地中海地方で古代から近代まで使用された船は、帆もあるが主動力をオールに依存するものである。船の大きさや形によって、いろいろな名称があるが、ここではガレー船で代表する。

みなさんも名前は耳にしたことがあるのではないだろうか。

オールを漕ぐのは奴隷である。注、古代では奴隷ではないこともあったらしい。

奴隷の調達先は、戦争で負けた船の乗組員だったりする。その船が負けたりしない限り、一生こき使われる運命である。

ガレー船は海賊映画などに出てくるはずなのだが、ガレー船のオールが描かれている映画は非常に少ない。

私が見た範囲では次の映画である。

「シー・ホーク」はエロール・フリン主演で、ガレー船が大西洋を航行する。相手役はエロールと八作も共演したオリヴィア・デ・ハヴィランドにオファーされたのだがオリヴィアが辞退したため、ブレンダ・マーシャルが出演した。

クレオパトラの映画はいくつもあるが、こちらはヴィヴィアン・リーが出演のもの。シーザー役はクロード・レインズ。クレオパトラ映画では本作ではなく「ナイルの妖女、クレオパトラ」(ロンダ・フレミング)を紹介する予定。

「聖バンサン」はフランスの実在の神父の伝記映画。

「船乗りシンバットの冒険」は「千夜一夜物語」の一話の映画化。ちみなに英語では「Sinbad」なので、日本語でなじみがある「シンドバッド」ではなく「シンバット」となっている。地中海ではなくインド洋のはずだがガレー船が出てくる。

「ベン・ハー」はガレー船で登場する映画では最も有名なもの。チャールトン・ヘストン。
 


(1940)シー・ホーク/The Sea Hawk

イギリスの国力がまだスペインに及ばなかったエリザベス一世の時代。イギリスにはちゃんとした海軍がない。あるのは海賊の連合体のシー・ホーク。

シー・ホークの一員、ジェフリー(エロール・フリン)が率いるアルバトロス号はスペイン船を襲撃した。しかしその船には駐イギリス・スペイン大使が乗っていた。襲撃された船はガレー船である。これが両国関係に悪影響を及ぼす。

その後ジェフリーはパナマからスペインに運ばれる財宝を狙ったが、イギリス政府内に裏切り者がいた関係で、パナマで捕らえられて奴隷となり、ガレー船を漕がされた。

しかし仲間と脱出し、スペイン大使の帰国のためにイギリスに向かう船(これもガレー船)を乗っ取り、イギリスに戻り宮廷に乗り込み、裏切り者と対決する。

ラストで女王はシー・ホークの海賊をまとめて海軍を作ることを決定する。
 


■ (1945)シーザーとクレオパトラ/Caesar and Cleopatra

我々が普通に「クレオパトラ」と呼んでいるのは「クレオパトラ7世」。長く続いたプトレマイオス王朝のほぼ最後の(女)王。「N世」という呼称は現代のもので、一時期を見るとクレオパトラは一人しかいないので、当時は「N世」という呼称はつけない。

クレオパトラはシーザーとの間に一人の男児。シーザー暗殺後のローマ三頭政治の一人、アントニーとの間に、出産二回で男児二人、女児一人を産んでいる。

本作の中ではシーザーと船に乗る場面があり、オールを漕いでいる奴隷や、オールが表現された船の遠景が表示されている。
 


■ (1947)聖バンサン/Monsieur Vincent

フランス映画。ヴァンサン・ド・ポール神父は、高名な実在の神父である。本作の前半では貧しい村に赴いて人々のために働く。ストーリー的にはここがメイン。

その後、船の神父になる場面がある。この船がガレー船で、奴隷がオールを漕いでいる。

映画の範囲外だが、神父は海賊に捕らえられて、奴隷としてアフリカに連れていかれる。神父を買ったのは背教徒のフランス人だったが、彼をキリスト教徒に引き戻してフランスに戻った。
 


(1946)船乗りシンバットの冒険/Sinbad the Sailor

出演はダグラス・フェアバンクス・Jr.、モーリン・オハラ、アンソニー・クインなど。

シンバット(ダグラス)が乗った船はバスラに流れ着き、シャイリーン姫(モーリン)に会った。シャイリーンはシンバットをアーメド王子と誤解した。

二人とダイブール首長のエミール(アンソニー)はアレキサンダー大王が遺したと言われる宝物を求めて、協力&争いながらデリアバーに向かった。

ふざけた感じの画面が連続しているが、最後は「宝物よりももっと大事なものがある」ということを認識する素晴らしい映画である。

本作のガレー船の表現は稚拙なものだが、やはり奴隷がオールを漕いでいる場面がある。

 


(1959)ベン・ハー/Ben-Hur

チャールトン・ヘストン、キャシー・オドネル

ジュダ・ベン・ハーは裕福なユダヤ商人だったが、ユダヤ民族の誇りと信仰を守るために戦った。彼は愛と赦しを説く預言者に出会った。

ジュダは些細な罪で捕らえられて奴隷となりガレー船の漕ぎ手にさせられた。

三年が過ぎた時に船がマケドニア軍に襲撃された時、鎖を外されてマケドニア軍と戦った。

その後ローマ高官の養子となりローマ市民権を得た。

ジュダを罪に陥れたメッサラを戦車競走で破った。

故郷に戻ったが、家族はバラバラになっていた。
 


 

 

(1946)船乗りシンバットの冒険/Sinbad the Sailor

 

 

(1940)シー・ホーク/The Sea Hawk

(1947)聖バンサン/Monsieur Vincent