ブログ『天井の高い画廊』:アメリカのギャラリー、美術界の話。その他いろいろ Photography & Art について。
ニューヨーク在住です、数ヶ月まえまでカリフォルニアで画廊やアートディーラー達と一緒に仕事をしていました。その頃の経験そして今のニューヨークの現状から、アートを造るひとにも愉しむひと知らないひとにも読んでもらえるようなブログにしていきたい。

アメリカモダン写真専門の話がほとんどになってしまうでしょうが色々とアート関係の事を書いていこうと思っています。フレーミングやマットの仕方から、作品の買い方。いい画廊の紹介。オークションの結果。レア写真集など、いろいろ画廊で働いている視点から書いて行きたいと思ってます。

そして何よりアートと書くか作品やプリントたちと一緒に生活するのはとっても愉しいということを書いていきたいです。
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このブログでは・・・

はじめに。


このブログでは一応、今の画廊のしごとでこの仕事やってて良かったな。と、思うことを書いていこうと思ってます。

基本的なフレームや展示の仕方も書き留めておきたいし。

ちょっとした美術作品やギャラリー関係のウラ話(ヤバくない程度に)。

オークションのハナシやコレクターのはなし。

もちろん作品のハナシも書きたい。

ポートフォリオなんかも手に入ったらどんな感じか分析したい。

レア写真集なんかのことも書いてみたい(たぶんネタ切れのときですけど)。

僕の扱う作品は「写真」がほとんどです英語でいう「Fine Art Photographs」ですからいかにも『アート』なインスタレーションやペインティングが好きなかたには物足りないかもしれない。

「食」で云えば、豪華フレンチとか、創作料理とかそんなのでもない。ラーメンとかカレーライスでもない。まぁ「寿司屋」みたいなもんですね、ちょっと硬派なんです、真面目。僕の身分は下積みを終えてチョっと最近ツケ場に立たせてもらえてるって具合でしょうか。親方の包丁さばきとか見よう見まねで何とかやっているトコなんです。

という訳で「今日のおすすめ」なんてのを書いていきます。ネタは活いんですよウチの画廊は(笑)。「すしをつまむ」と云いますがまさにそんな感じなんです。どうぞ好きな作品をつまんでいって下さいな。わりといい店なんですよ、うちは。

新しい記事はこの次の日記から・・・・・・。

ザ・アート・コレクション

気分転換に今日はちょっと家のなかの作品を架け替えました。

学生時代から美術館&画廊時代、写真家の友達と作品を交換したり、大学で働いていた時に教授から頂いた作品、ボーナスとしてプリントを貰ったり、ちょっとお金に余裕があったときに買った作品・・それから自分で撮った写真。



そんなの中から幾つか選びフレームに入れてうちの廊下のギャラリースペース?に飾りました。

アート・コレクションって一体どれくらい作品を持っていたらそう言えるの? って画廊で働いていたときに良く聞かれた質問だったのですが、いつだったかメトロポリタンで受けたレクチャーで、コレクションしている作品たちが自分の家の壁に飾りきれないくらいの数になった時だよ、と聞いてそう答えていました。

そしてコレクションするテーマを決めること。薮から棒に気に入った作品を買えばいいじゃないかという意見もあるけど、やっぱり趣旨があったほうが集めやすいし並べたときに繋がりのようなものもあるのです。

僕が集めている作品は写真が中心で「ニューヨーク」「ポートレイト」「砂漠」。そして来年からは「宇宙や星」シリーズもコレクションの一部にしたいと想っています。



気に入った絵葉書を画鋲で壁に貼るのもいいけど、それをフレームに入れるだけでだいぶ存在感も重くなるし。それから好きな作品を毎日観て、一緒に暮らすってとても大切なこと。

1枚の作品はその裏に沢山のメッセージや意味や想いが隠されている、そういった感情は写真集をペラペラめくっていたり美術館でチラっと観るだけでは感じられない特別な気持ちなんです



みんなももしかして、自分へのクリスマスプレゼントは何にしようかなぁと考えているのなら何か作品を買ってみては? とても新鮮な行動だろうし、悩むだろうけど来年いっぱい君なりに愉しめることは確実です。

フレーミング

「フランクをフレームに」



ギャラリーでフランクのプリントが売れたのでそれをマットしてフレームに入れることに。

「インデイアナポリス」というタイトル。

撮影されたのは1956年、プリントされたのは1979年いわゆる70's printと呼ばれるプリント。

写真集「アメリカンズ」より、

サイズは10インチx13インチ。

ヨーロッパのサイズ。




20x24のフレーム&マットに入れることにした(少し大きすぎるとは思うのだがクライアントの希望なので)。

マットの白い部分が必要以上に広いと作品自体のコントラストや大きさがおかしくなってくる気がするのでバランスよくフレーム、というのが僕の個人的な意見ですけど。

でもまぁ、かなりの値段を払って購入したのだから堂々としたフレームに入れて家に飾りたいという気持ちもわかる。





このフランクはプリントの下にサインがあるのでそれを見せるように1/4インチくらいの余白を開けてサイズを計る。

こまかい計算をしていき、開けるマットの大きさは9 3/16インチx12 5/16インチに。

(もうコチラが長いのでセンチメーターでは感覚がわからなくなってきてしまっています)

アメリカのサイズなのでやはりインチで考えるほうがいろいろとやり易いということもある。

この「サインを見せる」というのも個人的には好きではない、何しろこれは『ロバート・フランク』だから写真を少しでもわかっている人なら見ればすぐにわかる。

サインのついてないフランクなんて滅多にないわけだし。

そういう自慢したいことをあえて隠してこそプリントに対していい姿勢というか、いい付き合い方だと思う。

美術館でわざわざ写真家のサインを見せるためにマットを大きくカットして展示なんてみたことはない。







これはアメリカのC&Hというフレーミングの会社のマットカッター、これで45°の「切り込み」をしてマット、つまり作品を保護するためとプリントをプリントらしく見せるための装飾の厚紙に「窓」を開ける。

こんど細かいことまで書いてみようと思ってますが、こうして古いものでもキチンとしたカッターで切るとやりやすいし安全だし効率も良い。

どういう道具は高いのだがチャンスがあれば(僕の自宅にあるのは中古で安く買った)いい物を買うことを勧めます。





表のマットと後ろのマットをこうしてリネンテープという無酸性のテープでヒンジをする。

こういう事はなるべく古いやり方を基本にやることにしている、

新しい素材の糊やテープなどどれだけリスクがあるか解らないので。

この先長い間はこのマットやフレームから出されることはないだろうから作品保存ということでベストな環境で(無酸性のマット、テープ、糊、紙など)額装するべきだと思っている。

それには昔からのやり方がやはり一番良いと考えます。





ピッタリとマットに納まったフランクのプリント、20x24の手頃なフレームがギャラリーに転がっていないかなと探したのだが見つからなかったために、アーロン・シスキンの入ったフレームを拝借することに。

(すまぬ、シスキン)





一般的にギャラリーや美術館ではガラスは使わない、事故があったとき割れてダメージをあたえる可能性があるので。

これはプレックスという日本語でいうアクリル板。軽いしちょっとやそっとじゃ割れない(というかサイズに合わせて切って割るの、大変なんです)。

フレーミングは飾りではなく「保存」のため。

余計な飾りつけの額や色のついたマットなどは本物の作品には失礼。





これはフレーマーズポイントという道具で、小さい板状のクギをフレームとマットの裏にさらに保護としていれた板とフレームそのものに打ち付ける。





打ち込んだクギの回りをフレーミングようのガムタープで貼付ける。

これには埃や水害(スプリンクラーの誤作動など)虫除けなどといろいろ考慮してあります。





と、いうわけで注文された通りにでも中身はしっかりと美術館や修復のひとたちがやる仕事とほぼ同じことを。

あまり時間をかけてやってもいられないので(ここはギャラリーですから)手際よくやるというのも大切。

しかしフランクなんて滅多にフレームできるチャンスはないので、自分なりのリスペクトでキチンとやりました。

小さいプリントなのに堂々とした存在感はさすがロバート・フランク。

向こうに見えるオーバーサイズのプリントより力強さがある気がします、

いいプリントはサイズなんか関係ないのだということも良く感じることが出来ました。


なんて、こんな仕事があるとこの仕事をやれてほんとにラッキーだなぁと想います。


ブラッサイ

ブラッサイのオリジナルプリントです




そんなに有名な作品ではないというか、手元にある何冊かのブラッサイの写真集を拡げてみましたが載っていませんでした。





やっぱりこうして生でプリントを触れると嬉しいです、サインなんかも良く見えるし。印画紙の表面とか、どんなふうに光沢しているのか僕は気になったりしてしまうのです。

オリジナルプリントはやはり「黒の深さ」みたいな質感を味わえますから。

実はそれもフレームに入れてしまうと半減してしまうというか、作品の緊張感が薄れるというか。





この仕事をしていて嬉しいのは「プリントの裏」を見れることです。

いくら写真が好きなひとでもプリントの裏も、じっくり見てる人はあまりいないでしょうので。

現像の時のメモが書いてあるときもあるし、これはフランス語ですから僕は全く読めません、

読める人にはいろいろ解るんでしょう、うらやましい。





クリックすると拡大できますが、こうしてサインやスタンプが多いと、いつどこで、何があったのだろう?

このプリントもいろいろな旅をしてきたんだろうなぁと、そんな想像するのも楽しいし。

でも仕事になるとこのサインやスタンプなんかは写真家の過去の足跡を辿る重要なキーだったりします。調べていけば何時からいつまでこのスタンプを使っていたとか、住所からいつそこに住んで居たかなど分析できますから。このプリントがビンテージかどうかとか、何かのプロジェクトのひとつであったとか色々と解析できるのです。

このモザイクがかかっているとこにはブラッサイの電話番号があります、もしかしたらそこに電話したらブラッサイの末裔が住んでいるかも知れない(そうしたら交渉できますしね、ビジネスにつながったりとか)。

まぁ、これは巨匠のブラッサイですのでそんなことは(電話するとか)誰もが行ったことでしょうけど。


写真のプリントは「手作り感」がないのがほとんどで、こうしてアーティストのサインやメモなんかが書いてあると距離が縮まったようで嬉しいものです。





オリジナルプリントを見るってとても大切なことなのです。


ダイアン・アーバス(ファースト・エディション)

アーバスのニューヨーク近代美術館&アペチャー出版のファーストエディションです。

1972年出版。

今これと同じ写真集は現在定価$50ドル、当時は$15ドルだったようです。




実はこのエディションにしかない「作品」がありまして、その画像をブログに載せます。





この画像ではわかりにくいと思うのですが、" two girls in identical raincoats " というタイトルです。





たいした話ではないのですが、一応、貴重なプリントですので。