High Crimes

弁護士のクレア・クービックの夫トムは突然エル・サルヴァドルにおける住民虐殺の罪で捕らえられた。またトムの本名はロン・チャップマンであつた。
トムは軍事裁判にかけられた。トムの弁護人は頼りなく、クレアも弁護法廷にたつことになった。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作年:2002,監督:Carl Franklin,Yuri Zeltser,Grace Cary Bickley,原作:High Crimes(Joseph Finder)


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

クレア・クービック(アシュレイ・ジャッド)
トム・クービック/ロン・チャップマン(ジム・カヴィーゼル)
ジャッキー・グリマルディ(アマンダ・ピート) クレアの妹
チャーリー・グライムズ(モーガン・フリーマン)
テレンス・エンブリー少尉(アダム・スコット)

ビル・マークス准将(ブルース・デイヴィソン)
ジェームズ・ヘルナンデス少佐(ホアン・カルロス・エルナンデス)
マリンズ特別捜査官(トム・バウワー)

◆ 補足

たびたびエル・サルヴァドルの現場のフラッシュバックが表示される。

クレアが怪しい人物につけられたりして「次第に明らかになってくる軍部の暗部。それと闘う正義の女性弁護士」みたいな雰囲気で進行する。だが、あっけない幕切れになる。

「High Crimes」は1.「重大な犯罪」あるいは2.「高位にある者の犯罪」を意味するのだが、表面的には1.であるが、実は2.であると我々に思わせている。真実は「あらすじ」の最後を参照してほしい。

クレアが興奮して「bull shit!(牛の糞!)」と言う場面がある。「嘘だ」「デタラメだ」というような意味だが、あまり女性が使うような言葉ではない下品な言葉。

アシュレイ・ジャッドは何と言っても「(1999)ダブル・ジョパディー:夫殺しの冤罪/Double Jeopardy」が大推薦。

モーガン・フリーマンとアシュレイ・ジャッドは「(1997)連続女性誘拐事件:コレクター/Kiss the Girls」でも共演。

ジム・カヴィーゼルは「(2000)オーロラの彼方へ/Frequency」を推薦 。ニューヨークでオーロラが見えた日、看護師連続殺人事件を追っている刑事が30年前の父親と無線通信する。

「パートナー」とは法律事務所やコンサルタント会社の最高位の職位。原義は「経営者のパートナー」。クレアはまもなくパートナーになろうとしている。もちろん配偶者や事実婚の相手も意味している。日本では非正規社員や下請け取引先も意味している。
 


■ あらすじ

◆ 夫のトムが捕らえられた

弁護士のクレア・クービックは建築業を営んでいる夫のトムとカリフォルニア州マリン郡(サンフランシスコの北)に住んでいた。

仕事は順調で、もう少ししたら所属する法律事務所のパートナーになれそうである。

二人がサンフランシスコのユニオン・スクエアでショッピングをしていた時、突然トムはFBIに捕らえられた。

容疑は1988年、エル・サルヴァドルで非武装の市民を9人を殺害したという、クレアが予想もしなかったものである。

◆ トムの正体

クレアはトムの本名がロナルド・チャップマンであること、彼が海兵隊に所属していたこと、そして12年間軍から逃亡していたことなど、さらに驚くべきことを知った。

クレアは、トムにまつわる事実を直視し、彼の無実を信じて現実に立ち向かうことにした。

◆ トムは無実を主張する

トムは大量殺人の現場にいたことは認めたが、自分は殺人には関与していないと主張した。

彼は自分がスケープゴートであり、現在ビル・マークス准将の補佐官となっているジェームズ・ヘルナンデスが真犯人であると示唆した。

トムは堂々と状況と対決する決意を示した。

◆ クレアはトムを弁護する

軍事法廷が開かれ、テレンス・エンブリー少尉がトムの弁護を担当することになった。

クレアはエンブリーの経歴不足を心配し、自分も弁護に参加することにした。勤務先に影響が及ぶことを防ぐため辞職した。

だがクレアは軍事裁判は経験がなく、元軍人で軍事法廷に詳しいチャーリー・グライムズを助手に雇った。彼はかって軍上層部とトラブルがあつたようである。

◆ 軍上層部の疑惑

裁判は進行したが、「トムは有罪である」と証言した五人のうち三人が謎めいた死を遂げるという異常な事態となった。

この状況にクレアとグライムズは大いなる疑念を持った。

グライムズは生き残った証人の一人を見つけ出し、彼が「トムが有罪の証言を強要された」と聞き出した。

◆ 裁判は却下された

さらに不可解なことが発生する。大量虐殺が発生した村の住民が現れた。

住民は現場にいて負傷したヘルナンデスが犯人だと主張した。

クレアは軍の隠蔽工作の証拠としてFBIから機密の医療ファイルを取得した。

彼女はマークスを追求し、トムの無罪を主張した。

この事態にいたって国防省は「国家安全保障上の理由」として裁判を却下した。すなわち裁判自体が存在しなかったことにされた。

トムとクレアは抱き合って喜んだ。

◆ クレアは気が付いた

もう終わったことだが、その後グライムズから新しい情報がクレアに入った。「虐殺を実行したのは両手利きの男」。

電話を受けたクレアは思い当たる事があった。すなわちトムは両手利きである。

そばで二人の電話を聞いたトムがクレアを襲ってきた。

だが裁判で証言した住民が現れてトムを射殺した。

◆ ラスト

仕事がないクレアはグライムズと一緒に仕事をすることになった。

◆ 真実

本作は事件の真相を曖昧にしている。それを知るにはある程度の想像力が必要である。

「そんなことまで話すなよ。そのままにしておけ」という意見があるのは分かっているが、私の推測を書いておく。

エル・サルヴァドルで軍による虐殺事件があったのは事実。

ロン・チャップマンが実行メンバー(の一員)であったのも事実。

軍は、それを秘密にすることにした。

ロン・チャップマンは姿を消してトム・クービックと名前を変えた。

秘密が漏れることを恐れた軍はトムを探し出して裁判にかけた。軍としては「何もしない」という選択肢もあるが、それではトムが何らかのタイミングで告白してしまうことを防げない。

軍はトムの有罪を証明する数人を証人として呼び出した。おそらく彼らも虐殺に加わっていた。

クレアとグライムズがトムの弁護に加わり、いろいろと軍部の闇を追求した。

軍は現場にいた住民もトム有罪の証人として呼び出した。だが住民は軍の思惑とは違って「ヘルナンデスが犯人」と主張した。この住民はトムが虐殺に関与したことも知っている。

これを見た軍部は、アメリカ軍の証人から真実が漏れるのを恐れて彼らを殺害した。だが殺害できなかったものもいた。

さら事態が悪化してしまったため、軍部は裁判自体を却下した。

トム、クレア、グライムズは喜んだが、クレアとグライムズはトムが虐殺に関与したことに感づいた。

トムはクレアを殺そうとしたが、トムの罪を知っている住民が現れてトムを射殺した。