結婚式はまだ続く(2006年1月24日、午後11時ごろから延々と翌日の午前1時ごろまで) | ナマステー! *アーティチョークのインド見聞録*

結婚式はまだ続く(2006年1月24日、午後11時ごろから延々と翌日の午前1時ごろまで)

ここからは花嫁花婿中心の儀式となる。二人が並んで座ると、二人の肩に先ほどの薄く透ける布をまわし掛け、花嫁花婿の頭にキンキラキンの冠を二重にのせ、花嫁の首にも生花で出来たレイを掛けて準備は整った。
儀式

まずお坊さんが花嫁の髪の分け目に、紙の上にとってある赤い粉を銀色の硬貨(のように見えた)ですくって花嫁の髪の分け目あたりに振りかけた。すると雄叫びとほら貝の音がいちだんと高く響きわたった。お坊さんは慎重に振りかけていったのだが、赤い粉が花嫁の鼻の頭に少しかかってしまった。花嫁がもう少しうつむいたほうが良かったのかもしれない。傍にいた女性が花嫁の顔にかかった赤い粉を拭いてくれた。
インドへ来る前に読んでいた西遊旅行のパンフレット「インドへ行こう!」に、髪の分け目を赤く染めるのは“シンドゥール”と呼ばれる既婚女性の印であると書いてあった。“シンドゥール”は、日本でいうところの“お歯黒”の習慣のようなものかもしれない。そういえばインド滞在中、女性が髪の分け目を赤く染めているのを何度か見たことがあった。
赤く染まった花嫁の髪の分け目を見ていると「ああ、よっちゃんは結婚して、とうとうチャンドゥさんの妻になったのだなあ。」という思いで胸がいっぱいになってしまった。
儀式

今度は炉に火が勢いよく燃やされた。二人は、炉で燃える火を見つめながら手を合わせて神妙にしているが、外野のほうは、相変わらずおしゃべりしたり動き回ったりと皆それぞれに自由な雰囲気だ。
儀式

さて次は、インドの人気者、くにちゃんの登場である。
儀式

花嫁花婿は立ち上がると、花婿が花嫁を後ろから両手で抱きかかえるようにする。そうしておいて、くにちゃんから何か白くて細かいものを両手いっぱいに受け取ったよっちゃんは、チャンドゥさんに抱きかかえられながら、それを炉の上にパラパラと振りかけた。あとでよっちゃんに聞いた話によると、この白くて細かいものはお米で出来たお菓子だったらしい。ちょうど日本のポン菓子に似ていて、実際に食べることが出来るということだ。
儀式  両手いっぱいのポン菓子を
儀式  火にくべる

くにちゃんがカゴに入ったポン菓子をよっちゃんの両手に山盛りにすると、受け取ったよっちゃんは、それをパラパラと炉に降りかける。こういう動作を何回か繰り返すうちに、よっちゃんにようやく笑顔が戻ってきた!ポン菓子をばら撒くという、遊びにもつながる身体的動作を繰り返すことによって、よっちゃんの心と体がリラックスしていったのだろう。
儀式  笑顔が戻った
このあと二人は再び並んで座り、炉の炎の前で手を合わせた。火はお坊さんがお祈りをしながら消したようで、今は煙がたくさん上がっている。
儀式

このポン菓子パラパラの儀式のあと、カメラのバッテリーを交換しに部屋へ戻ったのだが、それがいけなかった。部屋へ行って戻ってきたら、ちょうど結婚の儀式の全てが終わったところだったのだ(T_T)
後日、チャンドゥさんの東京出張に一緒についてきて一時帰省したよっちゃんが、我が家へも遊びに来てくれたのだが、そのとき彼女に見せてもらったアルバムに、ポン菓子パラパラ以降の儀式の写真があったので、それを参考にして、簡単に書いておくことにしよう。

花嫁と花婿が座っているすぐ後ろ、天蓋つきの四角いスペースの外で、花嫁の父と花婿の父による儀式が行われた。両家の父は、互いに箱に入ったプレゼントを交換し、生花で出来たレイを互いの首に掛け、互いの額にビンディを付け、それから抱擁をかわした。儀式のひとつで、花嫁の母が座っている花婿に何かをしている写真もあったが、何をしているのかは分からなかった。
(*花婿の父と花嫁の母は儀式に参加しないと2月24日の記事に書きましたが、私はこの儀式を見ていなかったため、そのように思いこんでおりました。ここに訂正してお詫びいたします。)

それから、そのあとに楽しいゲームも行われたそうである。そのゲームとは、なんと、夫婦でどちらが財産を握る権利を得るかを決めるというものなのだそうだ。
ええっ!?そんな面白いゲームを見逃してしまったとは、私はなんちゅうアホなんだろうか!それにしても結婚式の途中で切れてしまうなんて、バッテリーのバカーッ!とここで叫んでも仕方がないので(笑)、よっちゃんに聞いておいたゲームのルールと、ゲームが行われたときの様子をかんたんに書いておこう。

ルールは、夫婦のうち一人が片手に貝がらをしっかりと握っておいて、もう一人が相手の手に握られた貝殻を片手だけを使って奪い取るというもの。貝を奪うことが出来れば財産を握る権利を得る。そうでなければ、財産は相手が握ることになるという、スリル満点(?)のゲームなのだ。

さて、チャンドゥさんはもちろん頑張ったのだが、よっちゃんの手に握られた貝をどうしても奪い取ることができなかったらしい。よっちゃんがチャンドゥさんの握った貝を奪う番になると、外野のインド勢が「ネイル!ネイル!」(爪を使え!)と言って応援してくれたとのことで、ゲームはやんややんやの大騒ぎとなり、そうとうに盛り上がったらしい。握った手に爪をたてられ、痛さにたまりかねたチャンドゥさんが手をゆるめた隙に、よっちゃんが指をこじ開けて貝を奪い取ったとのことだ。う~む、よっちゃんがチャンドゥさんの手にキイーッ爪をたてて貝殻を奪うところ、見たかったなー。残念!!
このゲームは後日、機会あるごとに何度か繰り返して行われたらしいのだが、その度によっちゃんが勝ってしまったということである。恐るべし、新妻の爪!!

さあ、チャンドゥさん、ここは男らしく諦めて、財産は全てよっちゃんに預けてしまいなさいね(笑)
ここで一句。
「新妻の爪に財布の紐切られ」(アーティチョーク)
いやいや、この段落は冗談(^▽^;)

ゲームで、貝殻を財産にみたてて奪い合うというのは納得だ。私の記憶違いでなければ、貝は古代の中国、インド等でお金として使われていたからだ。
だが、このゲームも伝統的儀式のうちのひとつなのだろうか?それとも近年になって行われるようになったお遊びに過ぎないのだろうか?この地方に独特のゲームなのか、それともインド全土にわたって行われているのか?と疑問はつきないのだが、それにしても結婚式の終わりに、このようにエキサイティングで楽しい余興をもってくるところは、さすが大陸的というか、おおらかというか、なんとも面白く興味深いことだなあと思った。

さあ、これで長かった結婚式の全ての儀式が終わった。夜中を回り、翌日の25日になってしまった。今はもう午前1時を過ぎている。結婚式を終えた花嫁と花婿は、今度は二人そろって花嫁の控え室へ入った。並んで座った二人は、無事に結婚式を終えることが出来たので、今はリラックスして笑っている。
昨日は朝からずっと儀式があり、結婚式の準備や、パレードなどが正味2時間の結婚式の前に行われている。よっちゃんが見せてくれたアルバムには、花婿の家で行われた儀式の写真があった。やはりお坊さんが取り仕切るヒンドゥー教の儀式である。そのなかには、上半身裸のチャンドゥさんが、親戚の熟年女性5~6人に囲まれて、何やら黄色いもの(ターメリックだろうか?)を体中に塗りたくられていたり、頭から水(?)を振りかけられているという、ちょっぴりユーモラスなものもあった。そのような訳で、今日は朝から一日がかりだったし、2時間という長い結婚式のあいだ緊張が続いたことで新郎新婦ともに大変だったに違いない。よっちゃん、チャンドゥさん、お疲れ様でした。結婚式が無事にすんでよかったね。
チャンドゥさんの妹ラヌさんと、チャンドゥさんのお兄さんの子供さんが一緒に写真に納まってくれて、よっちゃんのほっぺにチュッとキスをしてくれた。子供は無邪気で可愛いなぁ!
チュッ♪  チュッ♪
大きな目!  大きなお目々!!
結婚式が終わったあとは、新郎はいったん家へ戻ることになっているらしい。そして、朝になったら、このホテルへ迎えに来て、新婦を家へ連れて行くことになっているということだ。インドの結婚式はそういう決まりになっているらしい。これもまた、ヒンドゥー教のしきたりなのだろう。このあとは、新妻が花婿側のお迎えを待つだけということなので、私たちも失礼することにした。