなのだそうだ。
ええっ!?そんな面白いゲームを見逃してしまったとは、私はなんちゅうアホなんだろうか!それにしても結婚式の途中で切れてしまうなんて、バッテリーのバカーッ!とここで叫んでも仕方がないので(笑)、よっちゃんに聞いておいたゲームのルールと、ゲームが行われたときの様子をかんたんに書いておこう。

ルールは、夫婦のうち一人が片手に貝がらをしっかりと握っておいて、もう一人が相手の手に握られた貝殻を片手だけを使って奪い取るというもの。貝を奪うことが出来れば財産を握る権利を得る。そうでなければ、財産は相手が握ることになるという、スリル満点(?)のゲームなのだ。

さて、チャンドゥさんはもちろん頑張ったのだが、よっちゃんの手に握られた貝をどうしても奪い取ることができなかったらしい。よっちゃんがチャンドゥさんの握った貝を奪う番になると、外野のインド勢が「ネイル!ネイル!」(爪を使え!)と言って応援してくれたとのことで、ゲームはやんややんやの大騒ぎとなり、そうとうに盛り上がったらしい。握った手に爪をたてられ、痛さにたまりかねたチャンドゥさんが手をゆるめた隙に、よっちゃんが指をこじ開けて貝を奪い取ったとのことだ。う~む、よっちゃんがチャンドゥさんの手にキイーッ爪をたてて貝殻を奪うところ、見たかったなー。残念!!
このゲームは後日、機会あるごとに何度か繰り返して行われたらしいのだが、その度によっちゃんが勝ってしまったということである。恐るべし、新妻の爪!!

さあ、チャンドゥさん、ここは男らしく諦めて、財産は全てよっちゃんに預けてしまいなさいね(笑)
ここで一句。
「新妻の爪に財布の紐切られ」(アーティチョーク)
いやいや、この段落は冗談(^▽^;)

ゲームで、貝殻を財産にみたてて奪い合うというのは納得だ。私の記憶違いでなければ、貝は古代の中国、インド等でお金として使われていたからだ。
だが、このゲームも伝統的儀式のうちのひとつなのだろうか?それとも近年になって行われるようになったお遊びに過ぎないのだろうか?この地方に独特のゲームなのか、それともインド全土にわたって行われているのか?と疑問はつきないのだが、それにしても結婚式の終わりに、このようにエキサイティングで楽しい余興をもってくるところは、さすが大陸的というか、おおらかというか、なんとも面白く興味深いことだなあと思った。

さあ、これで長かった結婚式の全ての儀式が終わった。夜中を回り、翌日の25日になってしまった。今はもう午前1時を過ぎている。結婚式を終えた花嫁と花婿は、今度は二人そろって花嫁の控え室へ入った。並んで座った二人は、無事に結婚式を終えることが出来たので、今はリラックスして笑っている。
昨日は朝からずっと儀式があり、結婚式の準備や、パレードなどが正味2時間の結婚式の前に行われている。よっちゃんが見せてくれたアルバムには、花婿の家で行われた儀式の写真があった。やはりお坊さんが取り仕切るヒンドゥー教の儀式である。そのなかには、上半身裸のチャンドゥさんが、親戚の熟年女性5~6人に囲まれて、何やら黄色いもの(ターメリックだろうか?)を体中に塗りたくられていたり、頭から水(?)を振りかけられているという、ちょっぴりユーモラスなものもあった。そのような訳で、今日は朝から一日がかりだったし、2時間という長い結婚式のあいだ緊張が続いたことで新郎新婦ともに大変だったに違いない。よっちゃん、チャンドゥさん、お疲れ様でした。結婚式が無事にすんでよかったね。
チャンドゥさんの妹ラヌさんと、チャンドゥさんのお兄さんの子供さんが一緒に写真に納まってくれて、よっちゃんのほっぺにチュッとキスをしてくれた。子供は無邪気で可愛いなぁ!
チュッ♪  チュッ♪
大きな目!  大きなお目々!!
結婚式が終わったあとは、新郎はいったん家へ戻ることになっているらしい。そして、朝になったら、このホテルへ迎えに来て、新婦を家へ連れて行くことになっているということだ。インドの結婚式はそういう決まりになっているらしい。これもまた、ヒンドゥー教のしきたりなのだろう。このあとは、新妻が花婿側のお迎えを待つだけということなので、私たちも失礼することにした。

結婚式はさらに続く(2006年1月24日、午後11時から延々と...)

さて、今度は花嫁の妹さとちゃんの登場だ。さとちゃんは、まず花嫁花婿の前に座り、お坊さんから受け取った花びらを二人の手の上に降りかけてから、ろうそくの火が灯ったお皿を二人の手の上でぐるぐる回した。
儀式  花びらを降りかける
儀式  ろうそくぐるぐる
ところで、さとちゃんには、この儀式における最も重要な任務が与えられていた。それは、花のレイでぐるぐる巻きにされた花嫁と花婿の手を解いてあげるというものだ。ただし、二人の手を解くには条件があって、花婿はさとちゃんが望むものをひとつ与えなければならないことになっている。たとえそれが何であろうともだ(そういうふうに聞いている)。でないと二人の手は永遠に解いてもらえないことになり、儀式はいつまでたっても終わらず、われわれもこの場から離れられなくなって、日本へも帰れなくなってしまうかもしれないのだ。それは、ちょっと困る。
さとちゃん、分かってるね?自分の欲しいものを、何でも、ひとつだけ要求することが出来るのだよ。ええな~、さとちゃん。なんなら私が代わってあげてもかめへんでー(^_^;)
さあ、さとちゃん、君の欲しいものとは一体なんなのだ?!金か?車か?インド人のイケメンボーイフレンドか?!

外野がだんだん賑やかになってきた。さとちゃんに向かってみんなが口々に何やら言っている。スシさんんが冗談のように「なんびゃくまんえん?」と言い、誰かが「ワンルピー?」などと言ったりして、あたりは楽しげな笑いに包まれる。「いや、お金ならルピーじゃなくて、ドルでないと。」だの「トゥーサウザンドダラーズでどうだ?」だの「お姉さんを永遠に幸せにしてくださいっていうのが一番いいんじゃないの?」だのといった声が飛び交って、あたりはますます賑やかになった。
実は、さとちゃんはしばらく前から体調を崩しており、このときは何も考えてきていなかったらしい。外野にあれやこれや、いろんなことを矢継ぎ早に言われたので、さとちゃんはどう答えていいのか分からなくなってしまったようだ。ああ...これでは二人の手は永遠に解かれることはない。私たち、このまま日本へ帰ることが出来ないのだろうか?

さとちゃんがなかなか答えられないでいるので、どうなることかと思っていると、彼女の手に何かがのせられ、スシさんが「That's your gift.」と言った。赤い小さな箱だ。さとちゃんはびっくりして「えっ?えっ?」という感じでみんなをきょろきょろ見回している。開けてみるように言われてさとちゃんが蓋を開けると、大きくて綺麗なピアスが入っていた。ずっしりと重そうなキラキラ光る金のピアスである。スシさんが「ピアスはする?」と訊くと、さとちゃんは嬉しそうに頷き、このピアスが気に入ったようだったので、スシさんは「じゃ、良かった。」と言った。
儀式  金のピアスだ!

さとちゃんは立ち上がり、二人の手をぐるぐる巻きにしている花のレイをゆっくりと解いた。
新郎新婦の両手をほどく  二人の手を解いてあげる
はぁ~~、これで日本へ帰れる(笑)
そして、結婚式はまだまだ続く。

結婚式は続く(2006年1月24日、午後11時から延々と...)

花嫁がいったん控え室へ戻り、しばらくすると、頭に冠をのせた花婿が登場して花嫁の父の隣に座った。花婿のいでたちで面白いと思ったのは、田植えのときの早苗にそっくりな緑色の草の束を右腕にくくり付けていたことである。これまでの儀式に米が使われていたことを考えると、あれは本当に早苗だったのかもしれない。花婿はさほど緊張しておらず笑顔を見せたりするが、花嫁の父は依然緊張の面持ちを崩さないままだ。

花婿と花嫁の父

続いて登場した花嫁は鮮やかな黄色いサリーに着替えていた。花嫁の右腕にも早苗にそっくりな緑の草が巻かれている。楽士によるにぎやかな演奏が始まって笛や太鼓の音があたりに響き渡り、ほら貝が鳴らされ、あのアメリカ先住民の雄叫びのような声がして、結婚の儀式はいよいよクライマックスを迎えようとしていた。

まずお坊さんの指示に従い、花嫁の父は、右手に白い巻貝を持ち、左手を花嫁の右肩に置いて、そのままの状態でしばらくじっとしている。もちろん、お坊さんはそのあいだもずっとお祈りを続けている。儀式のあいだは、けっこう外野のおしゃべりや楽しげな笑い声が賑やかで、お坊さんと外野のやりとりなどもあり、儀式そのものはけっして厳粛という雰囲気ではないのだが、花嫁と父の表情は神妙そのものである。

儀式

つぎに、お坊さんにうながされて、花嫁の父が花嫁の右手を取って、その手を花婿の右の掌の上に重ねた。ここで、アメリカ先住民の雄叫びのような声がいっそう激しくなり、ほら貝が吹き鳴らされた。そうするともう一人のお坊さんが、花嫁と花婿の手をきれいな花で出来たレイでぐるぐる巻きにした。お坊さんの言葉が分からないので、スシさんの通訳によるサポートを受けながら、花嫁の父が何かお祈りのようなものを唱えて、お坊さんから受け取った草花のようなものを二人の結ばれた手の上に降りかける。そのあと傍に控えていた花婿の父も同じことをしたようだ。またもや雄叫びとほら貝の音があたりに響き渡る。お坊さんが薄く透ける長い布を花嫁と花婿の肩に橋渡しをするように掛けて、その結び目がちょうど重ねられた二人の手の上にくるようにすると、花嫁の父はその場を離れた。

儀式


儀式

ここまで結婚の儀式を見ていて感じたのだが、インドの結婚式には父と娘の離別を象徴するかのようなところがあって大変に興味深い。以前にも書いたが、花婿の母はパレードに参加せず、結婚式にも来ないという決まりになっている。また結婚の儀式には、花嫁、花婿、花嫁の父、そして(よっちゃんの場合は)花嫁の弟と妹(花嫁の最も血縁の濃い未婚の男女で、花嫁よりも年下の者)しか登場せず、花嫁の母、花婿の父等そのほかの者たちは傍らでその進行を見守るだけである。
インドの、あるいはヒンドゥー教徒における家族のあり方や家族制度について私は何ひとつ知らない。また、結婚式のあいだじゅう途切れることなくお坊さんがあげているヒンドゥー教の祈りがどのような内容なのかが気になるところだが、それを別にしても、このように父と娘を中心に進行するインドの結婚の儀式には、何かしら深い意味が込められているような感じがする。


これに比べると、われわれ日本人におなじみの(神式の)結婚式は拍子抜けするほどあっさりしたものだ。だが、式のあとの披露宴で感極まって落涙する日本のお父さんがいることを考えると、こういったインドの結婚式が花嫁の父の涙腺を大いに刺激するであろうことは想像に難くない。インド人とか日本人に関係なく、愛娘を嫁がせる父親の複雑な気持ちというものはおそらく世界共通であろう(と私は勝手に想像している)。インドの結婚式は、そういった父親の気持ちをも象徴しており、儀式そのものが、まるで父親の気持ちを代弁しているかのように思えて面白いと感じると同時に、とても感動的だなあと思った。

夜中を過ぎて、すでに翌日になってしまったが、結婚式はまだまだ続く。

結婚の儀式が始まった(2006年1月24日、午後11時ごろから延々と...)

ホテルMAYFAIR LAGOONの広場の中央に設置された、絨毯敷きで天蓋付きの四角いスペースにお坊さんがいて、儀式のお供えや火を焚く四角い炉が置かれ、そこに花嫁の父が座ると、お坊さんは父の指に、藁のような植物で出来た指輪をはめた。
赤いサリーを着て、きらびやかな金糸のヴェールをまとった花嫁が登場すると、楽士の演奏が始まり、ほら貝が鳴らされて、長い長い結婚の儀式が始まった。親戚の者たちはその周りを囲むようにして椅子に座り、儀式を見守る。
天蓋付きのステージ

お坊さんを前にして並んで座った花嫁と花嫁の父は、揃ってひどく神妙な面持ちである。先ほどの花嫁のあの輝くような笑顔はどこへいってしまったのだろう。私は、よっちゃんと、よっちゃんのお父さんのこんな真剣な表情を見たのは初めてである。いつも穏やかでにこやかな表情をしている二人なのだ。二人が大変に緊張しているのは間違いない。が、私は二人の表情を拝見してこう思った。結婚式に臨むにあたり、娘として、これまで慈しんで自分を育ててくれた父を想う。同じく、父として、可愛い娘の将来を想う。その二人の心中を察するに、この状況で父と娘がにこやかに笑うことは難しいのであろうと。
儀式

お坊さんは、まず花嫁の指にも藁のような植物で出来た指輪をはめた。お坊さんが花嫁の父に次から次へと花びらだの木の実だのを手渡すと、おぼうさんの指示通りそれをお供えに降りかけたり、炉にくべたりする。おぼうさんはそのあいだにも絶えずお祈りを唱えながら、花びらをむしってはお供えに降りかけたり、金色のスプーンですくった水を降りかけたり、両手を使っていろんなしぐさをしたりと実に様々な動作を連続して行なう。しばらくはこういった儀式が続くが、二人の神妙な表情は全く変わらない。
儀式
つぎにお坊さんは、花嫁の右手に何か小さな物を握らせておいてから、金色の壺のうえにココナツのような木の実をのせて、その上に花嫁の握った右手をのせた。つぎにお坊さんが花嫁の父の右手中指に何かを塗りつけると、父はお坊さんの指示に従って花嫁の右腕を一周するように中指についたものをぐるりと塗りつけた。それがすむとお坊さんは花嫁の右手をココナツから離し、花嫁の父の手に何かをのせ、それを目の前のお皿にのった葉っぱに降りかけるよう指示した。
そういった一連の動作がすむと、お坊さんが花嫁の父に何かで包んだ植物を手渡し、それを花嫁の額にくっつけるように指示した。それがすむと、お坊さんは再び金色の壺のうえにココナツのような木の実をのせて、その上に花嫁の右手をのせ、父の右手中指に何か黄色いものを塗りつけると、それを花嫁の右腕に塗るようにうながした。
儀式
それがすむとお坊さんは、草などの入った金色のスプーンを花嫁の父の左手にのせ、さらに右手で蓋をするように指示した。お坊さんはひとしきりいろんな動作をすると、父にスプーンの中身を空けさせてから両手に花びらをのせ、祈り、降りかけるようにうながした。
儀式

幼い子供(チャンドゥさんのお兄さんの子供?)が可愛らしい声で何かを叫んだときによっちゃんがそちらを向いて少し笑顔を見せただけで、儀式の最中、花嫁とその父の神妙な表情は最後までゆるむことがなかった。なにしろ初めてヒンドゥー教の儀式を体験するのだから、それもいたしかたのない事である。二人はお坊さんの指示通りに儀式をちゃんとやり遂げようと一所懸命だったに違いない。
花嫁とその父による儀式が終わると、父はその場に残り、花嫁はいったん控え室へと戻っていった。

花婿到着!(2006年1月24日午後10時ごろ)

午後10時ごろになってようやくパレードがホテルに到着。ゲートに控えていた楽士が例の賑やかな音楽を演奏し始めた。よっちゃんの仮の家で演奏していたあの変則トリオである。どこからかほら貝の音も聴こえてくる。あたりは急に賑やかになってきた。

ボディ全体を生花で飾りつけした花婿の自動車が到着すると、お坊さん、よっちゃんのお父さん、くにちゃんが花婿を出迎える。
現代の花婿は自動車に乗ってやって来ることが多いようだが、街中では昼間、人が担いだ輿に乗った花婿を一度だけ見かけた。チャンドゥさんの友人のスシさんが結婚した時などは、花婿のスシさんは白馬に乗ってパレードしたということだ。昔なら、像に乗ったりもしたことだろう。

自動車を降りる前に、よっちゃんのお父さんがチャンドゥさんのおでこに指で触れた。これも儀式のうちなのだろう。
花婿到着   花婿到着!

くにちゃんが花婿を持ち上げて、少し運んでから会場へ続く廊下へ下ろす。柔道部に入っているくにちゃんの“力持ち”が、まさかインドの結婚式という晴れの舞台で、このような形で役立つことがあろうとは、誰に予想出来ただろう!そして、花婿をかつぐことにはどんな意味があるのだろう?!
花婿を担ぐ   ヨイショッ!

花婿のあとに続き、大勢の花婿側御一行様がぞろぞろと歩いて行く。花婿の兄のチャヌさんは「道中ずっと踊りっぱなしで汗をかいてしまったよ、ほら!」といって楽しそうに自分の背中を見せた。見るとお兄さんのパージャーマーの背中は本当に汗でぐっしょりである。花婿は花嫁の父と並んで廊下を進み、まっすぐ花婿用の控え室へと入って行った。
花婿と花嫁の父   花嫁の父は緊張ぎみ
晴れ晴れとした笑顔を浮かべて控え室の椅子に座った花婿は、白いクルター&パージャーマーにストールといういでたち。生花で出来た首飾りをつけ、額には儀式用の化粧が施されている。さっそく花婿のチャンドゥさんは、専属のカメラマンや親戚の人たちのカメラによるフラッシュ攻撃を受けていた。
花婿の部屋で   笑顔の花婿
花嫁よっちゃんの様子を見に、夫と二人でもう一度控え室へ行ってみると、花嫁のまわりにはすでに大勢の人垣が出来ていた。さらに、花嫁を一目見ようとする人々が次から次へと入れ替わり立ち代り入って来て、カメラで撮影するやら、花嫁に話しかけるやら、花嫁と一緒に記念撮影するやらで、控え室は大賑わいである。
花嫁の部屋   花嫁を人目見ようとする人々

さて、これから始まるインドの結婚式は、長い。めっちゃ長いのだ。私たちもホールで腹ごしらえをすることにした。
ホールはあふれんばかりのインド人でごった返していた。これ全部、花婿側の人なのだろうか?おそらくパレードの途中で通りがかりの人も巻き込んできたのだろうと誰かが言っていた。そうなのかもしれない。おめでたい結婚式なのだから、祝ってくれる人なら誰でも歓迎することになっているのだろう。

ホール内には静かな感じのインド音楽が流れていた。ずらりと並んだ料理のテーブルに沿って進みながら、給仕係に好みの料理をよそってもらう。
花嫁に会ってお祝いを述べ、ご馳走をいただいたら、三々五々、帰ってよいことになっているらしく、しばらくするうちに、あんなに大勢いた花婿側の人たちもいなくなり、いつのまにか両家の親族や身内だけとなった。

当初、結婚の儀式の始まりは午後9時ということになっていたと思うが、すでに11時になろうとしていた。良い子の皆さんならとっくにおねんねの時間である。
いよいよこれから、ヒンドゥー教に則った、夜を徹する長い長い結婚の儀式が始まる。

花婿のパレードがやって来た!!(2006年1月24日、午後9時ごろから延々と...)

表へ出てから40分以上は待っただろうか。ようやく遠くの方にパレードらしきものが見えてきた。イルミネーションだ!音楽も聴こえる!ディズニーランドのエレクトリカルパレード縮小版みたいな感じがしないでもない。近づいて来るうちに、時おり花火も揚がっているのが分かるようになった。だが、パレードの歩みは遅々としていて、ホテルの入り口へ到着するにはまだまだそうとうな時間が掛かりそうである。ついに待ちきれなくなった人たちが何人かパレードのほうへ向かって歩き始めたようだ。

しばらくすると、パレードを見てきた若い女性たちが楽しそうに帰ってきて、「ご主人がパレードの踊りの中へ引っ張り込まれてしまいましたよ!」と報告してくれた。あらら~、だいじょうぶだろうか?私は夫が踊っている姿などこれまで一度も見たことがない。第一に夫は踊れるんだろうか(笑)「こら写真撮っとかな!」と私もパレード目指して早足で歩き始めた。
夜だというのにけっこうな交通量である。自動車、バイク、人々が行きかう中をパレードのほうへ近づいてゆくと、見えてきた!

キンキラキンのイルミネーションが乗ったリクシャーを音楽に合わせて体を動かしながらノリノリでペダルこいでるおじさんを先頭に、発電機を乗せたリクシャー、それからたくさんの山車がこれまたリクシャーに引かれて続いて行く。

花婿のパレード

パレードの歩みはゆっくりで、ときおりその歩みが完全に止まってしまう。するとおもむろにパレードのまん前で花火を揚げるのだ。花火が完全に消えてしまってから、ほな、ぼちぼち行きまひょかという感じでパレードは再び進んで行く。こんな調子だから、ホテルへたどりつくのにそうとうな時間が掛かるのも無理はないのである。

花火を揚げる

山車にはエレクトリックギターのおじさん、ドラム奏者、キーボード(?)を操る人などが乗っており、歌が聴こえていたのでヴォーカリストもどこかにいるはずである。そのほか、イルミネーションを頭に乗せた人々が大勢歩いていたし、サックスを吹いてるおじさん、金属製のマラカスを振ってるお兄ちゃん、タンバリンを叩く若者やらが歩いており、そのすぐ近くに踊りの輪が出来ているようなのだが、ちょうどそこだけが大勢の見物人に遮られてしまって見えない!一瞬♪踊る阿呆に見る阿呆♪という阿波踊りの一節が私の頭をよぎったが、そんなことを考えている場合ではないのだ。
パレード
パレード
踊っている私の夫はどこ?どこなのーっ?!と背伸びしながら探すのだが、大勢の人垣が遮ってしまっている。しかもこの交通量である。横断するのは危険なように思えてパレードのほうへ近づくことさえ出来ない。
踊りの輪の後方には大勢の老若男女がそぞろ歩きしていて、顔見知りの親戚の人たちの姿も見える。う~む、この人たち全部、花婿の親戚とか友人とか実家のご近所の人とかそういう人たちなんだろうか?ずいぶん大勢である。
それにしてもこの耳をつんざくような大音量の賑やかな音楽はどうだ!近所迷惑なんじゃないのかっ?!と思ってしまうのだが、なーに、インドではこれが普通なのにちがいない、きっと(^▽^;)

夫が踊っている場面を狙ってカメラ片手にパレードの近くをしばらくウロチョロしてみたのだが、けっきょくそれもかなわず、諦めていったんもとの場所へ戻って行った。夫が踊ってるとこ、撮影しときたかったなー。残念!

結婚式が始まる(2006年1月24日、午後7時から延々と...)

結婚式会場となる広場はホテルMAYFAIR LAGOONの建物の間にあり、屋根はないが、かなりの広さである。中央には儀式を行なうための天蓋付きの四角いスペースが一段高く設けられ、花々や布で飾りつけがしてある。まわりの建物には花嫁と花婿の控え室が別々に用意されており、結婚式に訪れた人たちが食事をする大きなホールがあった。

添乗員のKさんに聞いた話だが、花婿側の一団が花嫁の待つ結婚式場へやって来て式を挙げるいうのがインドの結婚式の決まりなのだそうだ。で、我々の場合、花婿とその家族、親族、友人などの団体がどうやってここまでやって来るかというと、大通りからこのホテルまで300メートルほどの距離を隊列を組んで、楽団を引き連れ、踊りながら、練り歩いて来ることになっているらしい。ただし、花婿の母は結婚式には出席しないものと決まっているらしく、パレードにも参加しないのだそうだ。ええっ、なぜだ!?ダンスが苦手だから?いや、そんな訳はないか(*^^*ゞ
こういった花婿のパレードというのはインドでは普通のことだそうで、街をタクシーで走っていると、昼夜を問わず、花婿のパレードに何度も遭遇した。インドでは、過ごしやすい冬が結婚シーズンなのだそうだ。

夫と一緒に花嫁の控え室を覗いてみると、よっちゃんがいた!

金糸を施した赤いヴェールをまとい、金のネックレスや腕輪やイヤリングをいっぱいつけた花嫁姿のよっちゃんは凄く輝いて見える!生花や透ける布を使って、綺麗に飾り付けがしてある壁を背にしてマットレスのようなふわふわの敷物の上に座っている彼女は、まるでインド版お雛さんみたいだ。彼女が輝いて見えたのは、なにも身に着けているたくさんの装飾品やきらびやかな衣装のせいではない。はちきれんばかりの笑顔で白い歯を見せ、ニコニコと嬉しそうに笑っている彼女は、実に生き生きとして幸せそうである。


花嫁  この笑顔!
花嫁  お雛さんみたい!
花嫁  幸せそう

家族で  家族一緒に

親戚の子供たちと  親戚の子供たちと一緒に

よっちゃんに聞いた話だが、花嫁は今から一切の食事をしてはならず、お手洗いに行くことも出来ないらしい。控え室ではじっと座ったまま、花婿側が到着するのを待たねばならないのだ。結婚の儀式は午後9時から始まるが、それも夜通しになるということで、もちろんそのあいだも食事は出来ない。また、花婿は到着しても花嫁のところへは行かず、まっすぐ自分の控え室へ入る。花婿と花嫁は結婚式が始まるまでそれぞれの控え室で座って待ちながら、入れ替わり立ち代りやって来る大勢の人々に晴れ姿を披露するのである。
う~む、花婿のパレードといい、飲食抜きで夜通し行なわれる儀式といい、インドで結婚式を挙げようと思ったら、花嫁花婿にはそうとうな忍耐力と体力がいりそうである。

会場の入り口には英語で書かれた「よっちゃんがチャンドゥと結婚」という看板が出され、ゲートにはたくさんの生花やリボンで飾りつけがなされ、生花で出来た長いレイがたくさん吊り下げられている。
花婿のパレードが到着したら、花嫁側は赤いバラの花を一輪、一人一人に手渡すことになっていて、クリケットのチームメイトの若き女性陣にそのお役が回された。そういえば、今日、儀式見学のためチャンドゥさんの実家へうかがったときにも、全員が赤いバラの花を一輪いただいた。この花には「あなたを歓迎します」との意味が込められているとのことだった。

ホテルを出たところで、花婿のパレードが到着するのを今か今かと首を長くして待つのだが、いっこうにそれらしきものが見えてこない。が、こんなことで今からあせってもしかたがない。何しろここは悠久の時が流れているインド共和国なのだ。添乗員のKさんによると、花婿のパレードが近づいてきたら大音量の音楽と派手な飾りですぐにそれと分かるそうだ。いや~、なんやしらん、わくわくしてきたぞー!

パンジャービードレスとクルター&パージャーマー(2006年1月24日、夜)

私と夫は、チャンドゥさんのご両親から贈られたインドの民族衣装を今夜の結婚式で着ることにした。今回インドを訪れた親戚の全員が衣装を贈られている。

私のは、深いグリーンに金糸銀糸の織りが入り、腰の辺りまで深いスリットのある上着、無地でネイヴィーブルーのズボン、上着と同じ織りの入った生地で房のついた幅の広いストールというパンジャービードレス。ズボンはゆったりしたウェストを紐で調節するようになっている。丈が非常に長くて裾は細く足首のところはホックで留めるようになっているので、余ったのは足首のあたりでくしゃくしゃにしておいてよいのだそうだ。
細く上質の綿糸で出来た薄い生地は、暑いインドの気候に合っているのだろう。綺麗な色柄でとても気に入った(が、似合っていたかどうかは内緒)。ストールは幅が広く長かったので、縦に屏風だたみにしてから肩にぐるりと掛けて、スリーゴールドのロングネックレス(インド人は金が好きらしい)をつけた。

パンジャビースーツの上着
女性用は上半身が細身に出来ている

ストール
ストールは広げてみると凄く大きいのだ

クルター&パージャマー
男性用はゆったりした作りでスリットもあるが
ストールはついていなかった

夫のは、襟と前立ての部分に繊細な刺繍が施されたボルドー色の上着に、白のズボン。これはクルター&パージャーマーと呼ばれるものだそうだ。

と、突然「ええーっ?なんや、これーっ!?」と、着替えの最中に夫が素っ頓狂な大声を上げた。このおめでたい日に一体何事か?

夫が手にしているズボンを見てびっくりした。ウェストの幅がめっちゃ大きい...大きすぎる!!
そのとたん爆笑してしまい、ゲラゲラといつまでも笑い転げる私(豪傑笑いです)。広げたズボンを持ったまま、困惑の表情を浮かべて立ち尽くす夫。それ見て、さらに笑い転げる妻。
夫がいつまでもズボンを持ったまま、困ったような顔して突っ立っているので、私はヒーヒーいいながらもようやく夫に説明した。ウェストは紐で調節して着るのだよと。

我に返った夫は「あ、そうかー。なるほどね。」と言って、ようやく着替え始めるのだった(;^_^A
男性用のクルター&パージャーマーは、上着とズボンの腰のあたりがゆったりして風通しは抜群のようだ。男性用ズボンも丈が非常に長い。夫はとても気に入ったようで、後日の観光にも普段着用を着て行った。
クルター&パージャマーのズボン
私を爆笑させた男性用ズボン

午後7時にホテルのロビーに集合すると、皆さんそれぞれにインドの民族衣装がよく似合っているではないか。若い女性陣のパンジャービースーツは、色もデザインも様々だが、一人一人の個性に合っていて、皆さん本当にステキに着こなしているなぁと思った。さすが女性陣は華やかー!!聞くと、チャンドゥさんの妹さんのラヌさんが一人一人に合わせて見立ててくださったという。うーむ、納得!だが、ここでお見せ出来る写真が一枚も無くて申し訳ない(T_T) (披露宴では登場の予定)

男性陣のほうも、異国の大臣ふう(よっちゃんの大叔父Nさん)あり、髭をはやした悪徳商人ふう(私の夫)あり、インドの王子様ふう(若い男性)ありと、これはこれでなかなか素晴らしい。
よっちゃんのお母さんとよっちゃんの大叔母Nさんは着物姿。よっちゃんのお父さんは結婚の儀式に参加するので、刺繍の入った白いクルター&パージャーマーにストールである。

いよいよ全員で今夜の結婚式会場となる広場へと向かった。

花嫁を迎えに行く(2006年1月24日、午後)

いったんホテルに帰ると、仮の家にいるよっちゃんを迎えに行くから一緒に来てくれないかとよっちゃんのお母さんからお呼びが掛かった。理由は分からないが、この場合、女性三人で花嫁を迎えに行かなくてはならないそうだ。ヒンドゥー教の結婚式には、これに限らず、いろいろと細かな決まりごとがあるようなのである。若い女性陣は全員、今夜の結婚式に着るパンジャービードレスを買いに出かけたため、ホテルにいる女性は、よっちゃんのお母さんとよっちゃんの大叔母Nさんと私だけ。ちょうど三人いて良かった。そこで、この熟年女性三人組でよっちゃんを迎えに行くことにした。

仮の家に到着すると、よっちゃんは足に化粧をしてもらっている最中だった。くにちゃんのときと同じ赤い染料で、女性がよっちゃんの足に太い線を描いてゆく。よっちゃんの足には、手と同じようなメヘンディが施されているのに、その時になって気づいた。


足に化粧をしてもらう
足に化粧をしてもらうよっちゃん

足の化粧が終わると、新しいサリーに着替え、ネックレスなどの装飾品をつけ、女性がよっちゃんの両手にお米を山盛りにすると、この家を出る準備が出来た。

花嫁が家を出る
女性たちに付き添われ、家を出る

くにちゃんがこの家を出発するときにもそうしていたが、両手に山盛りにされるお米には一体どういう意味があるのだろう。意味は分からないけれど、面白いと思った。私たちは全員タクシーに分乗し、ホテルへ帰った。

今夜の結婚式のため、午後7時にホテルのロビーに全員集合することになっている。夜どうし行なわれるという結婚式に備えて、私はホテルのお部屋で一休みすることにした。