平和で美しい国「サンマリノ」礼讃 | 編集長ブログ

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眼下に世界遺産の歴史地区


10日(水) 本探しに新宿紀伊国屋に行く。この店もほんとに変わらない。いまどき、昔のままにエレベーターガールがいるので、ふと錯覚に陥る。学生時代、この書店の5階に「三田文学」編集部があり、毎日通った。エレベータのドアが開くと、40年前の編集部の部屋がそこにあるような感じがする。「わっぺいちゃん」と呼んでいた立松和平やつかこうへいが、エレベータを下りて、編集部に入って来る。遠藤(周作)さんや白井(浩司)先生も入ってきた・・・・・・。しかし、もうみんな亡くなってしまったなあ・・・・・。
 仕事の資料の本を3冊ほど買い、最後に小学館新書の「だから日本は世界から尊敬される」を買った。著者はサンマリノの大使で駐日外交団長(日本にいる各国大使の代表)のマンリオ・カデロ氏。何日か前に新聞広告が出ていた。
 買って、その夜に読み終えた。面白い。いま日本で起こっている妙な愛国主義に迎合した本ではない。日本人として知っておかなければまずいのに、多分知らない人が多いと思われることがたくさん書いてある。
 カデロ大使は、学生時代に「源氏物語」を読み、この世界最初のノベルを生んだ日本文化の魅力に惹かれたという。皇室の歌会始の伝統にも触れ、どの時代の天皇も詩歌を大切にし、自ら優れた歌人であったと賞賛する。確かに、日本では21もの勅撰和歌集が編纂された。天皇が臣下の貴族に、当代の優れた歌人たちの歌集の編纂を命じたり、また自ら歌を詠む伝統がある。そんな国が外国にあるだろうか。大使の書いていることは、私が日本話し方センターの文章講座でいつも受講生たちに言っていることでもある。大使は、しかし、これだけ優れた文化的伝統を持つ国なのに、若い人たちが日本の歴史と文化についてあまりに無知であることを嘆いておられた。大使の日本の文化と歴史についての該博な知識、日本への思いの強さには感服する。
 この本に興味を持った理由がほかにもあった。著者のカデロさんがサンマリノの大使だという点だ。実は、この2年ほど、私はイタリア語を習っている。その先生、マルチェッラ・モルガンティさんはサンマリノの出身なのだ。先生は40台半ばで同時通訳を仕事にする才媛である。パリ大学の東洋語学校、通称「ラングゾー」を卒業していて、完璧な日本語を話す。国際会議では、日、伊、英、仏の4ヶ国語を同時通訳する。この人の頭はどうなっているのかと思えるほど頭がいい。それでいて人間性にすぐれている。親しみやすい。日本人の夫との間に女の子と男の子を持つママンでもある。授業を受けてすぐ好きになった。美人だからという理由からではない。その人柄、優秀さ、優しさに、失礼ながら惚れ込んだのだ。
 つとに先生からサンマリノという国の素晴らしさを聞いていた。イタリアの中にあり、イタリア文化圏にあるが、世界最古の共和国で、その建国の起源は4世紀初めまで遡る。日本では大和朝廷が成立するかしないかという昔だ。この国の優れているところは、その政治システムにある。国民から選ばれた2人の執政官が国政を司るが、ほぼ無報酬で、半年ごとに交代する。建国以来続けられていて、政治の腐敗とは無縁である。民主主義のお手本となる国だ。ヨーロッパを征服したナポレオンが、この国とは友好関係を結びたい、領土拡張も認める、と申し出たが、今の国土で満足しているからという理由で領土拡張の申し出を断っている。なんと賢明な選択だろう。軍隊を持たず、平和に徹してきた。
 まだ聞いてはいないが、大使と先生は知り合いに違いない。なにしろ、人口は3万6000人あまり。国土は世田谷区くらいの広さの国だ。大使は、サンマリノの人の気質は沖縄の人に近いと書いている。人情味あふれる人々、平和で美しい国・・・・・ウーンいいなあ。多分、大使とはすぐにお知り合いになるような予感がする。