ブログ『天井の高い画廊』:アメリカのギャラリー、美術界の話。その他いろいろ Photography & Art について。 -2ページ目

ダイアン・アーバス

ダイアン・アーバスのプリントです。



この「ツインズ」はコンディションちょっと悪い(ここから下の画像はクリックすると拡大できます)。

twins (L)

これはプリントの裏です。

このプリントはアーバス自身がプリントしたものではなく(ほとんどのアーバスのプリントはそうなんですけど、彼女がプリントしたモノは貴重)「Doon Arbus/Neil Selkirk estate print」と言ってダイアンアーバスのプリンターNeil Selkirk がプリントしたもの、ダイアンの娘のドゥーンが合意して(サインして)販売されたモノ。

twins (back)

クリックするとなんとか読めると思いますが、いくつかのスタンプが押されてドゥーンのサインが見えます。

back (stamp)


http://www.metmuseum.org/special/Arbus/arbus_more.htm


これは去年にメトロポリタンであったアーバスの展覧会のサイトです。

今でもどこかを廻っているはず。

ハリー・キャラハン

ハリーキャラハン

キャラハンは日本ではあまり知られていない写真家のようですが(不思議)こっちでは、もうヒーローですよね。

ちょっと仕事で彼の昔の作品のビンテージプリントを扱ったので、そのことを書きます。




これはキャラハンの昔のカタログ。この表紙に載っているイメージの幾つかを触ったんです。








拡大してこのプリントたちを見てもらうとわかると思うんですが、写っている人影はキャラハンの奥さん、エレノアです。





こういう実験的な作品をこの時代(1950年代)にやったというのは写真史でとても大切なことでして。





『photograph』がモダンアートとして認められた意味でも重要な作品たちなのです。





これらは4x5インチの小さいプリント(4x5カメラで撮られたコンタクトプリントです)。





愛しいというか、この小さなプリントたちに触れることが出来て、いやーこの仕事やっていてよかったなぁと。





もう感動というか、リスペクトとか自分のなかでのキャラハンのヒーロー像とか、いろんな気持ちが一緒になって。





変に感傷的になったというか、特にこの「サイン」を見たときは手と心臓が一緒に震えたというか(キャラハンのサインはふつうはもっと淑やかな繊細に小さくペンで書かれたものがほとんどなんです、こんな風にドカッと大きな文字でしかも鉛筆でビビりました)、

思わず「あぁ!」という声を出してしまいました。

画廊のしごととして作品はこうしてコーピースタンドの上に乗せてサイト用や(この場合はこの作品を購入したコレクターの方へメールするための画像に)アーカイブ用に正面とプリントの「裏」を撮影して保管するんですが(デジカメで)スクリーンを見ながら、いやーキャラハンのビンテージに触れるなんて機会滅多にないだろうなぁと一人でブツブツしてしまいました。



これくらいのサイズです。

知らない人にとってはただの白黒のヘンな写真に見えるんでしょうけど、このプリントたちの価値はとんでもないものでして。

ちなみに値段は一枚一枚がBMWの安いクルマが買えるくらいの値段、もちろんこうして5枚セットで売る訳ですから、けっこうな値段です。

アメリカの有名なコレクターから、さらに趣味のいいコレクターのコレクションへ移動した訳です。

画廊のしごとはその右から左へのお手伝い。

できればこのプリントたちをフレームに入れたかった(けど新しいコレクターの方には個人的なフレーマーがついているらしく、そんなコトよりもキチンと梱包して確実な輸送をということで)。

どうやって額にいれるんだろうと。

このプリントたちは昔、近代美術館(モマ)で行われたキャラハンの個展ではこのブログに並べたように縦に5つ、一枚のマットボードに5つの「マド」が開けられて一つの額に入れられたらしいです。


キャラハンのこうした初期の作品は「ユニーク」です。


(美術の世界でユニークという言葉は「愉快」という意味ではなく、一点モノ。つまりこのプリント以外に同じ画像のプリントは存在しないという意味でつかわれます。油絵なんかではもちろん使われない表現ですが、同じプリントが何枚も存在する写真や版画の世界ではたまに使われる単語)

いわいる実験的な「スタディー」という感覚で撮影されたのですが、キャラハンのそういった作品はとても貴重なんです。

アートマガジン(要チェックです!)

いつも僕がチェックする雑誌です



まずは「ブラインドスポット」これはアート・フォトグラフィー雑誌です。次に書く「アペチャー」に並ぶ雑誌、より砕けた感じかも。ちょっと前衛っぽい作品や写真家も紹介しています。この雑誌は紙質がとてもよくて出版物としては完成度が高い。いつまでも捨てられない系の雑誌(困ります)。



「アペチャー」写真の雑誌としては一番できがいい雑誌だと思ってます。歴史も長いし、この雑誌のVol.1 #1 なんて(ホチキスで止めてある)ヘタな作品なんかより高い。写真家として生まれたらこの雑誌に作品を発表するというのは重要なステップです。日本の写真家もたくさん紹介しています。写真集の出版もしているいい雑誌です。



これはカメラ雑誌になってしまうのですが「ビュー・カメラマガジン」写真に関しては技術的なトコがらいろいろ書いてあります(大型カメラ専用)昔はもっと写真家にフォーカスとあてたいい雑誌だったのに、最近は技術的なことに手中しているようで残念です。ただ写真に関して新しいことも多く書かれているので(例えば古典な写真のプリント方法につかうネガをフォトショップで出力する、とか)一応チェックしております。



「アート+オークション」これはオークション情報ギッシリです、幾らで売れたかとかはモチロン、市場状況までしっかり書いてあります。アートコレクションに対して勉強するという意味でもとてもいい雑誌。ほんの小さな記事までいい事が書いてあって読み応えがあります。



「モダン・ペインティング」もちろん絵画のみ。モダンというけどコンテンポラリーなアーティストの紹介が多いと思う、若手アーティストを中心に造り上げている雑誌なので頼もしいです。



「アート・フォーラム」この雑誌が一番有名なアート雑誌かも知れない。ここのレビューもしっかりしている。ただほとんど(80%くらいは)アメリカ中のギャラリーの広告です、言い方をかえればこの雑誌をみればどこの画廊がどんな個展をやっているかわかる。ここが一年に一度出す「ギャラリー・ガイド」は必見、世界中の全てのギャラリーの情報が載っています。



「アート・オン・ペーパー」その名の通り『紙』の上に表現された作品のみ、写真、プリント(版画やリソグラフィーなど)ドローイング・・・毎回キチンとした特集があって記事もしっかりしています。この雑誌の紙自体とてもいい紙をつかっていて手触りもいいし、印刷もキレイにできてるし。とっても好きな雑誌。半光沢な印刷も落ちついていていいと想う。



最後はコレ「アート・イン・アメリカ」これはアート全般の雑誌、ここのレビューはさすが。注目すべき展覧会や個展についてしっかり書いてあります。ただなぜだかこの雑誌の使っているフォントが気に入らない、というか読みにくいとおもう。雑誌としてはとてもいいのですけど。

・・・っと、いつも気にしている雑誌を何冊か載せましたが、ちょっと偏っているかも知れない。

デザインが悪かったり、紙触りとかて読むのも嫌になる雑誌って多いんですよ。

だいいち、アートの雑誌なのにそのへん気をつかっていなのはオカシイと僕は思うんですが、

『日経アート』とかじゃないんだし(ジョークなんですけど、面白くないですね)。

という訳で、また雑誌については書いていこうと思ってます。

フレーム


フレームのしごと

額の仕事って日本のとコッチのをくらべると幾分ちがうのです。

普段は僕は写真専門の画廊ではたらいているので大掛かりなフレームの仕事はしない(というか、ない)ただマットにいれて額のなかに入れるだけ(そうシンプルでもないのだけどね、こだわってますから)。

今回のしごとは某美術館から、このくらいの仕事だったら美術館で働いてる人でできるヒトいないの??

と、思いましたが(ま、お小遣いになるし)。「電話でチョっとややこしい仕事なんだけど」

アーティストはメキシコの方、ちょっと名のある方らしいのだけどパブリックインスタレーション系のアーティスト。つかりギャラリーを利用しないで「街」で作品発表をする作家。

なんでそんなヒトの作品を「額」にいれるの?

作品を取りにいって、アラびっくり。

ただの「地図」じゃん。



それがそうでもないのだよ。



よくみると。



「道路」以外は全て切り抜かれている訳です。



『ご注文』はこの作品を「昆虫の標本」のように(理科系?)フレームしてくれ、と言うこと。



簡単そうだ、と思ったら実はこれは「クモの巣」をフレームに入れるのと同じようなことに気付く。



額はコンテンポラリーっぽく真っ白にすることにしました、清潔感あるし。最近流行っているのです、白いフレーム。



このフレームのしかたは「Shadow Box」といって額のなかに「ハコ」のようなを作るのです。

これらの材料はすべて無酸性のアーカイバル処理されたものをつかっています、糊やなんやすべて美術館などでつかっているの同じ(まぁ、クライアントは美術館なのですが)。



試行錯誤でなんとか標本っぽく「ピン」をつかって支えることに(これをピンとさせるのが大変だった)。うしろのベースになっている厚紙と「壁」の部分の紙は同じですからフレームを閉じるととてもいい雰囲気になります。



うしろはテープでカバーします「紙を食べる虫」がいるので、そいつら予防のためとホコリや湿気から作品を守るという意味でもある。



ハイ、出来上がりです。地図の影がいい感じです(展示のときにライトを一本でスポットのようにすれば完璧なハズ)。



ハッキリいうとこれは僕と「アーティスト」のコラボといった方がいいのでは・・・・・・


と、一瞬考えましたが(だってねぇ、フレームの仕方考えたの僕ですから)、まぁ面白い仕事だったな。


このやり方だったら奥行きさえ考えれば何でも額に入れる事ができます。


昔、死んだおばあちゃんの食べかけのクッキーをフレームしてくれと頼まれて、同じように額にいれましたが。今でもあのクッキーはカビないでキチンと保存されいるか気になります。

画廊のしごと「オークション」其の一

Arbus#1



四月と十月には、写真のオークションが毎年ニューヨークである。

クリスティーズ、サザビーズ、スワン、フィリップスの四つのオークションハウスで日が違って、プリビューを含め10日ほどかけて行われる。

プリビューでは、頼めばプリントに触れることも出来る。コンディションの確認や作品の裏のスタンプやサインも見ることができる。

オークションに出てくる作品は美術館でも観られないようなモノも見れるし。コレクターやバイヤー、もちろん画廊の人たちも、ゾロリと集まるので、その人たちの顔を知っているなら買い物をしなくとも面白いイベント。

オークションは$5000から$10000程度の作品の「今年」の値段の目安も決まるし、$100000を超えるレアな作品が出てくれば、その作品の新しい「値段」も決まる。

写真は絵画のように「一点もの」という事は滅多にない。まったく同じ作品が三つ同じオークションに出ることだってある、それでいて値段も違ってきたり。

「写真」に限ってでは無いが、だいたいの作品はビンテージもの、レアもの。

上に載せた作品も、予想は$50000から70000なのに「$144000」で売れた。日本円にて約、1500万円。写真を知っていられる人なら見たことあるだろうが、アーバスの作品はこれから$100000からが普通になるのか? しかも、このプリントは作家自身がプリントした訳でもサインがついている訳でもない。アーバスが亡くなった後に娘がプリンターに頼んで数多くプリントしたうちの一枚、これが作家がプリントしサインがある「本物」だったらその数倍どころか、とんでもない値段がつくだろうし大体何枚サインしてあるプリントが存在しているのか (詳しい事はつづきで)。

それぞれのカタログもハウスの人たちは、相当な力をいれてリサーチしているのでヘタな教科書なんぞより、よっぽど勉強になる事が書いてある。

画廊で仕事をする時にもオークションに出て来れる作家レベルなら、カタログを使って何時いつはコノ値段で、コノ前はコノ値段、そして今回はコノ値段。と、商売に必要な「道具」のひとつである。

予想が$25000から35000なのに$100000をこえる値がついた作品や作家などは、これから要注意。

つづく