色の匠 | 色想-色想い色語る-

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カラーリストの仕事を通じて感じた事、生活の中で活躍する色、
自然が魅せる色、カラーで何かが変わる、そんな色にかかわる
色々なお話を綴っていきたいと思います。

案外廻りを眺めると、近くにすごい人がいるものです。


先日アートフラワーをやっている叔母から花のアレンジの

アドバイスを頼まれました。

叔母は飯田深雪さんの門下、師範としても長くアートフラワー

に携わっています。

今回何点か作品を制作するとの事で、器とお花の

バランス調整のお手伝いをする事になりました。



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深紅のバラとケンリックの葉、つたの実の

アレンジメント

12輪のバラが乱舞しています

深く、甘く、渋く、華やかに、赤一色の中に

隠れた色が微妙な表情を現わしています


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つたの実が流れや動きを現わしています


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こちらの色が実物に近いのですが、もっと

ダークで黄味よりです。

深紅のバラと同系色ながら、ケンリックの葉、

茶や葉の端にわずかに残したイエローグリーン

がバラの深みを一層引き立てています。

何百枚も重なった葉の色、どれ一つとして同じ

ものはありません。

一見するとバラと同系の葉モノがコーディネート

されていると見過ごしてしまいそうですが、

このケンリックも主役に匹敵するくらいスゴイ!



深紅のバラ、その深い色には何色もの色が隠れています。

個人的にはグリーンの隠れ色がとても利いているように

感じますが、だからこそ、そのグリーンが葉や茎のグリーンと

調和しているのではないでしょうか。

染料を混色して濁る、そのぎりぎりのところで渋い色合いを出す。

感性と長い経験が生んだ絶妙の色は、他の誰にも出せない色。

数ある花が並ぶ中でも、叔母の色は直ぐにわかります。


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赤みがかったオレンジのバラ6輪

シルクのしなやかさと透明感が重なり合い、

優しくかつ気まぐれに顔を並べているカワイイ

作品です。

敢えて葉をつけない事で、バラに自由な動きを

持たせています。その葉の代わりにグリーンの

ジャガードのリボンがリズミカルで軽快感を

表現しています。



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愛らしいピンクのバラ2輪

あぁカワイイ!と見過ごしてしまいそうですが

良く見ると本当に小さな表現がみてとれます。

開花前のみずみずしいバラ、開きかけの

花弁の微妙な間隔や、やや枯れたような

色褪せた部分等とても細かい作業がなされ

ています。

ただキレイなバラを作るだけではなく、自然の

花が持つ表情をきめ細やかに表現しています。

バラを知り尽くした叔母の感性に感服!


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照明の関係でかなり青みに寄っていますが、

バイオレットをベースにこれまた何色もの隠し色

が利いています。

細かい花弁のしわ、内外に微妙に変化をつけた

反りかえし・・・本当に手技が光っています

緩やかな螺旋状に重なった花弁が本当にキレイ

です。1枚1枚の花弁にそれぞれの表情があります。


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るり祭りとデュランタのアレンジメント

バイオレットとパープルのデュエットにグリーンの

葉が利いた爽やかな作品です。

1センチちょっとの小さな花が房になった、本当に

手の込んだステキな作品です。

個人的に、パープル系が好きなので、特にこの

作品は大好きな1点です


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気が遠くなりそうなくらい、本当に細かい作業

です。どんなに小さくても一花一花に表情が

あります。


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ベビーローズ2輪

フランスで購入したという、カワイイリボン、

このリボンに合せて淡く、すこしくすんだ

ピンクのバラをコーディネート。

お花も葉や、リボン等でイメージがグンと

変わります。時にはお花以外のものから

色を発想する事もあるんでしょうね。

このバラ、写真からでは分かり難いのですが、

ペール系ながら、これもまた色々な隠れ色が

利いています。それでいてどことなく暖かい。

色のレシピはひ・み・つ・・かな


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クリームイェローの優しいブーケ

10輪のバラにつぼみ4輪のゴージャスでいて

優しいイェローのカワイイブーケです。

そしてブラス(真鍮)色のリボンがちょっと大人

ぽっいイメージで・・

花芯から外輪へと淡いイェローが描くグラデーション

が本当に綺麗です。びっしりとついた花弁の

ボリュームのあるバラを更にギュッとまとめあげ、

つぼみで動きを表現しています。

残念ながら、写真ではつぼみが見えないのですが

これも敢えて葉を付けないで動きを表現しています。


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叔母が一番造りたかったアレンジメントです

まるで本物のエディブルフラワーがお料理

されたような新鮮さを感じます。

グリーンベル、バラ、オンシジュ-ム、アリア

ムヘア―、淡いグリーンとイェローの競演!

この作品の主役、ふっくらと膨らんだグリーン

ベルが中央のバラと共に立体感を表現して

います。

そして中央にある濃い赤みの色は枯れた

チョコレートコスモス・・・アクセントになってます

写真の色が悪くて残念ですが、このお花の

色を活かすお皿と言う事で、随分探したし白

にこだわった1枚です


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オンシジュ-ムのイェローが利いています


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ほんのちょっとこんな秋色の葉が隠し味で

利いてます


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かれて濃厚な赤紫がアクセントのチョコレート

コスモスと、穂先の淡いピンクが利いてます


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イガイガのような針が特徴のアリアムヘア―

本当に本物のように見えます


今までにも何度となく叔母の花は観させてもらったり、

頂いたりとその仕事を眺めてきたつもりでいましたが

今回は最後の仕事と言う事で、その制作過程をじっくり見せて

もらう事になり、あらためて本当に大変な手作業にただただ驚く

ばかりでした。


中でも一番スゴイ!って思ったのは色造り、色に対するシビア

な目には本当に驚かされました。


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ローダミンに何色混ざっているのでしょうか


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何年も使い続けてきた色粉のビン


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赤のボウルでグリーンを造ります


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こちらは本物の「るり祭り」


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こちらは本物をお手本に作くられた「るり祭り」

本物に負けずみずみずしいです

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どのボウルも色々な色が混ざり合っています



何度やっても想った色が出ないの!

こんな色じゃお話にならない!

この花と色のバランスが悪い!

この色がメインなのに、こっちの色が死んでしまう!

とても見せられるお花じゃない!


それはまさに、どんな些細な事にも妥協を許さない

職人気質そのものでした。


色屋として、多少は色の微差には自信があった私ですが、

正直、どれほど違うのか判断できない程繊細な違いです。

カラリストなんて言ってる自分が恥ずかしいと思いました。

こんなに色にこだわりのある、そして求める色を明確に

持てる人、叔母がここまで色に神経を使っていたなんて

正直驚きました。

そして、色の匠がこんな身近にいたなんて・・・

こんな事を言うと「やめて頂戴!」

なんていう言葉が聞こえてきそうですが、叔母だからではなく、

一人のアートフローリストとして、また私も一カラリストとして

客観的にそう思っています。


確かに装飾品であるアートフラワーも好みの世界。

クリーンで鮮明な色が美しいと感じる人もいるでしょう。


でも、光を意識し、重ねた色のバランスを考え、一ひらの

微妙な表情にこだわり、表現したい色を求める。


それは色を造り、色を重ね、染める素材との微妙なバランス。

同時に何枚もの花弁を染めてもどれも微妙に違います。

そんな花弁を数百枚も色染めし、更に独特なコテで熱をあて、

膨らみや、反りを持たせ、手で捻りながら、繊細なしわや形を

造り上げていく訳ですが、濡れた布の色から乾燥した時の色、

コテの熱でまた色が変わります。

それはそれはとんでもなく手のかかる細かい作業です。

そんな手間暇をかけて1本、一房、一束の作品が仕上げられ

ていきます。


叔母の色はまさに隠れ色、隠し味が命です。

そのレシピはやはり内緒・・・

そして、何よりも、バラを得意とする叔母のテクニックは

その指先にある事。

コテという道具も勿論大切ですが、自然の膨らみ、反りかえし等

一つ一つの花弁に活き活きとした表情を付けているのは手と指

だけで作るから。バラはほとんどコテを使わないのだそうです。

それを聞いて、それぞれのバラ、1枚1枚の花弁がみんな違う

表情をしている訳が分かりました。



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本物の花弁のようです・・・


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くるくる巻いたつぼみが今にも開きそうな

みずみずしさを感じます


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花弁1枚1枚に手で捻りを入れていきます。

その為、人さし指がくの字に曲がってしまった

と笑っていました。

この作業が花の表情を造っているのですね!


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組み上げた花の色を観てはため息・・・


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1本1本色や大きさのバランスを考えながら

微妙に変化を付けていきます


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仕上がったお花が部屋を占拠していきます



何度も色だしをし、作り替えの繰り返し。

数日後に観に行くと、最初に決めた色とは全く違う色に

変わっていたり、お花そのものが変わっていたり・・・

制作過程でイメージがしぼんだり、膨らんだり、次から次へ

想いが拡がっていくのでしょう。

その都度一喜一憂。

一つの作品を造り上げるまでの感情の起伏はその細かい作業

と同様に大変なものです。


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色々器を変え、アレンジしてみます


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咲きほこる、流れる、そよぐ、しなだれる、

色々な形に組み替えてみます


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敢えて葉を付けずリボンや束ね方で色々な

表情をつけてみます


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お花にはかわいそうですが、水中花みたいで

こんな生け方も面白いですね。


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私も企画からパネル作成や色造りの作業の時には、ここまででは

ありませんが、同じような想いを何度も経験しているので、分かる

のですが、こんな繊細な動こきや表情までは伝え切れません。

それだけに他の人に任せられない、でも自分ひとりでは限界という

叔母の苦悩が多少なりとも理解できるような気がします。


正直奥様の趣味の世界くらいに思っていたアートフラワーの世界。

実際は職人仕事。出来上がった美しい花々の裏側は想像以上に

細かい手仕事で、大変な世界なんだとあらためて思いました。


そして、その世界で色を極め、バラを極めたアートフラワーの

匠、山崎令子が叔母である事をちょっと誇りに思っています。


今回が最後の仕事、もうお花を造ることはない、と言い切った

叔母の声はさっぱりしたものでしたが、私はフリ-ランスである

自分自身の想いと重なって、その潔さがカッコ良くもあり、寂しく

もありとても複雑な気持ちでいます。


本音を言えばもっと続けて欲しいと思っています。

ただ、誰かの為、頼まれて造るのではなく、本当に自分が

造りたい花を、時間に追われず、気の向くまま、気楽に造って

いってもいいのではないかと。

思えば、叔母の家には造りかけのお花がほんの少しあるだけ。


本当に気に入った1輪のバラ、出窓に飾られると嬉しいなと

思っています。



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