「ーーそっか……ほっちゃんが……」
みなみは全てを話した。隠す必要もなかったから。甘いと言われるかもしれないが、隠すよりも、全てを話して未央奈を正気に戻す方法を一緒に考えたい。そう思った。
「銃声が鳴ったから来てみれば、やっぱり”やる気”になった子が出てきたってわけか」
優子が腰に手を当てて空を見上げた。何かを思い出しているのか、視界の先になにか見えるのか、みなみには分からなかった。
「怖かっただけだと思う」
里奈が優子の「やる気」発言に反論するように語調を強めた。
「いきなりこんなことになって、一人でこんなとこに居たら、誰だって不安で怖いよ」
「だったら、なんで仲間に出会ったのに撃ったんだろね? 安心感から脱力しちゃったとか、泣いちゃったとかなら分かるんだけど、普通、撃つかな?」
ぞんざいな口調で言う優子に、里奈が鋭い目つきで睨みつける。優子はわざとらしく「おお、こわ」と言った。
「ほっちゃんはそんな子じゃない! メンバーを殺しちゃうような子なんかじゃ……」
瞳に涙を浮かべて声を荒げている里奈に、優子はある人物の影を重ねていた。
「そう。あんたがそう言うなら、そうなのかもね」
六年前にも同じようなことを言ってた子が居たな、と思い出す。自然と苦笑が漏れた。
優子が自分を笑っているのだと勘違いした里奈が怒る横で、みなみが先ほどからバッグを抱きしめているのを優子は気になっていた。
ふと、みなみに問いかける。
「バッグ、どうした?」
「え? えと、あの……」
突然矛先が自分に向いたみなみは、慌てて取り繕おうとする。
「中、見た?」
「いえ、見てないです」
「じゃあ、武器の確認もまだなんだ?」
優子が自身の武器(と言っても、本来は里奈の物だが)を掲げて見せる。そして、「見せてよ」と言った。
一瞬だけ躊躇いがちにバッグをギュッと抱き寄せたが、みなみはすぐにバッグのジッパーに手をかける。
「水とかあったから、飲んだら?」
みなみの頭を里奈がよしよしと撫でる。小さく「うん」と応えたみなみが、中から武器らしき物を取り出した。
「え? それって……」
里奈が唖然とした表情でみなみの取り出した物を見つめた。
「おもちゃだよね?」
みなみも同じく唖然とする。
それは、誰がどう見てもおもちゃだった。
プラスチック製の素材で出来た赤いハンマー、柄の部分は黄色い。みなみは思わずそれを里奈の頭に打ちつけた。
ピコ、と間抜けな音が鳴る。
「ちょっとぉ、みなみちゃんひどーい」
笑みが零れる。もう一度、今度は地面に打ち付けると、またもや、ピコっと音が鳴った。
「ハズレだね? これ、どうしたらいいですか?」
里奈が優子に問いかけたのは、優子が持っていた鍋の蓋を船着場のベンチに捨ててきたからだ。
優子は目を細めてみなみの持っている玩具を見ている。それは何かを懐かしんでいるような表情だった。子供の頃でも思い出したに違いないと、里奈は思った。
「優子さん?」里奈がもう一度呼ぶ。
優しそうな笑みを浮かべた優子が、みなみからそれを取り上げて、木の幹に打ち付けた。
ピコ。
「そうだなぁ、持っていった方がいいかも?」
「え?」
意外な答えに二人が驚く。
「少なくとも、私はこれに命を救われたからね」
「縁起はいいかも」そう言うと、玩具をみなみに投げ返す。
二人が目を合わせ、同時に首を傾げると、優子は一つ伸びをして「さあ、そろそろ行こうか」と二人に告げた。
里奈は思う。優子は何故このゲームに参加をしたのだろうか。そして、六年前にこの島で何が起こったのだろうか、と。
ふと見せるその表情を見てると、優子が殺人鬼だったとは到底思えなかった。